1月 06, 2021 15:30 Asia/Tokyo

コーラン第33章アル・アハザーブ章部族同盟、第9節~第12節

慈悲深く、慈愛あまねき、アッラーの御名において

第9節

「信仰を寄せた人々よ、神の恩恵を思い起こしなさい。[敵の]大きな軍勢があなた方のもとにやって来たが、我々が彼らに対し強い風を吹かせ、彼らには見えない軍勢を彼らのもとに送った。神はあなた方が行うことを見ておられる」

(9) یَا أَیُّهَا الَّذِینَ آمَنُوا اذْکُرُوا نِعْمَةَ اللَّهِ عَلَیْکُمْ إِذْ جَاءَتْکُمْ جُنُودٌ فَأَرْسَلْنَا عَلَیْهِمْ رِیحًا وَجُنُودًا لَمْ تَرَوْهَا وَکَانَ اللَّهُ بِمَا تَعْمَلُونَ بَصِیرًا 

 

この節とその先の16節は、アハザーブの戦いに関するものです。この戦いは、イスラム暦5年に起こりました。アハザーブの戦いでは、イスラムに反対するすべてのグループが連帯し、イスラムとイスラム教徒を打倒しようとしました。メディナのユダヤ教徒は、メッカの多神教徒や様々な部族と同盟を組み、大きな軍勢を結成しました。そしてメディナを征服することで、イスラムの預言者とイスラム教徒を殺害しようとしました。しかし、神の意志により、彼らの計画は失敗し、イスラム教徒が勝利したことで、彼らは力も希望も失いました。

 

アハザーブの戦いの中で、イスラムの預言者は、メディナを攻撃しようとする敵のたくらみに気づいた後、イスラム教徒をモスクに集め、敵と対抗する方法について彼らと話し合い、意見を交わしました。そして、サルマーン・ファールスィーの提案により、敵がメディナの町の中に簡単に入ってこれないようにするため、町の周辺にハンダグ・穴を掘ることになりました。このため、この戦いは「ハンダグの戦い」とも呼ばれています。

 

アハザーブの戦いに関する最初の節であるこの節は、イスラム教徒に対し、常に敵に対抗する上での神の援助を心に留め、臆病になったり、恐怖を抱いたりしてはならないとしています。また、アハザーブの戦いでは、敵の数がイスラム教徒の数を上回っていたものの、神が強い風を送って彼らの心に恐怖を植え付けました。その一方で、天使たちが降り立ち、イスラム教徒の精神を強化することで、敵の大群に恐れを抱かせないようにしました。

 

第9節の教え

  • 神への信仰と神の道における戦いや努力は、生活のさまざまな分野で神の助けを得るための条件です。
  • 過去の神の恩恵を思い起こすことは、現在と未来の問題に対する忍耐と抵抗のための要素となります。
  • 神は信仰を持つ人への援助を惜しみません。その援助には、風や嵐といった自然現象と同時に、天使の降臨などの目に見えない要素を超えたものも含まれます。
  • 神が私たちのすべての行いを見て知っている、と信じることで、私たちは自分の行動をコントロールすることができ、同時に、それは神の道におけるさらなる努力や希望の源となります。

 

第10節

「敵が上からも下からもあなた方のもとにやって来て、あなた方の目が[恐怖に]くらみ、あなた方の魂が喉元まで届き、神のことを疑っていたとき」

(10)إِذْ جَاءُوکُمْ مِنْ فَوْقِکُمْ وَمِنْ أَسْفَلَ مِنْکُمْ وَإِذْ زَاغَتِ الأبْصَارُ وَبَلَغَتِ الْقُلُوبُ الْحَنَاجِرَ وَتَظُنُّونَ بِاللَّهِ الظُّنُونَا

 

第11節  

「そのとき敬虔な人々は試され、大きく動揺した」

(11) هُنَالِکَ ابْتُلِیَ الْمُؤْمِنُونَ وَزُلْزِلُوا زِلْزَالا شَدِیدًا 

 

この2つの節は、アハザーブの戦いの厳しい状況を描き、次のように語っています。「敵の軍勢の数は、メディナをあらゆる方向から包囲し、いつでも町に入って、殺害や強奪を行えるほど多かった。当然、メディナの人々は激しい恐怖を抱き、彼らの目は、その恐怖と不安を物語っていた。まるで心臓が喉元までせり上がり、今にも死へと引きずりこまれそうだった」

 

実際、神の約束を信じなかった人々は、イスラムが不信心者に勝利する、真理が偽りに勝利するという預言者の約束は偽りであり、それらの敗北によって、イスラムの光は永遠に消えてしまうと考えていました。このような状況は神の大きな試練であり、誰が神の約束を強く信じ、最後までそれを守り抜くか、また誰が敵の大きな軍勢を見て恐れをなし、信仰に揺るぎが生じるかを見極めるためのものでした。

 

第10節~第11節の教え

  • イスラム教徒は常に、敵の陰謀に対抗できるよう備え、敵の侵入に対し、自分の領土を警護しなければなりません。
  • 戦争とジハードは、神の困難な試練のひとつであり、気を許せば、信仰の弱さによって不安や動揺に陥ります。
  • 困難に陥った際、真の敬虔な人間は、表面的に敬虔な人間からは区別されます。なぜなら、さまざまな問題に対する抵抗には、強い信仰と意志が必要だからです。

 

第12節

「また、偽善者や心に病を抱える人々は、『神とその預言者は、欺瞞的な約束以外を私たちにしなかった』と言っていた」

 (12)وَإِذْ یَقُولُ الْمُنَافِقُونَ وَالَّذِینَ فِی قُلُوبِهِمْ مَرَضٌ مَا وَعَدَنَا اللَّهُ وَرَسُولُهُ إِلا غُرُورًا 

 

前の節で、神はアハザーブの戦いにおける敬虔な人々の一団の動揺や不安を明らかにしました。この節は、こうした動揺の根本に触れ、次のように語っています。「彼らの一団は偽善者で、表面的にはイスラムへの信仰を主張していたが、実際は信仰を持っていなかった。別の一団は、信仰心が弱い人々で、現世と現世のものへの執着により、敵との戦いに参加することができなかった。彼らは自分たちが後退しただけでなく、他の人々にも後退を呼びかけ、彼らにこのように言っていた。『預言者は私たちに勝利を約束したが、それは彼の敵たちとの戦いを私たちに手伝わせるための欺瞞だった』」

 

第12節の教え

  • 偽善に陥る危険は、常にイスラム社会を脅かしています。このような危険を知り、それに対抗する準備をしなければなりません。
  • 偽善者たちは、イスラム社会を内側から弱め、希望を失わせます。そして人々の敵に対抗する上での士気を低めます。
  • 預言者の教友たちは皆、同じレベルであったわけではありません。信仰心が強い人もいれば、偽善に陥る人もいたのです。