4月 23, 2018 21:17 Asia/Tokyo
  • 自然環境について考える
    自然環境について考える

前回は、現代の世界における自然環境保護に向けた重要なアプローチの1つとしての、持続可能な開発についてお話しました。今回はその続きとして、持続可能な開発における様々な機関や各国政府の役割についてお話することにいたしましょう。

前回お話したように、持続可能な開発とは、未来の世代のニーズに支障をきたさないようにした上で、現在のニーズを満たしていく発展を意味します。この概念は実際に、環境問題を論理化したことによる重要な成果の1つであり、これにより人類は自然体系を認識することで将来的に悪影響を及ぼす行動を識別できるようになります。

 

今日、環境問題をめぐる論争の焦点となっている、持続可能な開発が提起されたことにより、世界の人々は行き過ぎた利己主義をある程度抑制し、問題を人道的、国際的な視点から捉えることに成功しています。もし、人類が持続可能な開発における有益な知識を習得し、その真剣な活用を目指すなら、最も重要な歩みを踏み出したといえます。

 

世界経済は、自然環境とは切っても切れない関係にあります。人類が持続可能な開発の原則を考慮しなければ、天然資源は採掘、利用、加工され、最終的にそれらの資源やエネルギーのすべては廃棄物となってしまうでしょう。これに対し、持続可能な開発の原則を守れば、自然環境に対する経済活動の悪影響を最小限におさえることができるはずです。

 

言うまでもなく、発展という現象は産業技術の一方で、自然環境の汚染や破壊とも密接に結びついています。多くの環境保護の専門家や活動家の間でも、人類社会の経済の繁栄に欠かせない産業が発展すれば、自然環境が破壊、汚染されない本来の状態を保つことは不可能である、と考えられています。しかし、自然環境を管理することで、汚染や破壊の悪影響を減らし、持続可能な開発のプロセスをある程度助けることは十分可能なのです。

 

環境保全と共に、バランスのとれた工業技術を利用することは、現在から将来にわたる生物の存続や成長、健康の維持にとっての助けとなりうるものです。そして、この重要な事柄は、特に鉱工業分野での活動を初めとする全ての開発プロジェクトの実施の前後における、正しい管理や環境関連の調査・教育、環境アセスメント、環境破壊を未然に阻止する法規制の制定などにより、実現することが可能です。このため、社会の産業化の一方で、環境問題といった重要な課題が注目されなければ、経済発展が実現しないのみならず、さらに多くの問題が発生することになります。場合によっては、産業活動で得られた利益の全てが、長期的に見てそうした活動による被害の埋め合わせに使われることにもなりかねません。

自然環境について考える

 

専門家の考えでは、経済的、社会的な目標の達成を目的とする計画の実施に当たっては、必ず自然環境の問題に注目する必要があるとされています。このため、今日では国際舞台において、良好な環境の中で生活を営む権利としての環境権が認められると共に、各国の国内の法の中で、この権利がこれまで以上に重視されています。特に、1970年以降に可決、或いは全面的に改正された各国の憲法の多くにおいて注目されています。

 

世界各国では、憲法に加えて、経済、文化、社会の分野での開発計画に関する法律も、環境権の実現に向けた策を想定しています。その例として、環境権はイランイスラム共和国憲法の第50条で正式に認められています。この権利のもと、人々や社会は自然環境や経済、社会、文化、法律面での発展を享受し、健全な環境の中で暮らす権利を有しています。そして、各国の政府は、環境を危険に晒し、集団の健康を脅かすようなことをしてはならないとされています。

 

このことから、持続可能な開発に向けた計画の立案や主導における各国の政府の役割は、否定できないものです。環境問題の専門家、マイケル・レッドクリフトは、これについて次のように述べています。

 

「全ての国の政府は、発展において重要な役割を担っている。各国の政府は、持続可能な開発に沿った法を定めることで、様々なレベルにおける社会的な活動を組織化することができる。さらに彼らは、直接、或いは間接的に環境分野における民間部門の活性化に寄与することが可能だ。特に第3世界の国々の政府は、永続に関して先駆的な役割を果たすことができる」

 

アメリカ・ハーバード大学で教鞭をとるアレクサンダー・ガーシェンクロンをはじめとする一部の専門家は、次のように考えています。「経済発展が遅れていればそれだけ、開発計画にフォーカスすることができる」

 

第3世界での持続可能な開発の実現のプロセスにおいては、必然的に、各国政府の積極的な参加、しかも関係国の人々の自由や政治への参加といった条件の遵守が強調されるべきです。各国の政府による支援や行動なくしては、第3世界において持続可能かつ国民的で内発的な開発を保障することはできません。もっとも、現代世界におけるいずれの発展も、民間部門の積極的な参加なしには実現されない、ということに注目する必要があります。20世紀末に発生した大規模な変化は、この問題を明白に物語っています。

 

新しい時代の特徴の1つとして、地域や国、国際レベルでのNGOの活動が挙げられます。これらの組織は、正式な活動の制約を受けないことから、持続可能な開発に参加する上で極めて好ましい条件を得ています。例えば、市民の見識のレベルの向上に大きな役割を果たした特徴の1つに、様々な社会における、媒体を介さない、市民との直接の交流が挙げられます。

 

社会の良心としての世論の見識を高め、刺激することで、こうした市民団体は政府の一方的な行動を阻止し、ある意味で政府の行動を監視し、制御できるようになります。こうした機能は、特に非政府系組織の力を安定させる下地になるとともに、こうした組織の有能さを示す根拠にもなります。

自然環境について考える

 

1992年にブラジル・リオデジャネイロで開催された地球サミットには、176カ国の正式な代表者が出席したほか、1500以上のNGOも参加しました。こうした傾向は、急速に規模を増し、20世紀と21世紀初頭に開催されたそのほかの国際会議でも繰り返し見られました。

 

もっとも、自然環境保護と持続可能な開発は世界的なテーマであることから、二国間、或いは多国間の協力や連携も、国や地域の利益に基づいた環境保護を目的に、恒久的な決まりごとを確立するための下地となりえます。

 

この分野においては国際協力、特に国連の役割も非常に効果的です。

 

国連は、30年前から環境保護と持続可能な開発に取り組んできました。

 

1992年にリオデジャネイロで地球サミットが開催されたことは、自然環境保護における転換点となりました。この国際会議で採択された事柄、特にアジェンダ21は、21世紀を迎えるにあたって世界で環境保護の下地を作るための最も重要な計画文書であり、これにおいては持続可能な開発が一貫したシステムとして強調されています。

 

これについては、UNCED・環境と発展に関する国連会議の事務局長を務めたモーリス・ストロング氏も、地球サミットで最終的に採択された内容をもとに、1994年に発表された序文において、自然環境の原則に基づく第2次産業革命を形成させるための努力について触れました。彼はまた、未来の世界をより安全で持続性のある、しかもより公平なルートに乗せることが急務である、と強調しています。

 

これまでにお話してきた内容から、幸いにも環境保護と持続可能な開発の分野での国際的な協力の必要性は十分に理解されているといえます。また、不健全で危険な組織、空気や水質の汚染、下水、山岳地帯や海岸地域に関する法律が正しく施行され、法律を執行する行政組織同士で、あるいは市民の間で、さらには政府間同士で、協力や連携がなされれば、一部の国の政府による利潤を追求するための行為が少なくなり、未来の世界や環境保護への希望の光が見えてくるでしょう。