なぜインドは世界で評判を落としたのか?
(last modified Mon, 29 Apr 2024 10:33:58 GMT )
4月 29, 2024 19:33 Asia/Tokyo
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    なぜインドは世界で評判を落としたのか?

インドは、昔から多様性と寛容さで知られている一方、20世紀には反植民地主義の国としても名を馳せていました。しかしこの10年間、世界の人々が抱いていた同国の良いイメージや名声は失われていき、特に直近の2年において大きく失墜しました。さらに驚くべきことは、インドの評判は北半球諸国で西側・非西側を問わず下落し、大きく傷ついたイメージが定着していることです。

インドが世界で評判を落とした理由には、次の3つの点が挙げられます。

 

1.西側とそのメディアがインド人に向ける悪感情

インドの公共放送機関プラサール・バーラティのシャシ・シェカール・ヴェンパティCEOは、同国が西側メディアの行うインドに関する誤った印象操作に常に対処しているとしながら、次のように述べました。

「西側メディアはインドについて、象、蛇使い、裸の貧者がいる国というイメージを持っている」

同氏はまた、西側メディアによるインドのイメージ破壊行為の原因として、彼らの市場が飽和していることを挙げ、次のように続けました。

「西側は、大市場ながらも英語を使わない中国への参入は難しいため、それに代わって、視聴者をより引き付けようと、インドのイメージを破壊している」

 

インド人を揶揄するドイツ雑誌の風刺画

 

イェール大学を卒業し米ニューヨークを拠点にジャーナリストとして活動するシュラヴァン・バット氏も、次のように述べています。

「新聞というビジネスでは、話(ストーリー)を売らなければならない。話を売るためには、語り(ナラティブ)を売らなければならない」

この一方、インドの人々は西側について常に、文明的人間が住む好ましい場所というイメージを抱いています。

バット氏はこの点についても、アメリカをはじめとした西側の視聴者に質問を投げかけるかたちで、次のように指摘しています。

「考えてみてほしい。現在インドの人々は、西側メディアによるニュース操作のために、西側の現実ではない空想上の美しさのみを見ている状態にあるが、もし彼らの間に広く流布する西側社会の話が、銃撃事件、人種差別、極右的な偏見、危機的数の依存症患者といった、西側諸国における現実だとしたら、西側の人々は、インド社会で自分たちのイメージが破壊されていることを、どのように感じるだろうか?」

 

西側がインドのモディ首相を騙して中国の矢面に立たせたことを風刺する漫画


 

2.インドにおける過激派の台頭

非暴力を貫いたガンジーの率いる多様性の国から暴力と怒りの国へとインドのイメージが壊された別の理由には、同国でこの数十年に起きた政治的変化が挙げられます。

インドをこのようなイメージで語ることを促進させた要因の一つは、同国政界の表舞台にモディ現首相とBJPインド人民党が立ったことです。BJPは知ってか知らずか、イスラム教を排斥する措置によってイスラエル政権を支援し、西側の利益および彼らのメディア植民地主義に寄与するような行動を取りました。

インド・ニューデリーにあるシンクタンク、CSDS・国立発展途上社会研究センターが行った最近の世論調査では、モディ首相の政策により国内の宗教間の亀裂がさらに深まった様が浮き彫りになりました。

このような宗教間の亀裂は、同国のヒンズー教徒とイスラム教徒との間でより顕著なものとなっています。実際、ヒンズー教のスローガンを掲げ政権を掌握したBJPは、自らを利するべく、小さな村や町で大きな影響力を持つRSS・民族奉仕団やシヴ・セーナーといったヒンズー教至上主義の過激派組織を扇動し、国民の票を取り立て同然に集めようとしました。

インドの様々な都市では、2015年にBJPが政権を掌握して以降、イスラム教徒に対する暴力がこれまでになく増加しており、死者も出ています。

モスクの破壊・放火、宗教儀式実施の制限、不法移民に市民権を与える新法をイスラム教徒に適用しない、イスラム教徒が多く住むジャム・カシミール州の特別自治権を廃止する、過激派ヒンズー教徒がイスラム教徒へ行う意図的暴力行為に対し沈黙するなどは、インドでこの数年行われてきた反イスラム教徒的行為・措置の実例です。

これらの行為は、諸国の宗教界やイスラム社会をはじめとした世界中で、インドへの悪感情を密かに形成・増大させています。

 

3.インド自身による反植民地主義的名声の放棄と植民地主義・悪評への邁進

もう一つの理由となったのは、インドが自国の持っていた反植民地主義的名声に注意を向けなかったことです。

インドは、東西のいずれの陣営にも属さない非同盟運動から距離を置くことで、西側への傾斜をさらに強めました。そこから、インドの外交政策においてシオニスト政権イスラエルが重要性を持つようになりました。

このような状況のためにインドは、パレスチナ問題に対する政策が矛盾に満ちたものとなりました。同国は、イスラエル政権の占領により苦しむ人々への支援から、同政権の占領行為への支援に回り、彼らを政治・経済面にとどまらず軍事面でも助けるという、世界中を驚かせる行動を取りました。

インドとイスラエル政権の関係は現在、パレスチナ抵抗勢力が同政権に行った「アクサーの嵐」作戦について、モディ首相が世界の指導者らの先陣を切って非難するまでになっています。

インドはさらに、イスラエル政権への無条件の支援の一環として、昨年10月27日に国連でパレスチナ・ガザでの人道的停戦確立を求める決議案採決が行われた際、賛成票を投じることなく棄権しました。

アメリカに拠点を置くニュースサイト「The Diplomat」によりますと、インド政府のイスラエル政権支援は、ナショナリストであるヒンズー教徒過激派の態度にも影響を与えています。彼らは、イスラエル政権の主張に有利に働くよう、ガザで起きている出来事について誤解を与える情報をSNS上に広めるキャンペーンを開始しましたが、これは、インド国内の宗教少数派であるイスラム教徒を攻撃の標的にすべく、この宗教への敵対的言説を広めるために取られた行動でした。

まとめると、西側の植民地主義メディアが持つ人種差別的精神は、インドを統治する政治家たちが取ってきた非常に誤った決定とあわせて、西側の人々の間でインドの評判をこれほどにまで落とし、さらに他の国々でも悪い評判を立たせ、覇権体制に立ち向かう戦士・英雄であった同国を、同体制の二流の協力者へと変えたのです。

 

 


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