12月 15, 2018 15:53 Asia/Tokyo
  • シャベヤルダー
    シャベヤルダー

今回は、冬季のイランの豊かな文化、風俗習慣についてお話しすることにいたしましょう。

ここ数年、温暖化の影響により暖冬が続いています。現在の若い世代、未来の世代にとって、先人達の生活を知ることは必要なことです。過去の人々がどのようにして限られた可能性の中で、冬の寒さに耐え、厳しい自然に対処していたのか。イランの暦では、冬はデイ月(12月22日~)から始まります。

おそらくそれほど遠くない将来、これらの風俗習慣や伝統、信条の多くが忘れさられ、未来の人々は先人達の豊かな文化を知らないまま、自らのアイデンティティを侵略文化の影響下で手放すことになるかもしれません。

フォークロア、大衆文化は先人達の思想・信条に端を発します。彼らは物語、格言、民謡などを作り、厳しい生活を乗り越えたり、それに耐えたりしようとしてきました。

昔からイラン人、多くの社会は、冬の始まりに様々な儀式を行ってきました。イランや周辺の同じ文化を持つ国では、冬が始まる日の夜を“シャベヤルダー”、冬至の夜と呼んでいます。

シャベヤルダーは、北半球において1年で一番夜の長い日で、それは毎年12月22日頃にあたります。イラン人やその他の多くの民族は冬至を祝います。この冬至の儀式は家族の祝祭とも見なすことができ、おそらくそれがこの儀式が続いていることの理由でしょう。今もイランでは家族は社会を構成する主要な柱となっています。

シャベヤルダーは昔から続くイラン人のお祭りです。この夜にあわせ、イランの多くの町ではスイカを軽トラックに満載して売り歩く姿が見られます。これはここ数十年、シャベヤルダーの風物詩となっています。

赤いスイカは太陽のシンボルと見なされ、シャベヤルダーにおいて最も重要な果物とされています。

シャベヤルダーの最も重要な習慣のひとつに、ハーフェズの詩集を使った占いがあります。これはイラン人の文化として根付き、この占いで1年の最も長い夜に将来について思いをめぐらすのです。

ヤルダーという言葉は、一日の誕生を意味します。古代イラン人は、シャベヤルダーの次の日には太陽が現れ、日が高くなり、神の光の輝きが増すと考え、この日を祝っていました。

ヤルダーとその遺産としての役割に注目し、より正確な説明と新しい方法により、ヤルダーを様々な機能を持つより幅広いイベントにし、それを大いに活用すべきでしょう。

ここで、社会学者のアスキャル・モハージェリー氏によるシャベヤルダーの説明をお聞きください。

「シャベヤルダーは、愛の夜において人間がこの夜が長く続くことを考えていることの表れである。ヤルダーは1年で一番長い夜であり、その夜の長さを楽しみ、人間のあたたかな関係によってその闇を乗り越えることができる、そのような愛の夜なのである」

ヤルダーの祝祭はそれぞれの地域で独自の慣習を持っています。現在ヤルダーは、近代社会を結びつけるためのもの、こうした儀式を行うことで喜びをもたらすものとなっています。シャベヤルダーの際に用意される果物やナッツには特別なメッセージが込められています。モハージェリー氏は、ザクロやスイカといった果物が選ばれたのは、「どちらの果物もこの儀式が行われていた時代に貴重なものだったからだ」としています。そして、それは希望、要求を実現するための人間の強い力を示すものだったとしています。

これらの果物が選ばれたもう一つの理由に、その色が喜びをもたらす色ということがあります。イラン人はそれを選択することで、「人間の力強い原則を世界や自然に対して示していた」と言われています。

イランは広大な国です。そこに様々な文化が育まれていることから、時にその地域特有の慣習が見られます。例えば、タブリーズではヤルダーの儀式で、詩や音楽が演奏されます。

アーザリー族はシャベヤルダーの美しい儀式を継承しています。それはこの夜、ハーンチェと呼ばれる大皿を婚約者に送るというものです。通常、これは男性側の家族によって行われます。ハーンチェの中にはお菓子やオレンジ、りんご、ざくろ、スイカ、鏡、布などが入っており、日没の際に家族の女性たちが男性の家に手伝いに行き、この儀式の中で祝祭が執り行われます。その後、大皿を何人かの頭の上に載せて女性の家に運び、それを女性の母親に引き渡すと、代わりに金銭やお菓子などが渡されます。

おそらくシーラーズほど、シャベヤルダーにハーフェズの詩を読み、占いをする町はないでしょう。シーラーズの人々はイランのほかの家族と同じように、シャベヤルダーを親族の年長者の家で過ごし、親類や知人が集まって朝まで語らいます。

シーラーズのシャベヤルダーでは、鏡、蝋燭、エスファンドと呼ばれるお香、ドライフルーツやナッツ、花などが飾られます。シーラーズの人々は、シャベヤルダーに熱体質の人は必ずスイカのような冷たいものを食べ、反対に寒体質の人はナツメヤシやナッツ、ゴマペーストのような体を温めるものを食べることを薦めています。

コルデスターンでも、他の山岳地域と同じように、この歴史的な古い儀式を行っています。コルデスターンの州都サナンダッジでは、昔から家庭でドルメと呼ばれる料理やサンギャクと呼ばれるナンを客人のために準備するのが慣わしとなっています。

イーラーム州のシャベヤルダーの儀式のひとつに興味深い慣習があります。これは子供たちがこの夜、隣近所の家の屋根に上り、紐をつけた籠を上から吊り下げ、詩を朗誦し、そのご褒美として家の人からナッツなどを籠の中に入れてもらうというものです。

イランのほぼ全ての町にシャベヤルダーの慣習が存在します。今回はイランの様々な民族の間で広まる美しい慣習の一端をご紹介しました。

 

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