8月 04, 2018 16:52 Asia/Tokyo
  • オバマ大統領
    オバマ大統領

この時間は、オバマ政権時代のハリウッド映画の黒人の描き方について見ていきましょう。

ご存知の通り、オバマ大統領は、アメリカ史上初めての黒人大統領でした。オバマ政権は、2009年から17年まで続きました。この時間から2回に渡り、オバマ政権時代に制作された映画について見ていく予定です。

黒人に対する圧制を防げなかったオバマ大統領

 

2009年から17年まで、黒人が大統領を務めた影響により、ハリウッド映画における黒人と白人の関係にも変化が生まれると考えられていました。では実際に、オバマ政権時代、黒人の政治、経済、社会的な問題を取り上げるハリウッド映画は増えたのでしょうか?それとも、具体的な変化は見られなかったのでしょうか?黒人と白人は平等に描かれていたでしょうか。それとも、それまでと同じように、白人の敵として示されていたのでしょうか?

 

これまでのこの番組の中でも、オバマ政権時代の5つの映画をご紹介しました。2009年のしあわせの隠れ場所、2013年のそれでも夜は明ける、同じく2013年の大統領の執事の涙とフルートベール駅で、そして、2015年のヘイトフルエイトです。

 

これらの映画や、この時代に制作された黒人に関する他のハリウッド映画を見ると、全体的には、歴史を振り返るものと、社会的な現実を描くものの2つに分けられることが分かります。歴史を振り返る映画では、公平な見方をするものと、復讐を果たそうとするものの2種類があり、一方で、社会的な現実を描いている映画では、アメリカの現代社会で黒人が生きていく上での問題と、黒人が白人と共に普通の生活を送っていることを描く2種類があります。

それでも夜は明ける

 

オバマ政権時代に制作され、黒人の歴史を振り返る映画は、多くが、アメリカの黒人の伝記として、歴史の一部を紹介しています。ハリウッドは、オバマ政権が誕生したことによって、黒人に対する圧制の歴史を振り返り、脇に追いやられた過去の出来事をじっくりと伝える機会を得たかのようです。その伝え方も2種類あり、一つは公平に描くもの、そしてもう一つは、白人との関係の復讐を果たそうとするものです。

 

公平に描かれている映画の例には、2013年のそれでも夜は明けると、大統領の執事の涙があります。これらの映画では、黒人が白人から虐げられています。しかし、白人の性質は、単に肯定的か、あるいは否定的か、というものではなく、悪辣な白人とともに、良い白人も登場します。

 

また、黒人の描かれ方にも、肯定的な特徴と共に、否定的な部分が見られます。とはいえ、黒人の肯定的な部分は、否定的な部分よりも少なくなっています。それは、人種差別が不公平なものであることを示すためのものであり、ハリウッドは、能力や知性の高い勤勉な黒人は、状況さえ整えば、さまざまな分野で活躍できるということを伝えようとしています。しかし、彼らが社会から追われている理由は、肌の色や社会に広まる人種差別的な考え方のためなのです。

 

映画「それでも夜は明ける」では、黒人が奴隷制の犠牲になったことを描いています。白人の奴隷主は、黒人に対して暴力的に振る舞い、彼らの運命を変えてしまいます。とはいえ、すべての白人がそのように行動するわけではありません。映画には、悪辣な白人と共に、善良な白人も登場します。過激で暴力的な白人と共に、バランスの取れた考え方を持つ善良な白人が見られます。黒人も、それまでの型にはまった姿ではなく、自分が置かれる状況を抜け出し、障害を乗り越えようとする黒人と、現状に屈して変わろうとしない黒人が登場します。

 

「それでも夜は明ける」は、白人と黒人をグループに分類し、彼らの対立と交流を公平に示そうとしています。この映画は、否定的な部分だけ、肯定的な部分だけ、といった単純な描き方を避け、奴隷制に対して公平な見方を提示しています。

 

2013年の大統領の執事の涙は、黒人の平等を求める闘争の流れを描いています。この映画は、さまざまな人物や流れが、黒人の権利回復に影響を及ぼすと考えています。昔の世代の黒人は、努力やソフトな要求によって、また新しい世代の黒人は、知識をつけて社会的な運動を行うことによって、それぞれが黒人の発展を阻害する要素を取り除こうとします。大統領の執事の涙では、白人のケネディ大統領が、黒人の若者の大きな権利の要求に直面し、黒人と白人の権利の平等を法制化しようと努め、暗殺されます。

それでも夜は明けるの良い白人と悪い白人

 

「それでも夜は明ける」や「大統領の執事の涙」といった、歴史を振り返る映画は、黒人が、白人と平等の市民権を得るには、時の経過、世代の交代や思想の変化、継続的な闘争が必要であることを示しています。これらの映画では、黒人と白人の数々の肯定的、否定的なタイプが見られますが、重要なのは、監督が、偏った見方ではなく公平な見方で人種の関係を示そうと努めていることです。これらの映画は、白人の優越主義に対する黒人の抵抗と闘争の流れを物語っています。

 

これらの映画では、白人の優越主義を示そうとするときに、彼らの暴力や立場の強さを描き、その特徴を、白人のよさを示す要素として描こうとするときには、方向を転換し、奴隷制に苦しむ黒人を解放するための白人の援助や支援として示しています。

 

大統領の執事の涙と、1967年の招かれざる客などのアメリカの公民権運動に関する他の映画との違いのひとつは、それがいくつかの側面から描かれていることにあります。大統領の執事の涙は、政治、経済、社会的な側面から、黒人の闘争の歴史を取り上げています。

 

「招かれざる客」は、黒人と白人の結婚という問題に集中していましたが、大統領の執事の涙は、黒人の平等を求める闘争をより広い意味で伝えています。

 

招かれざる客の他にも、公民権運動の時代にハリウッドで制作された映画は、特定の小さな問題を集中的に取り上げています。例えば、1959年の「悲しみは空の彼方に」は、白人優位の社会で、ハーフの少女がアイデンティティを見出そうとする問題を取り上げており、1967年の「夜の大捜査線」は、白人の警官が黒人の警官を必要とする問題に集中しています。しかし、大統領の執事の涙は、黒人の闘争と抗議の長い歴史を取り上げています。

大統領の執事の涙に出てくる白人たち

 

オバマ政権時代に制作され、黒人の闘争と人種差別の歴史を公平に伝えている映画には、この他にも、2011年の「ヘルプ~心がつなぐストーリー」、2012年の「リンカーン」、2014年の「グローリー・明日(あす)への行進」があります。

 

すでにお話したように、これらの映画の共通点は、人種差別の歴史と黒人の闘争が丁寧に、公平な視点から描かれていることです。歴史を公平に振り返ることで、黒人が歴史の中で経験してきた苦痛や機会を現実的に描こうとしています。

 

これらの映画の黒人は、自分たちも白人と平等の権利を持つ第一級の市民であることを受け入れるよう、社会や統治の体制に訴えます。これらの映画の多くの主人公の黒人は、白人至上主義に対して抵抗し、その要求を少しずつかなえようとします。

 

公平な見方をしている映画は、オバマ政権時代のものだけではありません。それ以前の時代にも、そのような映画が制作されてきました。とはいえ、オバマ政権時代には、特にその数が増加しています。