2018年3月23日(芝田・山口)【音声】
芝田
さて山口さん、イラン暦も新しい年を迎えました。
山口;そうですね。いよいよイランの太陽暦1397年が明けました。周りの方々もすっかりきれいになった住空間で真新しい服を着て、来客の応対や、あるいは年始周りで忙しくしています。ですけれど、嬉しい忙しさというものでしょうか。イラン暦の昨年は、地震やタンカーの事故など、マイナスの出来事が少々多かったようですが、今年はぜひ、喜ばしい出来事の多い年になってほしいものですね。
芝田
ところで、日本のお正月は、いつも必ず、1月1日の午前0時に迎えますけれども、イラン暦では、いつも新しい年を迎える瞬間、年が移り変わる瞬間の時刻が変わりますよね。
山口
そうですよね。今年の年の移り変わりは、午後19時45分でした。確か、去年はお昼過ぎだったでしょうか?
芝田
はい。毎年こんな風にして、年が移り変わる時刻が違うので、いつもお正月を迎える雰囲気が変わって面白いです。イラン人は、この年の移り変わる瞬間を家族で集まって迎える習慣がありますが、今年の山口さんの年の移り変わりの瞬間はいかがでしたか?
山口
はい、私もやはり主人や義父とともに、ノウルーズの縁起物のハフトスィーンを囲んで、和やかに過ごさせてもらいました。私はこの縁起物の中でも、麦芽のエキスから作るペースト、サマヌーが大好物でして、それを知っている義父が、親戚に頼んでたくさん作ってもらってきてくれました。ここのところ毎日、朝食はサマヌー三昧ですね(笑)
芝田
毎日、好物が食べられてうらやましいです。
イランでは暦の上では、とりあえず、お正月を挟んで明日まで5連休です。自営業の人なんかは、14連休という方もいます。うらやましい限りですが、この時期は特にテヘラン市民は旅行に出かける人が多くて、テヘランは本当に人が少なくなりますよね。山口さんは旅行の予定などはありますか?
山口
実は、ノウルーズ期間中は年始周りや来客の接待に忙しくて、そのような時間が取れそうにありません。ですが、ノウルーズが終わって落ち着いてから、もしできたらコーカサス地方に旅行に行く主人の親戚に便乗して、一緒に行ってみようかと考えています。まだ、思案中ですが。
芝田
イランからも近いですしね。そのチャンスは逃したくないですね。
●リスナーより
神奈川県川崎市の及川かずあきさんからいただきました。山口さん、ご紹介をお願いします。
「ペルシャ民話の園では、ライオンの難を逃れたウサギの話でしたが、この話を聞いていると、王者として君臨するライオンとウサギを含むそのほかの動物たちの関係が、現在社会の組織やコミュニティ、しいては国際情勢にもなぞられるものでした。この民話にライオンが登場するということは、昔、イランにライオンが生存していたということなのでしょうか?」
●ラジオより
芝田
ペルシャ民話の園についてのご感想で、昔、イランにライオンが生存していたのか、というご質問でしたが、まったく同じご質問を千葉県船橋市の須藤幹雄さんからもいただいています。
山口さん、イランに昔からライオンがいたかどうか、ご存知ですか?
山口
ライオンがいたかどうかは正直なところわかりませんが、以前に、ラジオ日本語がお送りしている「イランの稀少動物」を翻訳していたときに、ペルシアンヒョウというのがいることをはじめて知りました。さて、答えは???
芝田
はい、調べてみたところ、イランには昔から、インドライオンと呼ばれる種類のライオンがいたようです。アフリカに生息するライオンに比べると小柄だそうですが、この種類のライオンは、インドから中東に分布していたそうです。イランでは草原地帯にライオンが数多く生息していて、10世紀の詩人の詩には、一日に8頭ものライオンを射止めたという内容のものがある、ということでした。
山口
そういえば、アケメネス朝時代の世界遺産であるタフテジャムシード、ペルセポリスにも、イランのライオンの姿が石に彫刻されています。
芝田
その通りなんです。つまりその頃から、イランにはライオンが存在していたのではないでしょうか。ある文献には、ライオンはイラン人のシンボルだったとあります。あとは、イランの手織りじゅうたんやミニアチュールなど、芸術作品の中でも、ライオンの狩猟の様子が描かれています。ライオンはイラン人にとって身近な存在だったようです。
山口
そういえば、コインを投げて表か裏のどちらが出るかで占うときにも、「ライオンか文字か」と言っているのを聞いたことがあります。ライオンの浮き彫りがある面と、文字のみの面のどちらが出るか、ということですね。また、ペルシャ語にもライオンを使った慣用句や表現がありまして、他人をライオンにするな、という慣用句は、やたらにその人を調子に乗せてはならない、といった意味になるそうです。このような例をとってみても、やはりライオンはイラン人にとって身近な存在といえるのではないでしょうか。
芝田
そうなんですねー。どちらも知りませんでした。
●リスナーより
続いてのお便りをご紹介しましょう。埼玉県富士見市のやまざきふみひこさんからいただきました。
「テヘラン市内のFM放送は、どのような放送内容か、紹介してください」
●ラジオより
芝田
山口さんは、イラン国内のラジオ放送を聴いたりしますか?
山口
そうですね。ラジオの仕事が終わって帰る時間帯に、送迎サービスの車に乗るとカーラジオがかかっていて、よくクイズ番組をやっているんですよ。あれを聞いて結構いろんなことを知りました。
芝田
私はもっぱら、タクシーの中で聴くくらいですが、それでも頻繁に聴くチャンネルがあると、このチャンネルは人気があるんだな、とか、この番組はよく耳にするなとか分かってきます。私もクイズ番組をよく耳にしますね。人気があるのでしょうか。クイズ番組は、単に質問をして、それに答え、時間内にいくつ以上正解したら、賞金がもらえる、というものですが、確かに勉強になりますよね。他に何か知っている番組はありますか?
山口
そうですね、私がよく耳にするのは、ラジオ・ジャヴァーン、つまり若者向けの番組ということでしょうか。ほかにも、番組と番組の間などに流れる、ちょっとした名言や教訓など、大変ためになる内容があるので、ラジオから流れてきたら、これは必ず聞くようにしています。日本でも以前に、確かラジオで「暮らしの一分メモ」をやっていたような覚えがありますが、イランではさながら、「暮らしの1分名文句」とでもいったところでしょうか。最近聞いたもので、特に印象に残った言葉には「いつはじめても遅くない。新しいことにチャレンジした人の勝ち」といったものでした。短い瞬間に、とてもいいことを言っていると思います。
芝田
ラジオ・ジャヴァーンも、確かに人気がありますよね。格言の番組、勉強になりますね。
●リスナーより
滋賀県大津市の中小路一男さんからいただきました。山口さん、ご紹介をお願いします。
「金曜広場のインタビューにあった須藤のぶひろさんの話では、外国人に日本語を教えることの難しさについて、考えさせられる点が多くありました。」
●ラジオより
芝田
山口さんはイラン人に日本語を教えたりしていらっしゃいましたよね。そのときに難しいな、と感じた点はどの辺ですか?
山口
そうですね。実は私は外国語としての日本語の指導法などを正式に学んだことがなかったので、本当に手探りの状態でした。ネイティブとして見つけた言葉と、外国語として学ぶのとでは、雲泥の差があるということに気づかされました。また、一口に日本語と申しましても、ひらがな、カタカナ、漢字の指導もさることながら、文法、慣用句、敬語法、使役、動詞の活用など、内容が非常に多岐にわたりますため、こうした事柄をペルシャ語でいかにわかりやすく説明するかに非常に苦心しました。それから、イラン人の日本語学習の最大の難関の1つは、漢字もさることながら、アクセント、単語の音節のどこを高く読むか、低く読むかということではないかと思います。また、イラン人用にペルシャ語で書かれた日本語の教則本や漢字の手引書が本当に少ないということを実感しました。これは今後の課題になると思います。
芝田
イラン人の日本語学習能力はどうでしたか?よく日本人は外国語を覚えるのがそれほど得意じゃないと言われますよね。日本語の特長によるものだと聞きますけれど、イラン人はどうですか?
山口
イラン人は、かなり外国語の習得に関しては優秀だと思います。特に会話は習得が早いと感じます。但し、やはり日本語など文字数の多い言語の読み書きについては、かなり苦労しているようです。聞くところによりますと、ペルシャ語には世界で話されている言語に必要な音素のほとんど全てが含まれていることから、外国語の音声、発音の習得にはかなり有利だと聞きました。また、英語圏の留学に必須とされているTOEFLやIELTSの試験でも、イラン人は日本人よりかなり高いそうです。
芝田
そうなんですね。山口さん自身もたくさんの外国語を学んでいらっしゃいますよね。外国語を習得するコツのようなものはありますか?
山口
そうですね。イラン人にも同じようなことをよく聞かれますが、ペルシャ語で言うと、まず「アンギーゼ」、つまり「やる気」、次に「ホウセレ」これは、根気、そして最後に「エダーメ」年季、もしくは継続の3つではないかと思いますが、いかがでしょう?