今回は携帯電話の不適切な使用が社会生活にもたらす悪影響について考えてみることにいたしましょう。

前回は、携帯電話の不適切な使用が、家族関係にもたらす破壊的な影響についてお話しました。現実に、先進技術の誤った使用は、私たちに大きな問題を引き起こしています。

こうした弊害は、個人的な領域のみならず、私たちの家族関係や社会的な関係にも影響を及ぼしています。そこで、今回は携帯電話の不適切な使用が社会生活にもたらす悪影響について考えてみることにいたしましょう。

携帯電話の普及により直接対面によるコミュニケーションが減少

携帯電話は、現代の人々の生活からほぼ切り離せない存在となっています。もっとも、この先進技術により人間同士のコミュニケーションの円滑化に大きな役割を果たしているとはいえ、携帯電話によるショートメッセージの送信の可能性を利用することで、直接対面するという伝統的なコミュニケーションは最小限になっています。言い換えれば、こうした情報機器の普及により、直接面会してのコミュニケーションが減少しています。

魂のない物理的な機器に示される文章という形でのコミュニケーションは、決して友人・知人同士の愛情のこもった言葉による関係の適切な代替手段にはなりえません。このようなコミュニケーションにより、社会の様々な人々との関係を通して、実践的に生活上のマナーやルールを学ぶ機会が失われ、それにより人々は閉鎖的な環境に置かれることになります。

携帯電話の不適切な使用例

携帯電話の不適切な使用例として、倫理上好ましくない内容を公開するために、ショートメッセージやブルートゥース、ＳＮＳ・ソーシャルネットワークといった可能性を悪用することが挙げられます。特に若者や青少年をはじめとする一部の人々が、これらの先進技術を利用して、人々の精神状態や社会文化、社会的な健全さを危機に陥れる内容をやり取りしている光景は、誰もが目にしているはずです。

こうしたことはともかく、現在一部の国では、ショートメッセージ・サービスは遊びのために使われています。こうしたメッセージの一部は、モラルに反する侮辱的な内容であり、社会における倫理的な価値観を揺るがす原因となります。これらのメッセージは大抵、他人を嘲笑し侮辱する内容であり、次第に社会におけるモラルの退廃につながります。

一部の国では、こうしたメッセージは人種的、宗教的に少数派に属する人々に対する侮辱的な内容を含んでいます。ほかの人々を侮辱した冗談を広めることも、人間的な価値観やモラルからはかけ離れており、最終的には特定の宗教や人種に対する嫌悪感を生み出します。言うまでもなく、侮辱的な内容により、様々な集団や階層の人々の間の対立や分離が起こり、ひいては社会における暴力や緊張の度合いが高まります。

携帯電話のもう１つの不適切な使用例として、噂を広めることが挙げられます。携帯電話の使用者も、ショートメッセージがこうしたメディアとしての機能を持つことを熟知しています。彼らは、感情をあおる刺激的な内容のメッセージを受信するとすぐに、これを自分の友人や知人に送信することで、このメディアの連鎖に一役買っているのです。

プライバシーの侵害の問題

プライバシーは、他者に侵害されてはならないものです。しかし、残念ながら携帯電話が人々の生活に入り込んだ時から、全ての人々が好むと好まざるとにかかわらず、携帯電話により、プライベートな事柄や自分の家族、職業などに関する情報が漏洩する危険にさらされています。プライベートに関する内容の一部が、知らないうちに簡単に他人に盗聴されてしまうことになります。もっとも、一部の人々は意図的にこの領域に侵入しています。嘆かわしいことに、利潤を追求する一部の人々は、他人のプライベートな写真や映像を入手し、これを一般に公開すると脅迫することで、相手に口止め料を払わせているのです。

複数の調査から、携帯電話の不適切な使用により、これまでに多くの人々が取り返しのつかない被害を受けています。ハッカーが狙っている最も主要な標的の１つは、通信機器や無線による通信です。彼らは、任意の人物の会話を自分のコントロールのもとに置き、それによって個人情報や個人的な内容のファイル、さらには携帯電話により撮影された写真を入手できます。一部のハッカーは、不正なプログラムにより、携帯電話の内部に収納されたデータを全て盗み出すことができます。こうして、ハッカーは人々の威信や面目を損なう個人的な写真や映像を、一般の人々向けに流出させ、被害者の心理状態に甚大な打撃を与えるのです。

事故につながる運転中の携帯電話

さらに、運転中の携帯電話の使用も、交通事故や渋滞の原因の１つとされています。発表されている運転中の事故に注目すると、運転中の事故の重要な原因の１つが携帯電話であることが分かります。携帯電話での通話、またはメッセージを読む、或いはそれに返事を送ることなどにより、運転者が注意力散漫となり、結果として悲惨な事故につながるというケースは後を絶ちません。このため、各国の道路交通法では、運転中の携帯電話の使用は、交通違反とされています。

携帯電話と公共の場での迷惑

あらゆる先進技術の製造開発には、多大な労力と知能が利用されています。それらの利用に当たっては、自分や他人の精神状態を乱さないよう適切な使い方をわきまえる必要があります。しかし、一部の人々は意図的に、あるいは無意識のうちにこのマナーに違反しています。そうした例として、周囲の人々にとって耳障りな音声を携帯電話の着信音などに設定し、病院など所かまわず使用する人々が挙げられます。こうした人々は、社会的なコミュニケーション能力に乏しいため、他人を理解せず、周りの迷惑などを重視していません。しかし、誰にも他人の迷惑になることをする権利はありません。このように、携帯電話の適切な着信音を設定することも、他人の迷惑にならない上で特に重要なことだと言えます。

その他の例として、公共の場所における携帯電話の使用があります。残念ながら、中には他人の権利などお構いなしに、公共の場所で携帯電話での通話に夢中になっている人を見かけます。例えば、タクシーでの携帯電話の使用は、乗り合わせたほかの人の迷惑になり、また病院で携帯電話を使用すれば、入院患者の迷惑になる可能性があります。こうした点を守るか否かは、各人の責任感やモラルにかかっています。しかし、人格は一人ひとり異なっており、また中にはこうした責任感のない人がいることも事実です。このため、あらゆる先進技術が出てきた際には、人々にその正しい使用法を教える必要があります。

多機能化による携帯電話の変化

通信技術の進歩により、世界規模での通信が円滑化され、拡大したのみならず、通信費用が削減され、すべての人がこれを利用できるようになりました。通信手段は、コミュニケーションや情報交換の拡大を目的としたものですが、携帯電話のメーカーの多くは、付加的な機能の一部を増やすことで、携帯電話の基本的な機能を完全に変化させてしまったのです。

これらの機能は、実際に人々に貢献してはいますが、巷に見られるように一部の人々がそうした機能を悪用していることから、人々の生活のプライバシーや家族関係、精神的な安定や健康に様々な弊害も出ています。このことから、新たな文明の利器が出てきた際には常に、その正しい利用が不可欠ですが、これには政府や教育機関による適切な支援と、すべての人々の協力が必要とされています。