6月 10, 2022 04:53 Asia/Tokyo

皆様こんにちは。このシリーズでは、イランで実際に使われているペルシャ語の生きたことわざや慣用句、言い回しなどを毎回1つずつご紹介してまいります。

今回ご紹介するのは、「まず井戸を掘れ、それから塔を盗め」です。

ペルシャ語での読み方は、Avval Chaah bekan, ba'd menaaresha raa bedozdとなります。

このことわざが意味しているのは、何かの作業や仕事、プロジェクトなどを始める前に、用意周到な準備をしておく必要がある、ということです。

また、これと同じような意味内容を持つことわざとして、「飼い葉おけを作ってから牛を飼え」というものもあります。

このことわざは、現在のイラン北東部ホラーサーンラザヴィー州の中心都市・マシュハドから200キロほどの町サブゼヴァールを舞台とした、次のような物語に由来すると言われています。

サブゼヴァールの町に、主にレンガを焼くために使われる塔が1本建っていました。そのため、この町にある民家のほとんどはレンガ造りで頑丈にできていました。あるとき、別の近隣の村から来た人物がこの塔を見つけ、自分たちの村にもレンガを焼くための塔がほしいことから、この塔を盗もうと思い立ちます。

さてある夜のこと、近隣の村の腕力の強い男たちが、運搬用のロバを引き連れて、サブゼヴァールにやってきて、この塔に縄をかけ、引っ張ってこれを倒そうとしますが、塔はびくともしません。

そこへ、経験豊かなある老人が通りかかり、これらの男たちに次のように告げます。「この塔は、地面に出ている分と同じ長さの基礎部分が地中に埋まっている。この塔をここから持ち出してそのままにしておいたのでは、どこからか盗んできたことがばれてしまうから、一定期間は隠しておく必要がある。だが、そのためには今あるこの塔の2倍の深さの井戸を掘っておかなければならない。あなた方は、今この塔を盗もうとしているようだが、井戸は掘ったのか?」

塔をその場から運び出すことしか考えていなかった隣の村の男たちは、この老人の言うとおりだと気づきました。この出来事から、何かをする前に用意周到な準備を整えるべきだと忠告する意味で、このことわざが生まれたとされています。

何事にも場当たり的な方法ではなく、それに見合った綿密な事前準備が必要であることは、イランにも共通しているようです。まさに、「転ばぬ先の杖」、「希望は大きく、準備は細かく」といえるのではないでしょうか。それではまた。

 


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