ペルシャ語ことわざ散歩(69)「花束を水に流す」
皆様こんにちは。このシリーズでは、イランで実際に使われているペルシャ語のことわざや慣用句、言い回しなどを毎回1つずつご紹介してまいります。
今回ご紹介するのは、「花束を水に流す」です。
ペルシャ語での読み方は、Daste-ye gol raa be aab daadanとなります。
この表現は、日本語で言う「ぶち壊し」に相当するもので、イラン南西部チャハールマハール・バフティヤーリー州の中心都市シャフレコルドに伝わる、ある物語が元になっていると言われています。
当時ここにあった村に、何をやってもうまくいかず、自分の居場所やどこかに行った先では必ずトラブルが発生するという、いわば疫病神のような存在とされる若い男が住んでいました。
ある時、この男はある若い娘に恋をし、その娘との結婚を申し込みますが、当然ながら娘の両親に断られてしまいます。それからしばらく経って、その若い娘が別の男性と結婚することになり、その知らせはこの運の悪い男の耳にも入ります。この男は、その娘の結婚式にとって自分は縁起の悪い存在だからと、村から離れ、式が終わるまで山の中にこもっていようと決心します。
しかし、あの娘への恋心を抑えきれず、せめてもの気持ちを伝えようと、彼は山に生えている美しい花々を摘んで花束を作り、近くを流れていた川に投げます。偶然にも、その川はあの娘の家の前を流れていました。男の投げた花束は山奥から川を伝って流れ、ついに結婚式を行っているあの娘の家の前にたどり着きます。このとき、花嫁や花婿の親戚の子どもたちが川で遊んでいたところ、あの花束が流れてくるのを見つけ、我先にと花束をつかもうとします。このとき、花嫁の親戚の子どもの1人が花束をつかみますが、丁度そのとき、一度に怒涛のような川の流れの渦に飲まれ、その子どもは命を落としてしまいます。
このため、それまで婚礼の式典の場となっていた花嫁の家は、一瞬にして悲しみに包まれ、葬儀の場と化してしまいます。後になって、男は自分が川に流した花束がこういう悲惨な出来事を引き起こしたと知らされ、このことから「花束を水に流す」という表現は「ぶち壊し」の意味で使われるようになったということです。
人のために良かれと思ってしたことが全く裏目に出てしまうことは、現代にも起こるのではないでしょうか。次回もどうぞ、お楽しみに。
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