昨年度のイランにおける科学技術
科学技術の進歩と発展は、イランの体制にとって重要なものです。このため、能力の拡大、科学技術の進歩は、イランの大学や研究機関の優先的な計画とされています。昨年3月21日から今年3月20日までのイラン暦の昨年、科学技術は発展に向かい、そのほかの価値ある努力とともに、さまざまな分野における科学技術の向上が見られました。
イスラム革命最高指導者のハーメネイー師は、昨年10月18日、若手の学術分野のエリート数百人と会談する中で、科学技術は国力の基盤だとして、次のように語りました。
「われわれの国は、科学技術に関して輝かしい歴史を持っているのにもかかわらず、外国に支配されていた時代、科学技術に関しては遅れをとっており、この遅れを取り戻さなければならない」
ハーメネイー師は国の非常に高い可能性により、科学技術の発展の下地が築かれたとして、イランのエリート基金や科学技術担当副大統領府の業績に満足感を示し、「この程度の進歩で満足すべきではない、我々は好ましい到達点からはまだ程遠い」と語りました。
イランは現在、科学技術に関して新たな段階に入っており、この中で、学校や大学、実験所、サイエンスパークなどのインフラ拡張に向けた絶え間ない努力が行われています。
イランは航空宇宙技術において地域で首位であり、世界11位となっています。イラン航空宇宙機関のバラーリー長官は、イランは世界で9番目に衛星を打ち上げることのできた国であるとして、次のように語りました。
「航空宇宙機関の活動の最初の10年で起こったこの重要な出来事は、イランの学者や専門家の能力を示すものだ」
科学技術の発展に関して、核技術におけるイランの成果は非常に大きく、これはイランの核科学の専門家によって成し遂げられました。イランのサーレヒー原子力庁長官は、昨年、イランの核技術の日に際した式典で、新たな核技術による成果に触れ、次のように語りました。
「イランはこれらの技術を使っている世界で4番目、中東で最初の国だ。最初のアイソトープの研究炉が、核分野での研究の大きな成果として、フォルドの施設で利用されることになる」
これに関して行われた努力のほかに、放射性医薬品をインドやパキスタン、エジプトやレバノンなどの数カ国に輸出することも実現しています。イランはヨーロッパ諸国と原子力計画に関して、ハイレベルの協力を行っています。
現在、ナノ技術やバイオ技術、認知科学、再生可能なエネルギー、航空宇宙、マイクロエレクトロニクス、ES細胞などの技術発展において、イランの成長度合いに対する注目は高まっています。新たな分野におけるナレッジベース企業の成長により、イランにおける中程度、あるいはハイレベルの技術を要する製品輸出は、拡大しています。
イランの政策とは、国内に石油や天然ガスが豊富に存在している中で、天然資源による経済から、発明と利益に基づいた経済への移行です。この分野のひとつが、平和目的による核技術の発展なのです。
イランにおける核技術は、妨害や制裁をよそに、現在、イラン国産の技術となり、核合意の実施により、IAEA国際原子力機関との合意の枠内で科学技術の研究・開発といった形で続けられています。
イランは量子力学の分野においても目標を達成し、発展する中で、原子力庁の内部で量子力学の研究所を創設し、さまざまな分野の研究者がこの分野で研究活動を行うことができるようになっています。
イランのローハーニー大統領は、昨年度、カザフスタンの首都アスタナで開催されたイスラム諸国科学技術協力会合で、次のように語りました。
「我々は科学技術の名において、また科学技術的な外交に基づいて、イスラム世界において、補充的な可能性を構築し、能力を拡大するための共通の分野を追求すべきであり、それはできる、と言う用意がある」
イランは輝かしい歴史を持つ国であり、イスラム以前と以後の2つの文明期の中で、人類史における科学技術の先進国でした。イラン国民は、教育の精神、思想、イスラム文明によって、特定の時期に繁栄や発展を遂げ、その中で医学、薬学、天文学、数学、物理学、化学、地理学、哲学、イスラム法学、神秘主義思想、文学、芸術といったさまざまな分野で頭角を現していました。また、中世から16世紀までの時代、ヨーロッパはその一部をイランから学んでいたのです。
しかし、新たなイスラム文明の発展を鈍らせ、停止させたものとは、西側世界の体制の文化的、政治的支配であり、イスラム世界はこの標的となり、歴史的な停滞を余儀なくされました。この植民地主義的な動きが続く中で、イスラム文明は停滞することになり、その中で、部族的、地域的に偏った思想が出現しました。支配者層が弱体化する一方で、エリート層が自身を見失ってしまったことで、イスラム世界でこの流れが加速したのは明らかな事実です。
イランにおける知的生産の動きは、自信と未来への希望と言う2つの重要な柱の成果です。この2つの柱は、イスラム革命の勝利当初から、イラン国民の先進的な科学技術活動の基盤となっており、敵の妨害、制裁、あらゆる困難の中であっても、イラン国民は、失望することなく、前進を続けただけでなく、数々の成功により、科学技術において多くの進歩を遂げることができたのです。
現在も、イランでは、100近くの研究機関が、ES細胞などの生産やがん治療などで活動を行っています。
イラン暦の昨年度、アジアサイエンスパーク会議がベトナムで開催されました。イラン中部イスファハーンのナレッジベース企業は、非常に低温の液体を貯蔵する2つの低温物理学的なタンクを開発し、この会議で授賞されました。この賞は、毎年、技術的な成果の商品化に向けたナレッジベース企業を奨励し、成功した企業の模範を紹介し、提携企業を見つける機会を作り出すためのものです。
現在、イランの科学技術における世界ランクは18位です。また、他国との提携契約の中での、イランのナレッジベース企業や技術組織による、235のプロジェクトが実施されています。
イランには39のサイエンスパークがあり、それによる輸出額はおよそ2億1500万ドルに達しています。イランはまた、ナノ技術における先進国で、この技術の知的生産に関するイランの世界ランクは6位です。
イランのゴラーミー科学技術研究大臣は、テヘランで行われたハーラズミー国際式典にて、次のように語りました。
「全世界の1%の人口を抱えるイランは、国際的な論文数において1.9%を占めており、また、被引用件数の多い論文の2.9%を提供している」
そのほか、発明においても、イランは世界113位から78位にまでランキングを引き上げ、この点でも地域で首位となっています。
学術調査機関サイマゴのランキングによりますと、イランは2016年、海洋工学における知的生産の点で世界6位であり、この中で、オーストラリア、ドイツ、イタリア、フランスよりも上位となっています。
ハーメネイー師が、イランの大きな目標について語る中で強調したように、イランは栄誉ある、信仰心や精神性あふれる力強い先進国に、そして新たなイスラム文明の担い手になるべきなのです。
ハーメネイー師は、大学教授や研究者など、数百人が出席した会合で、世界において急速で大きな変化が起きていることに触れ、今後数十年の世界は多くの問題を抱えることになるとして、大学教授らに対して、このような世界に対面するため、イランの知識を求める若者を育てるよう述べました。
ハーメネイー師は次のように語っています。
「敬虔で革命的、聡明かつ決意を持ったイランの若い人材が育成されれば、未来の急速な変化の中で、歴史的なイランの依存状態を本当の意味で打破することができ、イランとイラン人をあるべき地位に押し上げるだろう」