4月 07, 2024 20:26 Asia/Tokyo
  • 著作『空中庭園』;イラン女流作家から見たテロリストによるシリア人女性包囲
    著作『空中庭園』;イラン女流作家から見たテロリストによるシリア人女性包囲

イランの女流作家ソマイエ・アーレミー氏の最新作『空中庭園』は、武装したテロリストたちに4年もの間包囲されていたシリア北部のヌブルおよびアル・ザフラ―の街の7人の女性たちの生活を綴った物語です。

1979年生まれのソマイエ・アーレミー氏は、近年活躍しているイランの女流小説家の一人であり、抵抗文学分野の著名な作家の一人です。彼女は大学で薬草の研究していましたが、2009 年にバイオテクノロジーの修士課程を退学してプロの作家として小説執筆に集中することにしました。彼女のこれまでの執筆活動で、数冊の小説や短編集を出版しています。

このイラン人女流作家は1年間のシリア滞在経験を有しており、シリア人女性たちに随筆について教え、そのワークショップの成果を活かして『空中庭園』という書籍を執筆しました。

ソマイエ・アーレミー氏は、『空中庭園』の初期的構想について次のように述べています。

 

「女性と都市や戦争との関係、そして平和実現に女性が果たす役割についての構想や理想は、常に私とともにあった。私は常に理想社会やユートピアの中で女性がどのような立場にあるのかを探求していた。西洋のユートピアでは、どれほど探してもフェミニスト的な範疇しか見出だせなかったが、私が思うに、それは資本主義の文化的な付属物であり、過去に人間的資本とは何の関係もなかったし、現在もない」

 

 

また、『空中庭園』の構想の下地については次のように述べています;

 

「私は、イラン・イラク戦争の狭間で子供時代を過ごした。私は常に、父と母の移動や旅、そして戦争状況にさらされていた。私の母は戦時中、何年も後方支援本部で活動しており、自らの国土の状況管理において母がさまざまな役割を果たしている姿を見てきた。そしてこれに基づき、私の意識には女性管理者のモデルが形成されていた」

 

 

彼女は、さらに次のように語っています。

 

「私の目には、たとえ誰も話さずとも女性と国家の滅亡との間に密接な関係があることは明白であった。シリア首都ダマスカスに入ったとき、私はシリア戦争に関する女性の声を探して記録することを思いついた」

 

 

そして、本書のタイトルを『空中庭園』と命名したことについては次のように述べています;

 

「庭園とは樹木が存在する場所である。樹木は一般的に、他の植物よりも多くの大きな根がある。これらは根であり、樹木の幹を土中に保ち、また土中に存在するが故に小さな土の粒子を互いに密着させる。この庭園の樹木とは即ち、自らの誕生と自らの土地での生育を体現した女性たちが、同時に家を管理せねばならなかったことを意味する。もちろん、この名称は地域の物語と関係があり、もちろん本書内の物語と強く結びついていた」

 

 

ヌブルおよびアル・ザフラ―のシリア人女性たちは4年にわたり武装テロリストらに包囲されていた


『空中庭園』の著者はさらに、本書の語り手の女性について次のように述べています;

 

  「彼女たちは10年近くの間、複数の戦線にわたる戦時下で暮らしていた。特にその10年のうちの4年間は、子供たちの生存のために奮闘し、時折空から降りてくる支援提供パラシュートを楽しみにするという、なんとも摩訶不思議な包囲状態の中にあった」

 

 

そして、抵抗組織のシリア人女性の人物像については次のように語っています;

 

「シリアの女性たちは、長い間フランスの植民地下に置かれ現在はシオニスト政権イスラエル占領地域に隣接する土地に暮らしている。シリア・ゴラン高原はシオニストによって占領され、パレスチナ人移民はシリアに避難し長らくシリア人と共存している。それ以外にも、現在のシリアでシャームと呼ばれる地域の地理から生じる文化的共通性や、共通の歴史的背景により両者は非常に近しくなり、集団的な抵抗につながった。当然ながら、シリア人及びこの地域の女性たちは、植民地主義とシオニスト政権イスラエルに対する抵抗について語るべき多くの事柄を有している」

 

 

加えて、諸国民の抵抗を語る必要性については次のように続けます;

 

「諸国民の抵抗語りは戦火と復興を経て頂点に達し、成熟する。イランでは、治安と権力の下でこの重要な事柄が実現した。イラン人の語り手らは、さまざまな地域の人々が語りにおけるこの力に到達する時まで、ここでも世界の抵抗運動の物語・随想を記録する先駆者となりえる」

 

『空中庭園』の作者はさらに、次のように続けます;

 

「随想は、新旧植民地主義の支配から住民を守るべく、ある地域の住民の間に容易く集団意識を生み出すことができる。もしそのような随想が記録されなければ、諸国民は歴史的記憶の欠如により、常に外部からの植民地主義と国内の圧制という落とし穴に陥り、これにより二進も三進もいかなくなる。随想・物語を持たず、創出しない国民はすぐに破滅し忘却されてしまうのである」

 

 


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