ビールジャンドのアクバリーエ庭園
今回は、イラン東部・南ホラーサーン州の州都ビールジャンドにあるアクバリーエ庭園についてご紹介しましょう。
アクバリーエ庭園は、2011年にユネスコの世界遺産に登録された、イランの優れた9つの庭園のうちのひとつです。
ビールジャンドの町には、数多くの貴重な歴史遺産が存在します。その中でも、アクバリーエの庭園と建物は特に見る者を惹きつけ、その設計者や建築家を称賛せずにはいられません。
庭園建築の原則を守りながら、同時に設計において多様性が見られるのは、建築者の類まれなる才能と情熱を物語っています。庭園の中央の建物の前には池があり、そこに庭園の様子が映し出される様は、庭園が、三次元のように上下にも広がっているように感じさせます。
庭園が斜面にあること、壁によって周囲が囲まれていること、庭園の設計に直線が使われていること、庭園の最も高い場所に建物が存在すること、大きな水路と複数の小さな水路があること、せせらぎが聞こえるように水の流れが作られていること、自然と密接な関係が見られること、建物と庭園が離れていないこと、これらの要素が、アクバリーエ庭園に独特の魅力を与えています。
さらに、水を確保し、建物の前に美しい景観を作り出すために池が置かれていること、背の高いたくさんの木が植えられていること、庭園の大部分に果樹があること、様々な薬草や観賞用の植物が見られることも、ユネスコの世界遺産となったアクバリーエ庭園の特徴です。
アクバリーエ庭園は、面積およそ4万5000平方メートルで、山岳地帯に位置し、2つの建物から成っています。最も古い建物は、ヘシュマトルモルクの建物で、庭園の東の端にあります。この建物は2階建てで、ザンド朝の末期からガージャール朝の初めに建設されました。1階には、比較的長い2つの廊下があり、メインの庭園、南側の庭園、馬小屋の3つの重要な部分を結び付けています。この建物には、象眼細工、格子窓、ステンドグラス、唐草模様や幾何学模様の漆喰細工が見られます。
客人をもてなすための、西の角にあるメインの建物は、庭園の中心と見なされ、非常に美しい景観と装飾を有しています。この建物は、ガージャール朝時代、ショウキャトルモルクの治世に2階建てで建設され、鏡のホールやドームなど、そこに使われている装飾に注目すると、国内外の政界の代表をもてなすためだけに利用されていたようです。この建物の建築は、ロシアの建築スタイルを取り入れ、それをイスラム建築の要素と融合させ、新たな建築様式を示すものとなっています。通りの両側に杉の古木がそびえ、メインの通りに数多くの通りがあること、それらが庭園のみずみずしい空気と美しさを倍増させています。この庭園に見られるのは、ベリー、イチジク、杉の木などとなっています。
南側の庭園は、南の角にあり、北側の庭園よりも小さくなっています。この庭園は、馬小屋の西側の壁やメインの建物、その他の空間によって囲まれています。重要な要素の一つは、四角形の大きなプールであり、庭園の空間の大部分を占めています。このプールの中央には四角い台があります。この庭園の南側からは、アクバリーエ村に入る入り口があります。現在、この庭園と建物の様々な箇所は、南ホラーサーン文化遺産・観光協会に利用されています。ガージャール朝初期に建設された部分は、ビールジャンド大学の芸術学部と図書館となっています。また、ガージャール朝時代に建設されたメインの部分は、人類学・考古学博物館として利用されています。また、パフラヴィー朝時代に建設された箇所は役所として利用され、その他は、伝統的な喫茶店やレストランとなっています。
考古学博物館は、およそ600平方メートルの敷地面積で、アクバリーエの中央の建物の2階にあります。この博物館は、地域の文化的な豊かさ、人口の若さ、大学の存在、数千人の観光客の存在に注目し、1992年に開設されました。この博物館は、トゥース考古学博物館の次に重要な、ホラーサーン州の博物館となっていて、展示品と建築の調和を特徴としています。
ビールジャンド考古学博物館は、先史時代、古代、イスラム期の3つのコーナーに分かれており、先史時代のコーナーには、4000年前の芸術と産業の完成のプロセスを示す、紀元前2000年期の品物や道具が展示されています。陶器や硬貨は、当時の芸術、世界観、信条を物語るものとなっています。陶器から石や金属などに至るまでの先史時代の展示品は、博物館の2階の西側と南側の25箇所に展示され、それらの一部は、サイズが大きいために、建築の要素の一つとなっています。古代の展示品には、セレウコス朝、アルサケス朝、サーサーン朝のものがあり、それらは2階に展示されています。
人類学博物館は、アクバリーエ博物館の建物の1階にあり、ホラーサーン州南部の人々の風俗習慣、衣装、職業、伝統芸術が展示され、1995年に開設されました。この博物館の展示品の歴史は100年前に遡り、訪れる人々に、精神性と結びついた、人々の最もシンプルな生活手段を紹介しています。この博物館の展示品は、ビールジャンドの人々の独特の信条を物語っています。ここには、じゅうたん織り、布作り、陶器作り、薬屋、床屋、靴屋、鍛冶屋、農作物の収穫、結婚式など、地域で行われている職業や人々の風俗習慣をテーマにした数々の彫像が展示されています。