6月 28, 2018 20:26 Asia/Tokyo

この時間も、この1週間のイランの経済的な出来事について見ていくことにいたしましょう。

それでは、経済に関する主な出来事をご紹介します。

オーストリアのウィーンで開催されたOPEC石油輸出国機構の総会と、それが石油市場に及ぼした影響について見ていきます。

ヨーロッパが、核合意の維持に向けて努力を続けています。

イランとセルビアの合同委員会の会合が開催されました。

 

OPECの総会が、先週、ウィーンで開催されました。この会議は、生産量を日量180万バレル削減するという、2016年11月の合意を維持することで合意し、幕を閉じました。まずは、この問題を見ていきます。

 

2016年11月30日の決定により、OPECは、原油価格のバランスを保つため、生産量を180万バレル削減することになっています。この合意は、OPEC非加盟の産油国の合意とは別のものです。しかし、この合意にもかかわらず、一部のOPEC加盟国は、それ以上に生産量を削減しました。これにより、5月の削減率は152%となり、消費市場は原油の供給不足に直面しました。このことから、一部の加盟国は、この生産量の削減を補填すべきだと強調したのです。

 

 

ウィーンにおけるザンゲネ石油大臣

 

イランのザンゲネ石油大臣は、ウィーン入りした際、「石油を増産する代わりに、取り決めを遵守する割合を100%にすべきだ」と強調しました。多くの議論の末、結論に至った、先週金曜の総会で、この提案が決定されたことから、OPEC加盟国は、以前の合意を100%遵守することを決定しました。

 

OPECの合意の第2項目によれば、OPECの加盟・非加盟国は、この数ヶ月、取り決めよりも100万バレル少ない量を市場に提供し、180万バレルではなく、280万バレル削減していたため、その取り決め遵守の割合は、150%でした。

 

しかし、OPECの会合の決定により、合意に加わり、取り決め以上の量を削減した国々は、決められた量の石油を生産することになります。

 

この決定が実行されれば、市場に供給される石油の量が、日量100万バレル増加します。これは、生産量の増加を意味するのではなく、OPECの加盟・非加盟国の協力に関する合意の100%の遵守を意味します。いずれにせよ、それよりも少ない量が市場に提供される可能性もあるのです。

 

この減産に合意した国のいずれかが、大幅に生産量を削減すれば、それを補うために、その国と話し合いを行い、双方が合意した場合、この不足分が補われることになります。

 

これまでの状況を見ると、2015年に一度、サウジアラビアの増産の提案によって、生産枠が撤廃され、原油が市場に大量に供給されたため、価格が大幅に変動し、1バレル30ドル以下に下落しました。

 

しかし、生産枠の縮小により、世界の原油の備蓄は、過去5年の平均という目標に達し、明確な生産枠によってコントロールされた生産量の増加は、コントロールされない増産に比べて、世界市場における原油価格への反応が少なくなっているようです。ロシアの石油企業に増産の用意があることを考慮した上で、OPECの加盟・非加盟国の会合は、少なくとも、際限のない増産を防ぐことができる悪い選択とさらに悪い選択の間で決定が行われました。

 

「核合意の維持に向けたヨーロッパとの協議の継続には、明るい展望がない」

 

先週、イランのアラーグチー外務次官は、アメリカが離脱した後の核合意の維持の方法に関して発言しました。ここからは、この問題について見ていきましょう。

 

 

アラーグチー次官

 

アメリカが5月8日に核合意から離脱し、ヨーロッパがこの合意の維持を求めた後、イランはヨーロッパに対し、アメリカの制裁が復活した後にもイランの核合意による利益が確保されるような、具体的な保障を実現するための機会を与えました。

 

アラーグチー次官は、先週、ブリュッセルで行われたイランとヨーロッパの経済協力会議の傍らで、ユーロニュースのインタビューに応じ、次のように語りました。

 

「イランは、すべての関係国による核合意の完全な実施を求めており、ヨーロッパや他の締結国は、この合意の維持を求めるのであれば、さらに誠意を見せるべきであり、アメリカの核合意からの離脱と制裁の復活を補う必要がある」

 

アラーグチー次官は、ヨーロッパは核合意を維持し、アメリカの制裁を回避する方法を見出すべきだと強調し、「ヨーロッパの企業のイラン残留、原油の売却、イランの口座への資金振込の円滑化は、イランにとって重要な問題だ」と語りました。

 

 

イランイスラム革命最高指導者のハーメネイー師は、ヨーロッパと核合意を維持するために必要な条件を提示し、次のように強調しました。

 

「ヨーロッパは、アメリカを非難する決議を国連安保理に提出し、アメリカの核合意からの離脱に抗議すべきである。また、イランのミサイルと地域における活動の問題を絶対に提起しないと誓い、アメリカのイランに対するあらゆる制裁に対抗するとともに、イランが求める量のイランからの原油の購入を保障すべきだ。ヨーロッパの銀行は、イランとの金融取引に関しても保障する必要がある」

 

 

 

イギリス、フランス、ロシア、中国、ドイツ、EUは、核合意の締結国として、この国際合意を支持することを表明しています。この中で、欧州対外活動庁のシュミット事務次長は、「ヨーロッパは、これまで以上に強い決意で核合意を維持していく意向であり、この目的を果たすために特別なメカニズムを構築しようとしている」と強調しました。

 

EUのモゲリーニ外務・安全保障政策上級代表は、イランのサーレヒー原子力庁長官とオスロで会談し、EUの中小企業とイランの経済協議を含む、産業面での政治対話のイニシアチブに触れ、「まもなく、100企業が、イランとの実務協議に入る予定だ」と語りました。

 

ヨーロッパはこれまで、核合意の維持に向けて良好な歩みを進めています。とはいえ、現在の状況において、EUは、発表している政策の具体的な成果に集中すべきでしょう。アラーグチー次官は、テヘランで行われた会合で、イランと他の核合意の締結国は、この合意が本来の道を歩むよう努力すべきだとし、「フランス、ドイツ、イギリス、EUは、核合意におけるイランの要求を保障するための具体的な解決策を提出することを約束した」と語りました。

 

イランとセルビアの合同委員会が、先週、ベオグラードで開催され、その中で、3つの協力覚書が調印されました。

 

 

イランとセルビアの合同委員会

 

この合同委員会では、銀行の協力、観光や通信などのさまざまなレベルでの経済協力が強調されました。この専門家レベルの協議は、セルビアの観光・貿易・通信省の関係者と、イランの貿易振興機関のホスロータージ長官が出席する中で開催され、セルビアの商工会議所の会頭は、次のように語りました。

 

「イランとセルビアは、経済協議のレベルを超えており、両国の商業関係者が具体的な行動に入る時期がきている」

 

イランとセルビアの協力において、注目されているのが、運輸部門です。セルビアの運輸大臣は、先週金曜、イランのシャリーアトマダーリー商鉱工業大臣と会談し、住宅の建設は、両国の経済協力の重要な新しい部門だとし、「セルビアは、この分野でイランと真剣な協力を行う用意がある」と語りました。

 

エネルギー部門でも、セルビアのエネルギー大臣は、「エネルギーや鉱物産業に関する協力、技術や経験の移転は、協力の土台の一つになる」と強調しました。

 

イラン地質学研究機関は、中東地域で最も信頼のある機関のひとつであり、他国へのサービス提供に関して高い可能性を有しています。これについて、シャリーアトマダーリー大臣は、セルビアとイランの商業取り引きを実現するための合弁企業の設立を提案し、次のように語りました。

 

「イランとセルビアは、エネルギー、鉱物、掘削機械の分野で協力を行うことができる」

 

セルビアの観光・貿易・通信省の関係者は、査証の免除や直行便の就航といったこれまでの合意の成果に触れ、両国の経済関係が、関係の拡大につながるよう、期待感を表明しました。

 

こうした中、これらの目標を達成するための基盤は、運輸と銀行取り引きの円滑化です。イランとセルビアはこの2つの分野で互いのニーズを補おうとしています。セルビアのヴチッチ大統領は、シャリーアトマダーリー大臣との会談で、「セルビアは、西側諸国の圧力にも拘わらず、イランとの協力拡大に向けた努力を続け、この圧力が両国の関係に影響を及ぼすことはない」と強調しました。