May 24, 2018 20:17 Asia/Tokyo

この時間も、この1週間のイランの経済的な出来事を見ていきましょう。

核合意の今後について見ていきます。アメリカの核合意離脱により、核合意は終わるのでしょうか、それとも継続されるのでしょうか?

 

イランとユーラシア連合の自由貿易区の設置に関する暫定合意が調印されました。

 

アメリカが核合意を離脱してから2週間が過ぎました。この間、核合意が終わるのか、それともアメリカなしで継続されるのかについて、多くの憶測が飛び交いました。これにより、ヨーロッパは核合意を維持するための具体的な努力を行っています。まずはこの話題からお話ししましょう。

 

ヨーロッパの経済的な利益と、イランとの契約を維持するためのアメリカの制裁への抵抗は、EUの信用にかかわる問題となっています。ヨーロッパは、アメリカの一極主義に対抗するか、それとも、国際的な信用を維持すること以上に、アメリカとの幅広い関係を優先するかの岐路に立たされています。

 

EU28か国の首脳は、先週水曜、ブルガリアの首都ソフィアで、2015年にオーストリアのウィーンで締結されたイランとの核合意を救うため、この合意を支持することを決定しました。

 

 

欧州委員会のユンケル委員長

 

欧州委員会のユンケル委員長は、アメリカの行動に対し、「EUは、ヨーロッパ企業に、アメリカがイランに対して行使する予定の制裁に従わないように命じる、1996年のアメリカのキューバ制裁への対抗手段と同様の法を発動する」とはっきりと表明しました。ユンケル委員長はまた、次のように述べました。

 

「我々欧州委員会は、ヨーロッパの企業を守る義務がある。現在、対抗策を講じる必要があり、そのために、1996年のブロッキング規制を制定するプロセスに着手する。EUは、ヨーロッパ企業を保護する必要があり、そのための対抗策を準備する」

 

欧州議会は、1996年11月、アメリカの、キューバ、イラン、リビアに対する制裁への対抗策としてブロッキング規制を制定しました。アメリカ議会は当時、これら3か国への制裁法を制定し、イランのエネルギー部門に投資を行う企業などを制裁の危機に直面させました。

 

しかし、アメリカの制裁に対抗するためのヨーロッパのこの規制は、発動されたことはありません。なぜなら、このブロック規制の制定によって、アメリカが立場を譲歩したからです。ヨーロッパがこの規制を発動する可能性が浮上したことで、アメリカは、ヨーロッパの企業に対する制裁を行使しないことを保障する必要に迫られました。

 

こうした中、ドイツのメルケル首相は、EUの決定の発表を受け、「EUは、中小企業への損害補償の問題を検討しようとしている」と語りました。メルケル首相は一方で、「アメリカの制裁の対象となる対象となるすべての組織をカバーすることは不可能だ」としています。

 

ドイツのメルケル首相

 

ブルームバーグは次のように報じました。

 

「EU、ロシア、中国の核合意を維持しようとする決定は実を結ぶだろう。なぜならヨーロッパ、はアメリカよりも、SWIFT国際銀行間通信協会に影響力を持っているからだ」

 

SWIFTは、ブリュッセルに本部を置き、1970年代に、金融系の通信フォーマットの共通化、データ処理システムの共有、世界的ネットワークの設立を目指して設置されました。

 

SWIFTは、毎日、11000の銀行間の金融取り引きに関する3000万のデータを処理しており、本部がブリュッセルにあるため、EUの法に従っています。

 

2012年、EUは、イランの銀行に対して制裁を行使し、SWIFTは、イランの中央銀行をはじめとする30の銀行をこのシステムから除外しました。しかし、2016年、イランの銀行は再びSWIFTに加わりました。現在、SWIFTは、欧米の関係者とこの問題に関して話し合ったことを明らかにしており、SWIFTがEUの法に反して行動するとは考えにくくなっています。

 

EUの首脳の決定を受け、EUはまず、核合意を維持するために欧州委員会のカニェテ気候行動・エネルギー担当委員が率いる代表団をイランに派遣しました。

 

EUは、アメリカの制裁に対抗し、核合意におけるイランの利益を保障する目的で、アメリカの制裁の復活がイラン経済に及ぼす影響を減らすための4項目の提案を示しました。欧州委員会のユンケル委員長は、「EUは、アメリカの対イラン制裁の影響への対策として、ブロッキング規制のプロセスに再び着手する」と表明しています。

 

EUはさらに、ヨーロッパの企業、特に中小企業のイランへの投資に対する欧州投資銀行の支援の障害を取り除こうとしています。また、イランからの信頼を得るため、イランの石油収入をの他国の中央銀行への振り込み案を提示しています。

 

こうした努力の中、フランスのトタルは、アメリカの制裁が免除されなければ、イランの南パールスガス田の開発プロジェクトを停止すると発表しました。デンマークの海運会社、マースクも、「イランから撤退する」と発表しています。イタリアの製鉄会社も、アメリカの核合意離脱により、銀行は第三国への制裁への懸念から、イランのプロジェクトに資金を提供する意向はないと語っています。

 

アメリカのポンぺオ国務長官

 

アメリカのポンぺオ国務長官は、21日月曜、「アメリカ財務省は、イランに対する核関連のすべての制裁を復活させ、さらに追加制裁も制定する」と語りました。

 

イランのローハーニー大統領は、この発言を受け、「アメリカ国務長官の発言は、これまでにアメリカの関係者が行ってきたのと同じ内容であり、イランの人々はそれを気に留めていなかった。今回もそれを気にすることはなく、共に自分たちの道を歩み続ける」と語りました。

 

「何年も諜報機関で活動を行ってきた人物が、今、アメリカ国務長官としてイランや他国に指図をすることは、決して受け入れられない」

 

 

イランとユーラシア経済連合の加盟国の貿易に関する暫定合意が、先週、イランのシャリーアトマダーリー商工鉱業大臣の立ち合いのもと、カザフスタンの首都アスタナで調印されました。

 

ユーラシア経済連合は、2015年に活動を開始し、現在は、ロシア、ベラルーシ、アルメニア、カザフスタン、キルギスが加盟国となっています。イランとの協力合意は、アスタナでの経済会合の開催に合わせて調印されました。

 

この合意は、イランとユーラシア経済連合の自由貿易区の設置に関する第一歩となります。この合意には、一部の製品の輸入関税の削減や免除も含まれています。この合意により、双方の貿易量が現在の数倍になると見込まれています。昨年の貿易額は、27億ドルでした。

 

ユーラシア経済委員会のサルキシャン委員長は、「最終的な合意では、多くの輸入品について、関税の削減、あるいは免除が考慮されている」と語りました。

 

サルキシャン委員長によれば、この合意により、イランの工業製品の輸入関税は、平均7%、ユーラシア経済連合の輸入関税は3.5%、イランの農業製品の輸入関税は19%、ユーラシア経済連合は5%、削減されることになります。

 

イランの貿易総額は、2000億ドルちかくにのぼります。そのなかで、地域諸国との貿易は拡大の余地を残しています。カザフスタンは、製品や技術サービスの輸出に非常に適した市場です。また、道路や鉄道、空路の輸送の可能性も整っています。

 

農業部門でも、貿易量の拡大の機会が存在します。FAO国連食糧農業機関の最新の報告によれば、イランは食料の安全確保の点で、地域で最も成功している国のひとつとなっています。

 

イランは、ユーラシア経済連合の加盟国との関係を拡大しています。この連合の加盟国であるアルメニアは、イランのユーラシア経済連合への加盟に向けて大きな努力を行ってきました。テヘラン駐在のアルメニア大使は次のように語っています。

 

「アルメニアの市場は300万人規模とそれほど大きくはないが、イランにとって、ユーラシア諸国の18000万人の市場をひきつける土台を整えることができる」

 

昨年12月のローハーニー大統領のアルメニア訪問では、両国の関係者が、さまざまな部門の協力について話し合いを行い、5つの協定書が調印されました。現在、この協力に向け、実務レベルの活動が進められています。

 

イランは、地政学的な状況により、北と南の国々を結びつける役割を果たしています。

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