8月 18, 2018 15:00 Asia/Tokyo
  • アメリカのオバマ元大統領
    アメリカのオバマ元大統領

前回の番組でお話したように、オバマ政権時代に制作された映画の中には、黒人の白人に対する闘争の歴史を伝えるものがあります。

白人の差別に対する復讐を果たそうとするハリウッドの黒人映画

 

これらの映画には2種類あり、一つは、黒人の闘争の歴史を公平に伝えるもの、そしてもう一つは、憎しみを込めて伝えようとするものです。

 

闘争の歴史を公平に伝えようとする映画には、「それでも夜は明ける」や、「大統領の執事の涙」がありました。これらの映画では、すべての白人が悪い人物として描かれているわけではなく、悪い白人も良い白人も存在します。そのため、公平に描こうとしていると言えます。

 

黒人の闘争と人種差別の歴史を公平に描いている、オバマ政権時代に制作された映画には、この他、2011年の「ヘルプ~心がつなぐストーリー」、2012年の「リンカーン」、2014年の「グローリー、明日(あす)への行進」があります。

 

「ヘルプ~心がつなぐストーリー」は、白人の家で働く黒人のメイドの物語を描いています。この映画では、同じジャンルの他の映画と同じように、善良な白人と悪辣な白人が出てきます。この映画では、黒人が、白人のもとで働く黒人のメイドの状況を社会に伝え、公民権運動の時代の白人による利己主義を後退させました。

 

映画「リンカーン」は、リンカーンがなくなる前の最後の4ヶ月、彼がアメリカ合衆国憲法修正第13条を議会で可決させるために行った努力について描いています。

 

このアメリカ合衆国憲法修正第13条により、アメリカでは奴隷制が禁じられました。

 

「グローリー、明日への行進」は、1965年のマーティン・ルーサー・キング牧師の3ヶ月を描いています。

 

キング牧師は、アメリカの当時の大統領やアラバマ州知事の白人寄りの見解に反対し、アンドリューヤングやジョンルイスと共に、黒人の選挙権を求めて闘います。

復讐を果たそうとする映画での黒人の白人に対する勝利

 

前回の番組でもお話したように、オバマ政権時代に制作された一つ目のグループの黒人映画の共通点は、黒人の闘争と人種差別の歴史を、可能な限り公平な視点から伝えていることです。

 

歴史を公平に伝えるには、歴史の中で黒人が経験してきた苦痛や機会の現実を示すことが必要です。これらの映画は、黒人の権利の追求と白人の利己主義の制限が、静かな抗議を中心に詳細にわたって描かれています。これらの映画では、黒人は、白人と平等の権利を持つ第一級の市民として扱われることを、社会や統治体制に求めます。これらの映画の主人公の多くは、白人至上主義に対して静かに抵抗し、自分の要求を少しずつかなえていきます。

 

とはいえ、公平な視点の映画は、オバマ政権時代に制作されたものだけに限られません。1985年のカラーパープル、1992年のマルコムX、1997年のアミスタッド、2001年のアリ、2006年の幸せのちからも、黒人の闘争の歴史を公平な視点から伝えています。

 

1985年のカラーパープルは、20世紀初めのアフリカ系の女性の、貧困、人種差別、性的差別などの問題を描いています。

 

「マルコムX」は、アメリカのイスラム教徒の黒人公民権運動活動家であったマルコムXの生涯を描いた映画です。

アナ2

「アミスタッド」は、スペイン国籍のアミスタッド号で、アフリカ人奴隷が反乱を起こし、アメリカ国内の奴隷廃止運動が加速するきっかけとなった事件を描いています。この映画は、表面的な感情からは離れ、アメリカの黒人に対する圧制という問題を、当時の白人の視点や黒人の白人に対する闘争方法など、さまざまな角度から扱おうとしています。

 

「アリ」は、プロボクサー、モハメド・アリの1964年から74年までの出来事を描いています。また、「幸せのちから」は、事業の失敗によってホームレスになったものの、最終的には成功をつかんだクリス・ガードナーという男性の人生を描いています。

ヘイトフルエイト

 

黒人の闘争の歴史を公平な視点から描いた映画と共に、この歴史を、黒人の視点から憎しみを込めて描いた作品もあります。公平な視点から描いた映画は、黒人が白人の圧制者に抵抗し、白人の協力を得ながら、少しずつ自分たちの要求に向かって進んでいきますが、憎しみの視点から描いた映画は、映画の主人公の黒人が、復讐を果たそうとする出来事の中で、白人の侮辱的な行動に対して、それ以上の侮辱的な態度で応じています。

 

こうした映画において事実に基づいているのは、物語の歴史的な下地や、その出来事が起こった時代、場所に限られており、物語の中の登場人物はみな、フィクションです。

 

公平な見方の映画が、黒人がどのようにして権利を手に入れていったのか、その歴史を示している一方で、憎しみを描いた映画は、歴史の中で黒人が受けてきた白人の圧制への復讐を、少なくとも映画の中で果たそうとしています。こうした映画の主人公の黒人は、白人よりもずっと賢くて力があり、白人や白人に仕える黒人の暴力に対して、さらなる暴力で応じます。

ジャンゴ繋がれざる者

 

黒人の闘争の歴史を、復讐を果たそうとするアプローチによって批判的に伝える映画は、登場人物が善良であるか悪辣であるかを、その話し方や使う言葉によって示そうとしています。このような大げさな表現は、黒人の権利を踏みにじろうとする白人を侮辱するために使われています。そのような映画の例のひとつが、2015年のヘイトフルエイトでした。

 

映画「ヘイトフルエイト」は、アメリカの南北戦争後の人種の争いを示しています。この映画に出てくる黒人は、歴史的な苦痛の復讐を果たそうとする黒人の象徴です。映画の中では、黒人に残酷な虐待を加えていた南北戦争の退役軍人が、彼によって侮辱され、殺害されます。

 

ヘイトフルエイトの監督は、歴史の中で黒人が白人から受けてきた迫害や差別の復讐を、非常に強くて賢い黒人の登場人物によって果たそうとしています。まるで、奴隷制の歴史の中での、黒人の白人に対する憎しみが、この映画に出てくる黒人のマーキス・ウォーレンの中に蓄積されたかのように、彼は、その賢さと力を最大限に使って、非常に残忍な形で白人を殺害します。ウォーレンは、白人に復讐を果たすことを強く望む、迫害を受けた黒人の象徴です。

 

1915年の映画「バースオブネイション」は、南北戦争後の歴史を語る中で黒人をさげすんでいましたが、2015年のヘイトフルエイトは、同じように南北戦争後の歴史を語る中で、白人をさげすんでいます。

 

この他、黒人の白人に対する闘争の歴史を、復讐を果たすというアプローチから振り返っている映画には、2012年の「ジャンゴ繋がれざる者」があります。この映画は、南北戦争以前の時代のもので、黒人が差別され、奴隷制度が当然だった時代に、それに抵抗して権利を取り戻そうとする物語です。

 

オバマ政権時代に制作された復讐を果たそうとする映画の共通点とは、相手と流血の戦いを行い、白人を敗者に見せていることです。人種的に優位に立っているという幻想を抱く白人を、黒人が死に追いやります。こうした映画の黒人の主人公は、白人の差別から逃れようとするだけではありません。彼らは物語の世界において独自の目的を持っており、その力によって白人をあざけります。

 

これらの映画の黒人の主人公は、何百年もの間、受けてきた差別や侮辱を理由に、白人に復讐を果たそうとする人々の代表です。とはいえ、ヘイトフルエイトでも、またジャンゴ・繋がれざる者でも、黒人は白人の助けを借りて、障害を取り除こうとします。

 

白人も、黒人の人格を理解しようと努めます。言い換えれば、こうした映画の中で、黒人はさまざまな問題を克服したり、発展を遂げたりする上で、白人の助けを必要としており、それは、オバマ政権時代にも、黒人は少なくとも映画界においてすら、独立していなかったことを支援しています。

発展をとげ、問題を克服するために白人の助けを必要とする黒人

 

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