1月 10, 2019 03:20 Asia/Tokyo
  • アストラガルス
    アストラガルス

今回は、レンゲ属の多年生植物アストラガルスをご紹介してまいりましょう。

アストラガルスは、イラン国内の大半の地域に自生する、レンゲ属マメ科の植物です。この植物は、200種類以上にも上り、その一部からは製薬産業で多用されるタラカントゴムがとれます。

タラカントゴムが多目的に使用できる事から、イランの一部の地域では現在、アストラガルスの乱獲が進み、この植物が絶滅の危機に瀕しています。

アストラガルスは多年生の植物です。この植物の茎は、成熟すると濃い紫色になり、また花の色は普通は紫色ですが、時として青や白、黄色い花が咲く事もあり、それぞれの枝の先端付近に、ヒヤシンスや房のように集まった形で花が咲きます。なお、この植物は種子により繁殖します。

 

アストラガルス

 

アストラガルスは、乾燥した気候条件にも耐えられるとともに、塩分の多い土壌でも良好に成育し、ミネラルの1つであるセレニウムの匂いを発します。また、この植物の一部の種類には毒性があり、家畜がこれを食べると食中毒を起こします。さらに、生育期間中に、家畜に呼吸困難や神経麻痺などを起こす毒性の物質グルコシドを生産します。

 

アストラガルスの茎に含まれる樹液には、非常に強い特徴があります。この植物の茎の下の部分に何らかの方法で傷つけると、樹液が分泌され、それが空気に触れて乾燥すると、黄色や茶色、あるいは無色で平たい形やしずく状などの固形物質ができますが、これはタラカントゴムとして知られています。

良質のタラカントゴムは、アストラガルスの古い枝から取れます。また、透明度が高く、無色に近く、薄いものほど高品質で、より高い値段がつきます。世界で最も良質のタラカントゴムは、イラン製のもので、昔からペルシアン・トラガカンスとして知られています。

 

タラカントゴム

 

 タラカントゴムはトラガカンスとも呼ばれ、昔から医薬品として幅広く利用されてきました。そうした例として、咳止めや感冒薬としての利用があげられます。

トラガカンスは、ほかにも下痢止めに使われています。それは、大量の水を吸収し、体内からの水の排出を阻止するからです。さらに、この物質には体内でのがん細胞増殖を抑制する効果があることが報告されています。また、この物質に粘着性があることから、入れ歯の接着剤にも使われています。

さらに、一部の国ではトラガカンスは食料品にも使用されるほか、産業レベルで錠剤、ソーセージなどの充填物、懸濁液などに幅広く使われています。

アストラガルスの特質が広範囲にわたり、またその副作用が少ないからといって、これを過剰に摂取する事は、体の免疫システムに弊害を起こすことになりかねません。このため、特に妊娠中の女性や、全身性エリテマトーデス、そのほかの免疫システムの病気に罹っている人は、この植物の利用を控えることが推奨されています。

 

アストラガルスの採取

 

アストラガルスからは、タラカントゴムのほか、高い栄養価と大きな薬用効果のある蜜もとれます。この植物から取れる蜂蜜は、体の健康や免疫システムに非常に効果があります。

アストラガルスから取れる蜂蜜は、蜂蜜の一般的な特性に加えて、ほかにはない独自の特徴があり、骨粗しょう症や足の痛み、腰痛、関節の痛みに効くほか、神経の強化にも使われます。

さらに、注目すべき点として、アストラガルスからとれる蜂蜜には全く副作用がない事があげられます。それは、ミツバチによって採取された蜜が、ミツバチの体内に蓄えられて変質し、アストラガルスそのものを摂取した場合の副作用を起こす物質が、蜂蜜となった時点では消失しているからです。

 

アストラガルスから採取された蜂蜜

 

 今日、残念ながら違法な採取により、アストラガルスが絶滅しかかっており、一部の地域にあるこの植物の備蓄場所も失われつつあります。もっとも、近年では森林保護管理局がイランの多くの地域の住民の協力を得て、草原や牧草地の破壊を阻止し、そこに自生する植物の保護により土壌の破壊を防ぐ事に努めています。

アストラガルスは、独自の形態で自生、繁茂することから、特に風や降雨による土壌の浸食を防ぐ働きをしています。この植物が広範囲にわたって繁茂することは、土壌を形成する砂や土の粒を互いに粘着させ、土壌の奥深くにおける適切な湿り気を維持し、そのほかの植物の生育にも適した環境を整えることになります。アストラガルスにこのような一連の利点があることから、この稀少植物を保護する必要性が証明されています。

 

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