May 10, 2022 17:37 Asia/Tokyo
  • タフテ・ジャムシード
    タフテ・ジャムシード

イランは、独自の地理的条件を持ち、山、森林、牧草地、鉱泉など、自然の魅力に溢れています。また、古い歴史を有しているため、豊かな文化、文明、建築様式を持っています。

このシリーズでは、イランの各地を旅する中で、この大地の様々な魅力を可能な限り、ご紹介してまいります。今回、イラン南部のファールス州を訪れることにいたしましょう。ファールス州は、イランでも最も古い地域の一つで、多様な気候と貴重な歴史遺産を持つことで知られています。ファールス州は、自然と歴史を堪能する場所となっています。

 

タフテ・ジャムシード

 

ファールス州は、イランにほぼ匹敵するほどの古い歴史を有し、常に、イランや世界の古代文明の形成や繁栄の中心地と見なされてきました。この地域は、文化や文明、学問の発祥地であり、イランだけでなく、世界の人々から認められています。この地は、山や岩の間に見られる美しい景色、興味深い建築、学術調査によって得られた歴史遺産により、常に考古学者や歴史学者の注目を集めてきました。ファールスの山々の中で、4000年に渡って存在してきたエラム朝時代のレリーフ、紀元前およそ6世紀のアケメネス朝時代から残る、ペルセポリスやパーサールガードの壮大な建築群は、ファールス州の多くの都市にあるサーサーン朝時代の遺跡と共に、この地域の古代文明の繁栄を物語っています。さらにファールス州は、古く深い文化の歴史を持っています。この地は哲学者のモッラーサドラー、詩人のサアディやハーフェズなど、多くの偉人を輩出し、永遠の文学、宗教、哲学、科学、文化的な作品を生み出してきました。

 

タフテ・ジャムシード

 

ファールスの歴史について、紀元前1100年近く前、アーリア族の一派が、様々な障害を乗り越え、長い距離を経て、北からイラン高原に入りました。パールスと呼ばれていたこの一派は、今日のイラン南部の温暖な地域に居を定め、この地域に自分たちの民族の名をつけました。こうして、最も古いイラン文明の一つが、この地に形作られ、のちに、イランの首都、統治の中心地に選定されました。

 

タフテ・ジャムシード

 

パールス人は、イラン高原に最も古くから住みついた人々であり、アケメネス朝とサーサーン朝の2つの時代は、この民族によるものでした。パールス人の一派であるアケメネス朝は、紀元前559年から330年まで、ファールス州で権力を握ると、次第にその支配勢力を、当時の文明世界の広大な範囲へと広げていきました。この時代、ファールス地方は、当時の王朝の中心地として、多くの産業を繁栄させており、パールスの地は、イラン文明の最も古い中心地でした。ペルセポリスやパーサールガードといった、この時代から残る歴史遺産が、そのことを証明しています。イスラムがイランに広まってからも、ファールス地方は、アターバカーン、インジュー、モザッファル、ザンドなど、数々の王朝の中心地でした。ザンド朝は、その統治時代、この地域に大きな繁栄をもたらしました。それについては、今後、ファールスの歴史遺産について見ていく中でご紹介する予定です。

 

シーラーズ・ボタニカル・ガーデン(エラム庭園)

 

ファールス州は、面積およそ13万3000平方キロメートル、イラン南部に位置し、内務省の国家区分の最近の統計によれば、29の行政区から成っています。ファールス州は、北と東をイスファハーン州、東をヤズドとケルマーン州、南をホルモズガーン州、西をコフキールーイェ・ブーイェルアフマド州に囲まれています。ファールス州の州都はシーラーズで、歴史的な重要性や文化的な地位という点で、優れた都市の一つと見なされています。

 

シーラーズ・ボタニカル・ガーデン(エラム庭園)

 

ファールス州は総体的に山岳地帯で、この州の山々は、イランの北西から南にのびるザグロス山脈から続いたものです。ファールス州が広い面積を有すること、ペルシャ湾に近いこと、また北東部が砂漠に囲まれていることから、この州は、他に類のない気候の多様性を有しています。概して、ファールス州の気候は3つの地域に分けられます。北部と北西部の山岳地帯は、比較的寒い冬と気温の低い涼しい夏を、中部は降雨量の多い寒さが穏やかな冬と、乾燥して暑い夏を持っています。南部と南東部は、冬はそれほど気温が下がらず温暖で、夏は非常に暑くなります。

 

シーラーズ・ボタニカル・ガーデン(エラム庭園)

 

ファールス州の水源は、地下水と河川の2つがあり、その気候の多様性により、この州には、河川、泉、滝、湖が数多くあります。コル川は、ファールス州を代表する河川の一つで、州の北部の山を源泉とし、最終的にバフテガーン湖に流れ込みます。フィールーズアーバード、ガッレアーガージ、ファフリヤーンも、州の様々な山を源泉とし、最終的にペルシャ湾に流れ込みます。ファールス州には、数多くの湖も存在します。バフテガーン、マハールルー、パリーシャーンの3つが、比較的大きな湖となっています。数多くの滝、天然の泉、河川は、高い山々と共に、この州の狩猟場や散策のための場所が生まれる土台となっています。これらについては、次回の番組でお話しすることにいたしましょう。

 

ハーフィズ廟

 

肥沃な土地と豊かな水資源により、ファールス州は、イランの農業の中心地とも見なされています。小麦、大麦、とうもろこしが、この州で取れる主な穀物となっており、米やかんきつ類も、高い質を誇っています。この州では、農業の他、畜産業も行われており、国内の乳製品や肉類の需要の大部分を満たしています。

 

サアディー廟

 

ファールス州の人口は、最新の統計によれば、およそ450万人です。この州の大多数の人々はペルシャ語を話しますが、様々な部族が住んでいることから、トルコ語、ガシュガイ・トルコ語、ロル語、アラビア語なども話されています。ユダヤ教、キリスト教、ゾロアスター教などの、様々な宗教の少数派が存在することも、この州の人々の文化的な特徴となっています。

 

ナスィーロル・モルク・モスク

 

 

ファールス州は、イラン最大の遊牧地域の一つです。ファールス州の遊牧民は、歴史の中で、この地に豊かな文化を築き上げた人々で、彼らの生活にはその部族の文化が表れています。それらは、この地域の観光の魅力の一つにもなっています。ファールス州は、じゅうたんや、ゲリーム、ギャッベと呼ばれる敷物などの伝統工芸品の生産に関して、特別な重要性を有しています。寄せ木細工、象がん細工、モザイクも、この州の様々な行政区で行われています。また、金属細工に関しても、ファールス州は長い歴史を有しており、銀細工や彫金などの優れた作品がああります。

 

ナスィーロル・モルク・モスク

 

ファールス州に生育する主な植物には、野生アーモンド、柳、カシ、一部の薬草や産業用の植物があります。ファールス州は、気候の多様性により、哺乳動物、鳥類、水棲動物など、様々な種類の動物の生息地でもあります。ファールス州に存在する保護区が、多くの動物の生息地となっています。

 

シャー・チェラーグ廟

 


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