4月 27, 2016 21:24 Asia/Tokyo
  • インターネット中毒
    インターネット中毒

今回は、インターネット中毒による悪影響についてお話することにいたしましょう。

前回は、インターネットの時代に入ってから、世界の政治的、地理的な境がこの強力な通信技術の影響を受け、世界の人々は日を追うごとに、「地球村」の理想に近づきつつあります。確かに、インターネットは学術に関する様々な情報の獲得やニュース、通信、貿易、電子教育のための手段としての優れた特質を持ってはいます。しかし、その使用法やこの先進技術が人々の心と体に及ぼす影響に関しては、深刻な懸念が存在します。世界各国の社会学者や心理学者は、インターネット中毒と呼ばれる、新たな中毒症状の拡大を強く懸念しています。

1990年代後半には初めて、アメリカの精神科医イヴァン・ゴールドバーグにより、インターネット依存症という概念が提唱されました。彼は、職業上の理由でコンピュータ依存症に陥った人々のみならず、他にも長時間インターネットに没頭し、様々なサイトでの検索にふける人々が存在することに気づいていました。この精神科医は、一定期間にわたりこうした人々の行動を研究した結果、この新しい中毒症状を発見し、次第にその他の研究者もこの症状の新たな側面を知るようになってきています。

 

心理学を専門とするイギリスのノッティンガム・トレント大学のグリフィス教授は、『インターネット依存症は実在するか?』という著作において、次のように述べています。

「インターネット依存症には、5つの重要な兆候がある。まず1つ目は、目に見えるものであること、即ちインターネットが個人的な生活において最も重要な活動となり、その人の感情や行動、思考に影響を及ぼすということである。2つ目は、状態の変化で、インターネットにより精神的な影響を受けることを意味する。3つ目は、没頭であり、精神面での影響を受けるためにインターネットにかなりの時間を費やすことである。4つ目は、放棄した際の兆候であり、インターネットの使用を突然止める人が抱える精神的、身体的なストレスを意味している。そして5つ目は、ぶり返しであり、これは数年間抑制されていた後、インターネット中毒の症状が再び現れることである」

インターネット中毒には、3つの段階があり、それらはインターネットの使用の継続、利用時間の増加、そして本格的な中毒状態に区分されます。この中毒症状も、テレビや喫煙、麻薬の中毒と同様に、最初は危険が少ないように見えますが、いずれも無意識のうちに本物の中毒症状へと変わります。

例えば、多くの時間をコンピュータ・ゲームや、インターネットによるグループ・チャットに参加することに使う人々は、中毒症状に陥っている人々に分類されます。ここで十分注意すべきことは、こうした人々は麻薬中毒者と同様に、しばらくの間コンピュータやインターネットに触れないでいると、落ち着きを失ったり、苛立ちや怒りを感じたり、コンピュータに触れたいという感情に駆られます。もっとも、こうした症状は人によって異なります。

インターネット中毒は、最初の数年間は危険の少ない中毒症状と考えられていました。しかし、その後それほど時間の経たないうちに、この種の中毒症状に陥る人々が急激に増え、インターネット中毒は世界の多くの国で広がりました。アメリカ、ドイツ、中国などの一部の国では、この症状は正式に認められ,インターネット中毒の患者を専門に治療するクリニックも開かれています。

例えば、ドイツなどでは7000万人近い人々が日常的にインターネットを使用しており、勿論彼らの多くはインターネット中毒に陥っています。統計によれば、現在中国は世界で最もインターネットの利用者が多い国となっていますが、彼らのうちの5%が重度のインターネット中毒にかかっています。しかし、全体的にインターネット中毒の問題は特定の国のみに限られたものではなく、インターネットが使用される国では必ずインターネット中毒者がいる、と言えます。

 

もっとも、インターネット中毒は様々な形で現れ、それらにはコンピュータ・ゲーム中毒、ネットサーフィン、ハッキング、ウェブログの更新、不道徳なサイトの閲覧といった行動が挙げられます。こうした中でも、急速に広まる深刻な問題として決して見逃せないものは、チャット、ソーシャルネットワークへの参加、新たな情報の検索への中毒症状です。

コンピュータ中毒に陥っている人は、その行動を正当化するために、様々な口実を設けます。彼らは、コンピュータを過剰に利用することで、1人でいる時間を埋め、寂しさから解放されると考えているのです。心理学者は、あらゆる種類の中毒の最大の原因の1つは、日常の問題からの逃避であると考えています。しかし、ここで注目すべきことは、インターネットを利用しようとしている人の状態や年齢、そして性別意の問題を明らかにしていることです。インターネットの使用者は、特定の年齢層や性別の人々に限られておらず、様々な職業を持つあらゆる社会階層の人々が、この技術を使用しているのです。

 

イランの社会学者モハンマド・レザー・ホセイニー博士は、「現実世界からの逃避」という言葉に注目し、次のように述べています。

「インターネット中毒者は、グループを結成し、他人と密接な関係を築くことで、ある種の精神的な空白を埋めようとする。インターネットにはまっている若者たちは、バーチャル空間やチャットルーム、インターネットゲームによって、家族や友人、親戚、勉学、就労、睡眠を容易に放棄する。青少年の中には、夜10時から翌朝の4時までインターネットに没頭する者もいる。彼らは、1週間で40時間から50時間もの間、インターネットをして過ごし、今自分が住んでいる現実の世界から遠ざかっているのである」

 

インターネット中毒がもたらす危険の度合いは、使用者の年齢、性別、個人的、社会的地位によって異なります。これらの人々は、うつ病の悪化、創造性の欠如、社会関係の質の低下、睡眠不足、学力や職能の低下、登校拒否、離婚、家族関係の冷却化、責任感の喪失、失職、借金などに陥る危険があります。

普通、潜在的なうつ病を抱える人は、インターネット中毒に陥っていますが、この中毒症状自体もうつ病を助長し、次の段階ではその他の中毒症状を引き起こします。事態を複雑化させているのは、インターネットの使用者がインターネット中毒の問題を真剣に受け止めず、これはインターネットを使用しない若者の噂でしかないと信じ込んでいることです。しかし、この問題は現在、多くのアジア・ヨーロッパ諸国で正式に認められており、科学的にも証明されています。

多くの人々は、中毒症状には表面的な兆候があってしかるべきだと考えていますが、インターネット中毒はその他の中毒症状と違い、初期段階では身体的な影響がないものの、精神的、倫理的、社会的な問題を伴って現れ、明らかに他の中毒症状と同じものとされているのです。

 

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