3月 29, 2018 18:37 Asia/Tokyo

この時間にお話しする主なテーマです。 イランとパキスタンの経済関係を見ていきます。 数か国の経済プロセスにおけるイランの地域的な役割を振り返ります。 核合意に対するEUの行動とアメリカの動きを分析します。

イランのザリーフ外務大臣は、イラン暦の昨年末にあたる3月中旬、3日間に渡ってパキスタンを訪問し、両国の政治、経済関係について話し合いました。この訪問に30人から成る経済部門の関係者が同行したことは、経済目標、特にエネルギー分野の目標が重視されていることを示しています。

 

ザリーフ外相はこの訪問で、イランとパキスタンの国交70周年を記念する式典や両国の経済会合に出席し、パキスタンのエネルギー需要をまかなう上でのイランの完全な用意を表明しました。

 

この話し合いの重要性は、イランからパキスタンやインドに天然ガスを移送するパイプライン、平和のパイプラインに関する協議の中にあったと言えます。この協議の中で、両国の石油省が、これに関する技術的な問題を追求することになりました。ザリーフ外相は、パキスタンへの天然ガス移送パイプラインの建設に関するイランの措置に触れ、次のように語りました。

 

「イラン政府は、イランの天然ガスをパキスタンに輸出する契約について、自国の取り決めを履行する中で、これまでにこのパイプラインの建設に20億ドル以上を投じており、、パキスタン側の取り決めの履行を期待している」

 

イランの天然ガス産業

 

イランとパキスタンは、2013年3月、2014年末までにこのパイプラインのパキスタン側の部分を完成させ、イランの天然ガスの輸出を開始することで合意しました。しかし、パキスタンの国境までのイラン側の900キロのパイプライン敷設は完了しているものの、パキスタン側は、国内のこのプロジェクトの完成に向けた措置を講じていません。

 

イランと他国の経済関係において重要な問題のひとつは、イランの多様な交易ルートの利用です。イランは、戦略的な位置にあるため、エネルギーとともに、製品の輸送を容易に行うことができます。

 

2016年12月、ユーラシア経済連合の加盟国の首脳が、イランとの自由貿易区の創設に関する協議の開始について明らかにしました。このことは、インド、パキスタン、イラクへの輸送ルートや北と南の輸送ルートを整備するための下地を整えることになるでしょう。

 

ユーラシア経済連合の加盟国は、農産品の他、鉄鋼や合成繊維などの工業製品、電力をイランに輸出しています。イランからも、農産品や建築資材、石油製品がこれらの国に輸出されています。

 

アメリカのトランプ大統領は、昨年、イランに対して強硬な立場をとってきましたが、それでもなお、核合意を認めざるを得ず、イランに対する核関連の制裁の停止を延長しました。とはいえ、声明の中でいくつかの条件を提示し、もしそれらが実現されなければ、今後は制裁の停止を延長しないと強調しました。

 

トランプ大統領

 

トランプ大統領は、ヨーロッパ諸国がイランのミサイル問題に神経を尖らせるように仕向け、彼らをイランへの支援から遠ざけようとしています。しかし、トランプ大統領の提示した条件は、ヨーロッパをイランから遠ざけることができるのでしょうか?国際問題の専門家、マジュレスィー氏は次のように語っています。

 

「これに関しては2つの点に注目する必要がある。ヨーロッパとアメリカの対立、そしてヨーロッパの核合意の支持と、シオニスト政権イスラエルへの支持におけるアメリカとヨーロッパの同調である。これらの問題は共に結びついており、複雑かつ繊細な問題になっている」

 

マジュレスィー氏は、次のように語っています。「トランプ大統領は法的に核合意を破棄することができず、またこの合意の破棄は彼の利益にならないため、それを破棄することはなく、またそのすべてを無効にする必要はない。これらは、外国に、イランが常に安定性を欠いているように見せ、イランへの外国投資を妨げるためのプロパガンダである」

 

ヨーロッパ諸国はどうやら、トランプ大統領に対し、核合意に残留すれば、自分たちもミサイル問題やテロへの支援を巡るイランへの圧力行使に協力すると言ったようです。アルモニターはこれについて、「ヨーロッパは、アメリカの核合意残留の代償をイランに支払わせようとしている」としています。

 

ヨーロッパは、トランプ政権に対し、すべての国が核合意に留まり、最終的に、他の問題に対して解決策を講じるための機会を得るようにすべきだと伝えたと主張しています。アルモニターによれば、ヨーロッパは、核合意は、より大きな戦略の一部に過ぎず、さらに大きな問題に対処する上での手段として捉えるべきだと主張しています。

 

国際問題の専門家であるエナーディ氏は、核合意に関するアメリカとEUの見解の違いを調整するためのトランプ大統領の戦術について次のように語っています。

 

「このようなシナリオは、イランの地域問題やミサイル問題へと議論を持ち込むためのものだ。アメリカは、核合意の形のみを残し、その一方で、人権やテロに関する制裁を整え、行使しようとしている」

 

エナーディ氏はまた、トランプ大統領の実業家的なアプローチに触れ、「彼は、厳しい政策を進めようとしており、核合意もその一つである。アメリカ大統領はこれについて、その代償を最小限に抑えようとしている」と述べました。

 

イランに対する圧力を拡大しようとするアメリカの動きに注目し、エナーディ氏はこう語っています。「トランプ政権は、核合意を有名無実化する傍らで、制裁を拡大し、アメリカは自分たちの要求をかなえたというメッセージを支持者に伝えようとしている」

 

ザリーフ外相は、2月にロシア・スプートニクのインタビューで、核合意の現在と今後の展望について次のように語りました。

 

「シオニスト政権イスラエル、地域の2、3カ国、そしてトランプ政権を除く国際社会は、核合意は国際的な合意であり、イランとアメリカの二国間の合意ではないという意見で一致している」

 

ザリーフ外相は、国際体制において、いずれかの国が力を持ち、それまでの合意を破ることができれば、いかなる合意も成立しないとしています。そのため、もしアメリカが核合意の離脱を決定すれば、世界で孤立することになるでしょう。

 

ザリーフ外相は同時に、ヨーロッパの立場を評価する中で、次のように語っています。「ヨーロッパは、まず核合意に関する再協議には賛成しないこと、第二に、自分たちの利益と核合意を支持することをはっきりと述べているが、そのために何ができるか、どの程度、政治的な意志があるかについては、今後の状況を見守る必要がある」