2月 22, 2020 15:29 Asia/Tokyo
  • アブーターレブ・キャリーム・カーシャーニーの墓
    アブーターレブ・キャリーム・カーシャーニーの墓

今回も引き続き、サファヴィー朝の詩人、アブーターレブ・キャリーム・カーシャーニーについてお話しすることにしましょう。

キャリームはインド様式の詩における第一人者とみなされています。

キャリームがサファヴィー朝のアッバース1世の時代の詩人で、インドのムガル帝国の皇帝シャー・ジャハーンの宮廷で「詩人の王」の称号を得ていたことは、前回でもお話しました。キャリームの生涯は彼の長い作品の中に埋没しています。彼の生年月日については、知られていませんが、キャリームがイラン西部ハメダーンか中部カーシャーンにて生まれ、教育を受け、若い頃にほかの多くの文学者と同様、インドに赴き、シャー・ジャハーンの宮廷に仕えたと伝えられています。キャリームは1651年にインド北部のカシミール地方で死去しました。彼の廟はインドのスリナガルにあります。

批評家や言語学者は、キャリームをインド様式の詩における第一人者であり、サーエブ・タブリーズィーと並び称される人物とされています。また、彼はその平易で純粋な表現により、賞賛されています。

インドではキャリーム派として有名なキャリームは、1万5千の対句と詩集を残しています。およそ1万句のこの詩集は、抒情詩、頌詩や四行詩を含んでいます。

キャリームの作品全体を見ると、彼はあらゆる種類の詩の中で様々なスタイルを試みなましたが、彼の名声や技法は、抒情詩の中に多く存在したことがわかります。マスナヴィー形式の詩では、平易な言葉で、しばしばまとまりといったものから遠ざかっていました。彼はインドに行ったほかのペルシャ語詩人の誰よりもインドで長く生活し、そこで影響を受けました。この影響は、彼の詩集の中で見られるヒンディー語の単語によって、証明することができます。

キャリームは平易な言葉を頌詩の中でもつかっていますが、彼の関心は抒情詩に向けられており、彼の名声はほとんどが抒情詩によるものです。その中で、彼は平易な話し言葉を用い、明らかで斬新な内容を記しています。キャリームの詩の内容は、何よりも彼の豊かな賢明で社会的な思想により形成されています。新たな意味の創造や、色彩豊かなイメージは、彼の抒情詩に特別な恩恵を与えています。

インド様式の詩の研究者たちによれば、キャリームは詩を詠む中で発揮するイニシアチブにより、インド様式の重要な基盤を築くことができたということです。豊かな想像力、機知に富んだ言葉、新たな意味、平易な言葉による詩的なイメージなどが、キャリームの詩の特徴であり、彼以後にも、サファヴィー朝の詩人やこのスタイルの詩人の詩にそれを見ることができます。

キャリームと同時代か、またはそれ以後の回想録には、様々な形で、彼の名前が挙げられていました。一部では、多くの表現を用いてキャリームとその作品、そしてインド様式の詩について語り、一部はその名前を挙げるのみにとどまっていました。研究者によれば、こういった回想録により、キャリームとインド様式に関する、様々な分析や批評を理解することができるということです。

『シャー・ジャハーンの書』の著者は、キャリームの言葉は、人々を魅了し、その性質と情熱を意味の中に混ぜ、読者に提示しているとしました。

キャリームは、意味を作り出した文学者と呼ばれています。研究者によれば、彼の言葉はそれほど誇張されたものではなく、彼の詩を概観すれば、彼が創造精神を持っていたことがわかります。キャリームは、詩的ではないとされるテーマについても、詩的なイメージを創造し、それは皆にとって驚くべきものでした。彼の連想における注意深さや能力は、読者を魅了するほどのものであり、読者は否応なく数度にわたり彼の詩を読んでしまいます。

キャリームは、意味を作り出す能力や想像力により、読者がキャリームの想像は尽きることがないと考えるほど、様々なイメージを提示しています。たとえば、ある詩では、天然痘にかかったことを語っており、いずれの対句においても、それぞれ別々の表現が提示されています。彼は天然痘を体に植えられた種にたとえており、死の鳥がそれを落とすと表現しています。

哲学思想も、キャリームの詩の特性のひとつです。彼の思想は、広く、そして深く、すべての詩、特に抒情詩において、哲学的な問いを多く投げかけています。新たに生まれたサファヴィー朝の社会的、経済的な関係の質に注目すると、このような思想や精神は当時の多くの詩人や芸術家が持っていましたが、この中で、キャリームの進歩的なあり方は、他の誰よりも彼の精神や思想に影響を及ぼしたのです。

キャリームの詩には多くの長所が存在しますが、欠点もあり、その一部について指摘しましょう。

意味や描写における矛盾は、キャリームの詩に見られる欠点です。表面上、キャリームはこれに気づいていますが、その原因とは心の乱れであるとされており、また、詩の中に見られる彼の絶望も、詩における欠点となっています。

キャリームの作品の研究者によれば、キャリームの詩集には絶望の色が含まれており、彼はほかの当時の詩人とは違い、この時代に対する悲しみと失望を全身で感じていた、とされています。キャリームの詩を見れば、死や運、悲しみ、嘆きが詩の中に満ちていることがわかります。

 

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