May 16, 2022 17:59 Asia/Tokyo
  • エラム庭園
    エラム庭園

今回は、ファールス州への旅を続けながら、この州の州都で、文化都市とされているシーラーズについて、その歴史や史跡をご紹介しましょう。

イラン南部・ファールス州の州都シーラーズは、標高1486メートル、ザグロス山脈の裾野に位置しています。この町は、イランの首都テヘランから919キロ離れています。シーラーズは、イランの最も美しい大都市のひとつで、美しく貴重な歴史遺産の存在により、国内外の多くの人々の注目を集めています。中にはイランを、シーラーズの名で知る人もいるほどです。この町の人口は、5年前の国勢調査によれば、およそ170万人となっています。

 

シーラーズの町は、緑豊かなシーラーズ平野に位置しており、この平野は40キロ×10キロの長方形をしています。この平野は、西から東にかけて傾斜になっており、その西には泉やカナートと呼ばれる地下水路が見られます。また東には、面積およそ200平方キロメートルのマハールルーと呼ばれる塩湖があり、周囲には、比較的、標高の高い山々が聳え立っています。

 

シーラーズは温暖な気候を持ち、春夏秋冬が定期的にやってきます。この一帯は昔から重要性が高く、その名は、タフテジャムシードという史跡で発見された、エラム朝時代の碑文に刻まれています。アケメネス朝時代、シーラーズは、この王朝の首都であったシューシュと、タフテジャムシードやパーサールガードとを結ぶ道の途中にあり、サーサーン時代にも、ビーシャーブール、グール、エスタフルといった主要都市を結ぶ道路が、シーラーズ平野を通過していました。このような爽やかな気候を持つ肥沃な地帯が、独自の戦略的な状況により、常に歴代の王朝の注目を集めてきたのは当然のことでしょう。

 

タフテジャムシード

 

考古学的な調査によって発見された遺物や史料により、シーラーズの町の歴史は、イスラム以前に遡ることが確認されています。ここで発見された器や遺物、貨幣は、現在、ニューヨークのメトロポリタン美術館で展示されており、セレウコス朝、アルサケス朝、サーサーン朝時代のシーラーズの繁栄と壮大さを物語っています。1933年、タフテジャムシードの東の部分で発掘調査が行なわれ、エラム朝時代の楔形文字が刻まれた、およそ3万個の土製の碑文が発見されました。そこには、シーラーズの労働者の居住地に関する情報が刻まれています。この碑文は、紀元前496年のものだとされています。この碑文の発見と、楔形文字の解読により、シーラーズの町が、アケメネス朝時代にすでに存在していたこと、この町の多くの労働者が、タフテジャムシードの建設に携わり、賃金を受け取っていたことが分かっています。

 

タフテジャムシード

 

シーラーズの町の歴史はアケメネス朝時代に遡りますが、この町がイスラム期に名声を博したことも注目に値します。この時代、シーラーズは拡張を遂げ、4つの時代に首都に選定されました。初めて首都に選定されたのは、10世紀のデイラム朝時代で、その後は12世紀から13世紀にかけてのアターバカーン朝、14世紀のインジュー朝とモザッファル朝、18世紀のザンド朝時代に首都とされ、この町には、それぞれの時代の貴重な歴史遺産が残されています。

 

ハーフェズ墓

 

イスラムが伝来した後、シーラーズは神秘主義や学術の中心地となり、神学校や図書館、モスクの数が多いことで知られるようになりました。この町からは、多くの偉大な神秘主義学者、詩人、イスラム法学者が生まれています。イランの偉大な詩人サアディとハーフェズは、13世紀から14世紀にかけて、シーラーズが輩出した文豪であり、その作品は、イランのみならず、世界の文学を代表するものとされています。サアディやハーフェズだけではありません。スィーブヴェイ、イブン・モガッファ、モッラーサドラー、ゴトべッディーン・シーラーズィー、シェイフ・ルーズベハーン、その他、多くの偉人たちが、この学術の地で育ちました。そのため、シーラーズは、昔から、学術の町を意味するダーロルエルムと呼ばれています。

 

サアディ墓

 

シーラーズは今日も、イランの北と南、東と西を結びつける重要な場所にあり、特別な戦略的状況を有しています。名高い学術センターや大学の存在は、この町を、イランを代表する学術都市にしています。シーラーズをはじめとするファールス州の各都市の大学の、技術工学、医学、人文科学、イスラム学、その他、様々な学科で数千人の学生が学んでおり、学術分野で革新を生み出し、イニシアチブを発揮する機会が整えられています。そのため、この地では時折、医学をはじめとする様々な分野での発展、農業や産業の分野での開発が見られます。

 

今日、シーラーズの町の専門的な医療センターでは、角膜、肝臓、骨髄、心臓などの移植手術が数多く行なわれており、イランでも最も重要な医療施設と見なされています。シーラーズを中心としたファールス州の設備の整った医療センターは、ファールス州からだけでなく、周辺の州の患者、さらにはペルシャ湾岸諸国をはじめとする近隣諸国からも数百人の患者を受け入れています。ファールス州では、この数十年、電子工学、金属、電気産業でも目覚しい発展を遂げてきました。数多くの電子機器工場の存在は、シーラーズをこの分野での中心地にしています。

 

ファールス州とシーラーズの魅力は、これまでお話ししたことに限られません。工場や大学、文化施設だけでなく、この町には、巡礼地や歴史的な建造物、歴史遺産が数多く存在し、イランの都市の中でも特別な重要性を有しています。文化・歴史遺産の多さと多様性から、シーラーズはユネスコから、世界の文化都市のひとつに指定されています。

 


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