視点
米国務長官が5年ぶりに中国訪問
アメリカのブリンケン国務長官が18日日曜、多くの諸国の懸念を呼んでいる米中間の緊張増大を緩和させるため、中国を訪問しました。
ブリンケン国務長官は、バイデン大統領就任以降で中国を訪れたアメリカの高官のうちこれまでで最高の地位にあるほか、同国国務長官としても5年ぶりの訪問となります。
ブリンケン国務長官は出発前の16日金曜、自国のバイデン大統領と中国の習近平国家主席が、誤解や正しくない関係に陥るのを避けるため、可能な限り透明性のある関係を築けるよう、意思疎通の改善に取り組んでいると説明し、米中がより良いコミュニケーションを確立・維持することの重要性を強調しながら、「我々は、避けられる誤解によって中国との競争が紛争に発展しないよう確信を得たいと考えている」と述べていました。
2日間にわたる今回のブリンケン国務長官の訪問は、当初2月に行われるはずでしたが、アメリカ上空で中国の偵察気球が撃墜されたことにより延期されていました。
ブリンケン氏の訪問は、中国との緊張緩和と二国間のコミュニケーション確立というバイデン政権の取り組みに沿ったものではありますが、これは周知のように表面的な取り組みです。
中国の政府関係者らはこれまで、アメリカからの二者会談の要請を受け入れず、この問題を米政府の敵対的行動や同国関係者の取る否定的態度と結び付けてきました。直近では、6月初旬にも中国の李尚福国防相が、自身への制裁をアメリカ政府が解除しなかったことを理由に、シンガポールで開かれた「アジア安全保障会議」の際にオースティン国防長官と会談するというアメリカからの提案を拒否し、握手すら拒んでいました。
これに対し、オースティン国防長官は同会議での講演で、米中には対話が必要であり、それが衝突につながり得る過ちを避けるのに役立つと説明しながらも、一方で自国の反中国的態度を改めて強調し、中国の「横暴や強要」を黙認することはないと主張しながら、「我が国の政府とその同盟諸国は、中国の力に対抗する最善の方法がインド太平洋の安全を確保し自由な極東を作り出すことだと信じている」と述べました。
アメリカは長い間、国家文書の中で中国を自身と西側にとって最も重大な脅威と呼び、同国政府の野望に対抗する必要性を強調してきました。 2022年10月下旬に国防総省が自国安全保障政策の指針である「国防戦略」を発表した際には、オースティン国防長官が、ロシアのウクライナ侵攻という出来事が起きていたにもかかわらず、依然として中国を自国にとっての最大の脅威であると説明しています。
さらに、米軍やバイデン政権の安全保障担当者らも、中国がアメリカにとり最も重大な地政学的課題であると繰り返し述べ、同国が「リベラルな秩序に基づく国際体制」を変えようしていると主張しています。このような行動は、地域的・世界的な場で米中の対立が増大していることを考慮した、アメリカによる中国恐怖症をベースにしたイメージ捏造戦略だと説明することができます。
アメリカは、中国との公正な競争や緊張緩和についてバイデン政権関係者が主張し、ウィリアム・バーンズCIA長官を中国へ極秘訪問させるなどの行動を取っていますが、それにもかかわらず、バイデン政権が発足以降に中国に対して取ってきた行動や態度から見えてくるものは、経済、通商、軍事、安全保障、政治、サイバーなどのあらゆる分野での中国への対抗や、領海問題で中国と対峙しようする同国の意図です。
このように、米政府は実のところ、西側が作り出し存続させようとしている「リベラルな秩序に基づく国際体制」に対して中国がロシアとともに挑みかかり、その何世紀にもわたる権威が損なわれることを恐れているのです。
アメリカと中国の対立が特にアジア太平洋地域をめぐり増大・継続していることで、現在この2つの世界大国の間では、危険な衝突が勃発する可能性が高まりつつあります。これについては、アメリカの元国務長官で著名な戦略家でもあるキッシンジャー氏も先日、自己の見解を述べる中で、「米国と中国が現在取る立場から引き下がらなければ、第三次世界大戦が起こる可能性が非常に高いと言える」と警告しています。