【検証・イスラエル支持者のデマ】その2「パレスチナ分割決議でイスラエルが得たのは砂漠」
SNS上でイスラエル支持者が拡散する言説を検証する企画の2回目。今回は、現在まで続くパレスチナ問題の元凶である1947年のいわゆる「パレスチナ分割決議」に関するデマを取り上げます。
【デマ内容】
・パレスチナ分割決議でイスラエルが得たのは大半が砂漠
【デマを流した者】
・小久保乾門(こくぼ・そろもん):エルサレム在住のキリストの幕屋信者
小久保氏は1966年生まれ。1985年からイスラエルに留学し、1991年にヘブライ大学ヘブライ文学学科・聖書学科を卒業。帰国後は主にヘブライ語講師としての活動に従事しました。YouTube上に「Solomon Channel」というチャンネルを持ち、特にハマスの「アクサーの嵐」作戦が実行された10月7日以降は、シオニスト政権イスラエルを支持する立場からの動画を配信しています。
中でも先月25日に公開した、小久保氏と幕屋信者の一行がイスラエル軍のガザ攻撃部隊を訪問し、砲弾に祈りの文言を書く様子を映した動画はParsTodayの報道をきっかけに世界中に拡散し、批判が殺到。小久保氏はその日のうちに動画を削除しました。
今回取り上げるのは、その小久保氏が11月8日に公開した「イスラエルを悪者にするために、悪意で作成された歴史地図」というタイトルの動画(https://youtu.be/_3T_hpDBXhM?si=Qv0eKznqL4vkYjID)です。この動画は12月10日時点でも同氏のチャンネルで視聴可能です。
この動画で小久保氏は、ニュース解説チャンネル「PIVOT」で同志社大学の内藤正典教授がパレスチナ問題を解説した動画(https://youtu.be/WvaxPjnqi4Q?si=9Ze3tIk0WY74Q-8R)をやり玉に挙げて、批判しています。
小久保氏はまず、PIVOTの動画が取り上げた1947年時点の地図で、ほとんどの土地がピンク色で「Palestine」と書かれていることを問題視し、ピンク色の土地すべてにパレスチナ人が住んでいたわけではないと主張します。
ここで以下の2つの画像をご覧ください。白黒の画像が1946年時点でのアラブ人とユダヤ人の各地域の居住人口とその割合、カラーの画像が1945年時点でのアラブ人所有の土地とユダヤ人所有の土地の割合を示したものです。いずれも国連が作成した書類で、Wikipediaにも掲載されている誰でも閲覧可能なものです。
この画像を見ると、人口・土地所有いずれもアラブ人がほとんどの地域でユダヤ人を上回っています。すべての土地にパレスチナ人が住んでいたわけではないなどという主張は史実に反するものです。
こうしたアラブ人が人口・土地所有ともに多数を占めていたにもかかわらず、1947年の国連パレスチナ分割決議では、ユダヤ人側に多くの土地が配分され、今日まで続くパレスチナ問題の元凶となりました。
この分割決議についても小久保氏は、イスラエルに割り当てられた土地のほとんどがネゲブ砂漠であり、使い道のない土地を与えられたと言わんばかりの発言をしています。
しかし、ネゲブ砂漠をイスラエル領にするよう主張したのは、後にイスラエル初代大統領となるワイツマンであり、彼が当時のトルーマン米大統領に強力にはたらきかけた結果、パレスチナ分割決議に反映されることになりました。
ワイツマンがネゲブ砂漠にこだわったのは、各国からのユダヤ人移住を見越した人口増に対応することと、紅海へのアクセスを得ることが目的だったと言われています。
つまり、イスラエルが使い道のない砂漠を渋々受け入れたというのは全くの嘘であり、むしろイスラエル側が強く望んだものだったのです。
小久保氏は、10月7日のハマスによる「アクサーの嵐」作戦以降、幕屋信者を集めてイスラエル支持の歌を歌う動画を在日イスラエル大使館に贈呈するなど、キリストの幕屋の中でも中心的に活動している人物です。
また、日本人の祖先がユダヤ人の支族であるとする「日ユ同祖論」の支持者で、2013年には『古代日本に辿り着いたユダヤ人 失われた十部族の足跡』という本を翻訳しています。
日ユ同祖論は学術的根拠のないオカルトの域を出ないものです。そうした説をあたかも史実のように吹聴する歴史改ざん姿勢が、パレスチナ問題という現代史においても表れているといえます。
このことは、小久保氏のみならず、キリストの幕屋信者ならびにネット上でイスラエル擁護のデマを拡散する多数のアカウントにも共通して見られる特徴です。