アメリカの人権侵害
アメリカ国務省の2017年における人権報告が、4月20日に発表されました。この報告は、一部の国の人権状況を批判していますが、その攻撃の対象はアメリカに反対する競合国であるロシア、中国、イラン、シリア、北朝鮮です。
ここで疑問として提示されるべきなのは、どのような国際機関がアメリカ政府に対して、ほかの国の人権状況について年次報告を出す責務を与えたのか、という点です。
アメリカは黒い歴史を持つ最大の人権侵害国です。しかし、アメリカは世界の警察を自負しています。アメリカのホワイトハウス関係者は、常に自国の人々や国際世論の問いをはぐらかすため、他国の人権を疑問視しています。アメリカの市民に対する大規模な人権侵害について追求するのではなく、通常、自国の利益に反する国の人権状況に関する国務省の年次報告を出しています。
他の国の政治や人権に関する断定は、各国の権利や、内政不干渉の権利といった原則に対する大きな違反にあたります。また、このことはロシア、中国、イランなどの国による繰り返しの批判を引き起こしています。中国とロシアの外務省も、年次報告を出し、アメリカの人権状況に疑問を呈しています。
国連人権理事会などによる多くの報告や、証拠は、アメリカが世界レベルで最大の人権侵害国とみなされていることを物語っています。
中南米諸国の人権の専門家の一人は、国連人権理事会の会合で、アメリカの人権の専門家に対して、政府や議会の関係者が他の国に対して人権や民主主義を求める文書を作成するよりも、アメリカ社会の怒りや不安定化を引き起こしている、アメリカ市民の人権侵害について調べるべきだと勧告しました。
アメリカにおいて、人権はさまざまなレベルで侵害されています。ネイティブアメリカンや少数派、黒人、収監者に対する対応や、市民へのプライバシー侵害など、さまざまな問題は、人権の擁護に関するアメリカの偽りの主張を示すものとなっています。
アメリカは少数派やネイティブの権利の最大の侵害者です。アメリカ政府は建国当初から常に、非人道的な犯罪、特にネイティブや移民への対応のあり方により、非難されてきました。この歴史的な悲劇は、移住法とも呼ばれるインディアン排除法の結果によるものでした。この法律は1830年に可決され、この法律によって莫大な数のネイティブアメリカンが命を落とし、数百万平方キロの彼らの土地が奪われたのです。
今日、ネイティブアメリカンの人口はおよそ300万人です。この法律の実施から長年が経過しているのにもかかわらず、現在も人権侵害を受けています。
アメリカのそのほかの人権侵害に、移民の権利に対する侵害があります。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの2013年の報告によれば、アメリカの不法移民数百人が暴行を受けたということです。この不法移民は滞在許可を持っていなかったことから、何の訴訟も行わず、むしろ不法入国で逮捕されることを恐れたのです。彼らはほかのアメリカ社会のグループに比べ、好ましくない環境の中で暮らしています。
また、2013年の統計によれば、アメリカにはおよそ2500万人の移民が住んでいますが、彼らのうち1100万人は不法移民です。近年において、アメリカでは移民の逮捕や追放が盛んに行われるようになっています。
しかし、アメリカにおける昔からの明らかな人権侵害のケースは、人種差別や性差別に関係するものです。アメリカにおける人種差別、特に黒人や有色人種に対する差別は、昔から広く行われていました。アメリカの歴史を見てみると、アメリカの人種主義はその歴史と結びついていることが伺えます。
確かに現在、社会における人種差別は過去のそれとは異なっていることがうかがえます。この違いは、アメリカの法制度、経済体制、教育システム、保健システム、警察、セキュリティにおける人種差別が含まれています。
さまざまな証拠は、アメリカ社会におけるあからさまな女性の人権侵害を示しています。たとえば、いまだにアメリカでは、男性の16%が女性に対する暴力は認められると考えています。
アメリカ軍における性的暴行の著しい増加は、アメリカにおける懸念すべき人権侵害の例です。
子供の権利侵害に関しても、アメリカが2013年に子供の権利条約を締結しなかったことで、アメリカは、ソマリア、南スーダンとともに、子供の権利条約を批准していない国の3カ国のひとつとなっています。
このことは、アメリカでは子供の状況や彼らの権利侵害について無関心であることを伝えています。子供の権利条約は依然として批准されていないのです。
アメリカの人種差別のもっとも明らかなものは、黒人に対して行使されています。黒人に対する差別はアメリカにおける人権侵害の最悪なケースです。アメリカにおける人種差別や黒人に対する暴力的な対応は17世紀の奴隷制の時代からはじまり、また現在も続いています。
人種差別は常に、アメリカ社会における重要な問題のひとつとして提起されています。
オバマ氏がアメリカ初の黒人大統領となったことにより、黒人の状況は改善されることが予想されました。しかし、我々は、日々黒人の経済的、社会的状況が悪くなっているのを目の当たりにしています。
黒人に対するアメリカの差別的な法律は、常に人権団体の抗議の対象となっています。活動家は、黒人に対する警官の人種差別的な行動は増しており、また、黒人が裁判所にて刑を宣告される割合は2倍だと語っています。
全体として、アメリカの全人口の13%は黒人が占めていますが、彼らはアメリカ社会で福祉や教育、富をほとんど得ていません。逆に、彼らがアメリカ社会の問題を抱えている割合は非常に高いです。アメリカの収監者のうち、黒人の数は大変多く、特に都市の傍らでの彼らの生活状況は好ましいものではありません。
統計によれば、230万人の収監者のうち、およそ100万人は黒人です。何よりも重要なのは、アメリカの警官による暴力の主な被害者が黒人、あるいは有色人種となっていることで、この問題は、アメリカの都市で行われている抗議運動や騒動の主な要因となっています。
人種、職業、教育、社会の面での差別と、黒人に対する暴力は、アメリカにおいてごくありふれたものとなっています。この状況は明らかに人種主義的な傾向のあるトランプ大統領時代に促進しました。それは、バージニア州シャーロッツビルの一連の事件で明らかになりました。アメリカの活動家、ロバート・フォンティーナ氏は目撃証言から、トランプ大統領は人種差別主義者だとして、次のように語りました。
「トランプ大統領は、大統領選挙の時代から、アメリカの嫌悪の感情による暴力の傾向を著しく高めている。」
「国連の人種差別撤廃委員会はアメリカに対して警告を発するとともに、トランプ大統領に対して、明確に、前提条件なしでアメリカの人種差別を撤廃するよう求めた。この警告は、特別な形で、人権活動家の一人が白人至上主義の行進に抗議する中で殺害された、2017年8月のシャーロッツビルの事件にふれている」
アメリカにおけるそのほかの人権侵害は、この国の社会全体に起因するものです。アメリカでの暴力事件の増加や銃が広く使われていることなどで、個人や社会の安全にとっての深刻な問題が生み出されています。このため、アメリカでは、最も基本的な人権である安全を享受する権利が侵害されています。
実際、アメリカの暴力犯罪の発生件数は、世界最多となっています。アメリカにおける犯罪件数は、他の先進国の20倍にもなっています。アメリカでは銃器が自由に購入できることから、アメリカの銃器製造会社は莫大な富を手にしています。
アメリカには、3億以上の個人的な銃が存在していると推測され、また毎年3万人が銃により死亡しています。こうした中で、銃器の売買による莫大な富は、武器製造会社がアメリカ議会で強力なロビーの支援を得て、銃規制法案の可決を妨げている要因となっています。
アメリカにおけるそのほかの人権侵害に、警察の市民に対する過剰な暴力の行使があります。アメリカの警官の暴力により、アメリカでは特定の日が警察の暴力と戦う日に宣言されています。この日には警察に抗議するデモが開催され、警察の市民に対する対応の改善が求められることになりました。
アメリカの収監者に対する対応のあり方も、人権侵害の明らかな例とみなされます。アメリカのある人権団体は、アメリカのほとんどの刑務所における収監者の人権は、大幅に侵害されており、多くのケースでは、収監者は理由なく独房に入れられているとしました。
また、アメリカにおける収監者の多さも、別の問題であり、全人口に対する収監者数の割合でも、アメリカは世界1位となっています。ピューリサーチセンターの報告によれば、世界全体の収監者の4分の1をアメリカの収監者が占めており、10万人のうち754人が刑務所に入っています。
その他のアメリカの重要な人権侵害として、表現の自由が存在しないことや、機密情報の暴露を理由とした追跡活動、政府による市民への諜報活動などが挙げられます。この重要なケースに、アメリカ国家安全保障局の元局員、エドワード・スノーデン氏の追跡があり、彼はアメリカの情報機関の諜報活動に関する機密情報を暴露した後、追跡対象となりました。彼はアメリカから逃亡することを余儀なくされ、現在は政治難民としてロシアに住んでいます。
国外においては、アメリカは建国当初から、大規模な攻撃を行い、民間人を殺害することで、大規模な人権侵害を行ってきました。
政治専門家のハーニーザーデ氏は世界各地でのアメリカの犯罪にふれ、次のように語っています。
「アメリカは最大の人権侵害者だ。ベトナム、イラク、アフガニスタン、シリア、イエメンでのアメリカの犯罪は、アメリカ政府による人権侵害を示すもので、アメリカは、国際的なメディアを抱える中、世界の独立国に反対する世論操作の手段を数多く持っている。アフガニスタンとイラクに対する侵攻と国際的な権利侵害、イラクのアブーゴライブ刑務所とアフガニスタンのバグラム基地における人道的悲劇の発生、罪のない人々数千人の死、無人機を使った対テロ攻撃などは、明らかな人権侵害の例だ」
また、アメリカの国外における人権侵害に、グアンタナモ収容所における容疑のない中での無制限の収監者の拘束、彼らに対する拷問があり、これはアメリカに対する人権団体の大規模な抗議を呼んでいます。また、世界各国の市民に対するアメリカの諜報活動の問題にも、触れておくべきでしょう。
ニルス・メルザー国連特別報告者は、2017年12月、グアンタナモ収容所で拷問を受けている収監者に関する情報を入手しているとしました。
全世界での、テロリストの容疑者に対するCIA・アメリカ中央情報局による違法な秘密裏の逮捕や取調べは、アメリカの防衛を理由に、アメリカ同盟国の協力により、ブッシュ政権時代に行われましたが、これもアメリカの国外における重大な人権侵害とみなされているのです。