光の彼方への旅立ち、アル・ゲサス章(19)
コーラン第28章 アル・ゲサス章 物語り 第79節~第82節
慈悲深く、慈愛あまねき、アッラーの御名において
第79節
「[ある日、]ガールーンは、あらゆる装飾を身に着けて民の前に現れた。現世の生活を望んでいた彼らは言った。『[現世の財産から]ガールーンに与えられたのと同じものが、私たちのためにも「あったらよかったのに。本当に彼は大きな運の持ち主だ』」 (28:79)
فَتَوَكَّلْ عَلَى اللَّهِ إِنَّكَ عَلَى الْحَقِّ الْمُبِينِ (79)
第80節
「[だが、]知識を与えられた人々は言った。『ああ、なんと情けないことを。信仰を寄せ、善い行いをした人々への神の報奨は、[彼が持つものよりも]優れており、忍耐強い者たちのみが、それを理解する』」 (28 : 80)
إِنَّكَ لَا تُسْمِعُ الْمَوْتَى وَلَا تُسْمِعُ الصُّمَّ الدُّعَاءَ إِذَا وَلَّوْا مُدْبِرِينَ (80)
前回の番組でお話したように、ガールーンは、預言者ムーサーの信者の一人でした。しかし、多くの富や財産を手にして高慢になり、信仰の道から外れてしまいました。この2つの節は、ガールーンの醜い行いのひとつについて触れています。その行いは、今日の世界でも、似たような行動が多く見られるものです。自分の富を人々に見せびらかし、他人を軽んじることには、さまざまな形があります。たとえば、見る者すべてを驚かせるような豪邸を作ったり、高価な車に乗って町の中を走ったり、非常に盛大なパーティーを開くことなどです。
これらは、利己的で有頂天になった裕福な人間に見られる行動です。こうした自己顕示により、人々は、失望感から深いため息をつき、自分を貧しく不幸な人間だと感じ、そのような裕福な人間こそ、幸福の頂点に達した人物だと考えます。とはいえ、理解力のある人々は、富や財産だけでは幸福を得られないこと、裕福な人が本当に幸福な人たちではないことを理解しています。裕福であったとしても、精神的な問題や家庭の問題を抱え、その財産が、いずれ自分たちの幸福や福祉の源ではなく、頭痛の種になってしまう人がなんと多いことでしょう。
第79節~第80節の教え
• 富を保有するのは悪いことではありません。しかし、それを誇って高慢になり、他人をさげすむことは、非常に好ましくない行いです。
• 社会の支配者が、自分の富に有頂天になり、贅沢を求めるガールーンのような精神に陥れば、社会の価値観や文化に影響を及ぼし、人々をもそのような傾向に陥れることになります。
• 世俗主義は、短慮な人間の考え方であり、理解力のある人間は、そのような主義にそまりません。
• 世界の全ての富を集めても、清らかで善良な人々の報奨である神の天国を前にしては、全く価値のないものです。ですから、賢い人々は、他の人々が現世への執着や拝金主義に走るのを防ぎましょう。
第81節
「そこで彼と彼の家は大地に飲み込まれ、神[の責め苦]に対して彼を助けてくれる一団はいなかった。また彼自身も、自分を守ることができなかった。」 (28 : 81)
وَمَا أَنْتَ بِهَادِي الْعُمْيِ عَنْ ضَلَالَتِهِمْ إِنْ تُسْمِعُ إِلَّا مَنْ يُؤْمِنُ بِآَيَاتِنَا فَهُمْ مُسْلِمُونَ (81)
第82節
「昨日まで、彼[、ガールーン]の地位を羨んでいた人々は言った。『ああ、どうやら神は、僕の中からお望みの者に多くの日々の糧を与えたり、窮乏させたりするようだ。もし神が私たちにお恵み深くなかったら、私たちも地中に沈むことになっていただろう。どうやら不信心者たちは救済されないようだ』」 (28 :82)
وَإِذَا وَقَعَ الْقَوْلُ عَلَيْهِمْ أَخْرَجْنَا لَهُمْ دَابَّةً مِنَ الْأَرْضِ تُكَلِّمُهُمْ أَنَّ النَّاسَ كَانُوا بِآَيَاتِنَا لَا يُوقِنُونَ (82)
富を見せびらかして他人をさげすむこと、神の預言者に対して来世など必要ないと反抗することなど、ガールーンの行いにより、神は彼の宮殿や庭園、全ての財産を、大地の激しい揺れによって土の中にのみ込ませ、それらは跡形もなくなりました。コーランの節は、地震による以前の民の滅亡について明らかにしていますが、この物語では、ガールーンとその宮殿のみが崩れ落ち、他の人々に被害はありませんでした。これはまた別の奇跡でした。ちょうど、フィルアウンが自分をエジプトとナイル川の所有者と見なしていたのに、そのナイル川で溺れ死に、彼の権力や統治も滅びた出来事と同じです。
一般の人々は、このような神の奇跡を目にし、怠惰の眠りから目覚め、ガールーンのような富を持ちたいという願いには何の根拠もなかったことを認めます。なぜなら、それぞれの人の日々の糧は神が決めることであり、神が、その知識と英知に基づいて人々の間に日々の糧を分配し、それぞれに与えた分に応じて責任を求めるのですから。
第81節~第82節の教え
• 有頂天になって反抗したことの結果は、屈辱と滅亡です。
• 富や財産がいくらあったとしても、人間を神の怒りや懲罰から救う手段にはなり得ません。
• 問題に対処する際、性急な判断を下してはなりません。ガールーンの富を目にし、自分にも彼のような財産があったらと願った人々は、ガールーンの最悪の結末を目にしたとき、「彼のようにならなくてよかった」と言いました。
• 他人の財産や富を羨む代わりに、神から与えられたものに満足しましょう。現世であらゆる願いがかなうことは、多くの場合、私たちのためにはならない可能性があることを知りましょう。