4月 24, 2018 20:41 Asia/Tokyo
  • パリ会議
    パリ会議

前回は、これまでに国際レベルで自然環境保護に向けて実施されてきた措置についてお話しました。現代において自然環境を保護する唯一の方法は、世界規模での協力以外にありません。今回は、前回の続きとして、これまでに国際レベルで行われてきた環境保護措置について考えることにいたしましょう。

1992年、ブラジルのリオ・デジャネイロにて国連の主催により、環境と開発に関する国連会議・地球サミットが開催されました。

このサミットでの主な議題は、オゾン層の破壊や気候の変動でした。このプロセスの続きとして、西暦2000年には国連総会にて、国連ミレニアム宣言が採択されています。

オゾン層の破壊

 

ミレニアム宣言により、189カ国の首脳が2015年までの8つの理念の達成を志すことになりました。それらの目標の1つが自然環境の保護です。各国の首脳は、環境保護に向けて全力を尽くし、持続可能な開発の原則を、自国の政策や計画に組み入れ、環境破壊を阻止することを約束しました。

これらの理念には、重要な目標が含まれていました。各国の代表者の間で合意に達した最も重要な項目には、天然資源の浪費の禁止、海産物の減少と土壌のへ疲弊への注目、気候変動と温室効果ガスの削減であり、これらは全て各国の発展に影響を及ぼす最も重要な問題です。

西暦2000年に各国の間で合意が成立したにも拘わらず、2015年には世界の天然資源や自然環境の破壊の流れを阻止するための十分な進歩が見られないことが明らかになりました。複数の報告によれば、依然として多数の動植物の個体種がかつてないスピードで絶滅しているということです。気候の変動は進んでおり、海水面の上昇や干ばつ、洪水といった危険が、常に人類の生活を脅かしています。降水量の減少により、干ばつや水不足が多発しています。2014年の水不足は特に深刻となり、そのため専門家の間ではその後、水不足、食糧やエネルギーの確保をめぐる競争の激化により、各国の首脳は深刻な問題を抱え、さらに多くの国の政府が気候変動による病気の蔓延や食糧源の不足といった問題に直面することになると見られています。

オゾン層

 

地球温暖化と気候変動の問題は、幾つもの悪い結果をもたらす可能性があります。このような現象は、人間やそのほかの生物の生命を脅かす10項目の主な危険因子のひとつです。例えば、地球の温暖化により氷山(アイスキャップ)が氷解します。氷山は、天然の寒暖計のような機能を果たしており、気温が上昇すると氷解し、逆に気温が低下すれば氷山の面積も増大します。氷山が溶け出すと、大量の水が海洋の循環サイクルに流入し、海水面が上昇します。これにより、現在地球に住む人々のおよそ半分が居住する沿岸地帯の多くが水没する可能性があります。

気候の変動による影響は、自然界のみに留まらず、人間社会もその影響を逃れることはできません。気候の変動による干ばつや水不足の危機、農作物への被害の増加、地下水や肥沃な土壌の減少により、世界の農牧業が打撃を受けることになります。

こうして、食糧の安全が失われることは、世界各国での飢饉や社会的な混乱にもつながります。さらに、地球温暖化は人間の健康にも深刻な影響を及ぼすと予想されています。研究者や科学者の間では、地球温暖化の影響の例として、蚊が媒介するマラリアやデング熱といった伝染病の蔓延、そして喘息などの慢性病の拡大が指摘されています。

こうした傾向は現在、多くの国の政府や国際機関の懸念を引き起こしています。2015年10月にボリビアで開催された気候変動及び生命防衛に関する世界人民会議において、当時のパン国連事務総長もこの点を指摘し、次のように述べています。

「世界は、気候変動の影響への対処を急ぐ必要がある。それは、冬には益々農作物が収穫しにくくなり、干ばつが拡大するとともに、地上の気温の上昇も生物が耐えられる限界を超えるからである。こうした気候の変動は、全て地球からの警告以外の何物でもない」

パン・ギムン前国連事務総長は、世界規模での温室効果ガスの排出量の削減に対する全ての国の取り決めに触れ、気候変動対策をきわめて重要なものだとしました。そして、「地球を守ることは非常に大切であり、これは各国の持続可能な開発計画に盛り込まれるべきである」と述べています。

パリ会議

 

気候変動の重要性から、2015年にはフランス・パリにおいて、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議が開催されました。

パリ会議は195カ国の首脳のほか、1万人の代表や4万人のゲスが参加して開催されました。その目的は、温室効果ガスの排出量の削減に向けた新たな国際条約の締結、そして地球温暖化対策に向けた貧困国への支援、そして地球の気温を2℃下げることとされています。

当時のパン・ギムン国連事務総長はパリ会議の開会にあたって演説し、世界の温室効果ガスの排出量の4分の3以上は、G20のメンバー国に責任があるとし、これらの国には発展途上国の発展を支援する責務があると語りました。そして、これらの国に対し、再生可能でクリーンなエネルギーへの投資を求めると共に、次のように述べています。

「180カ国以上の国々が温室効果ガスの排出量の削減に向けて行った取り決めは、良いスタートである。だが、地球全体の気温を2℃下げるという目標の達成は、産業革命前の時代の水準と比較すると、決して十分ではない」

パン・ギムン氏は、さらに次のように語っています。

「世界の富裕国は、自然環境への投資や地球温暖化防止のため、発展途上国に1000億ドルを支援する必要がある。地球全体の平均気温は、これまでに1.5℃上昇しており、努力目標としてこの上昇を2℃未満に抑えるべく緊急措置を講じなければならない」

パリ会議

 

パリ会議の終了に際し、195の参加国は全て、この共通の目標達成に向けて、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量の削減のための計画や、ロードマップを正式に発表することを受け入れました。これは、INDC・約束草案として知られており、間接的には、これらの国が地球の気温上昇を平均2℃未満に抑えるために受け入れた削減目標を意味しています。

パリ会議は、各国の首脳や専門家らによる11日間の意見交換の後に閉幕し、こうして世界各国が気候変動対策に向けたパリ協定を採択しています。この協定により、2050年までに地球の気温の上昇を平均2℃未満に抑えることが想定されているほか、先進国が2020年までに気候変動対策を目的に年間1000億ドルを割り当てることが取り決められています。このパリ協定は、 歴史上はじめて,全ての国が参加する公平な合意であり、2020年から施行が義務化されます。

パリ会議は確かに、国際世論の注目を再び環境問題に向けさせましたが、覇権主義国が果たして自らの利益を犠牲にし、発展途上国への資金援助を行うことで、パリ会議の目標や事実上人権の一部の一部でもあるそのほかの国際条約の達成を助けるのかを、今後見守っていく必要があります。