「人間であることだけで十分」;米大学での出来事に関するイラン人アナリストの見解
(last modified Mon, 06 May 2024 06:36:41 GMT )
May 06, 2024 15:36 Asia/Tokyo
  • 米NYコロンビア大学前でイスラエル政権の犯罪に抗議する人々 (Kena Betancur/AFP/Getty Images)
    米NYコロンビア大学前でイスラエル政権の犯罪に抗議する人々 (Kena Betancur/AFP/Getty Images)

あるイラン人アナリストが、西側の政治は民主主義、人権、言論の自由を手段として利用しており、今では人種差別と闘うのは有色人種に限らず、アメリカの大学関係者や一部の政治家、さらには同国の体制責任者の子弟までもが声を上げるまでになっているとしました。

アメリカ・ニューヨーク州コロンビア大学で数百人の抗議参加者が逮捕されてより、同国大学キャンパスでのパレスチナ支持デモの波は拡大し、全米の大半の大学に広がった上、世界中の他の諸国の大学にも広がりつつあります。

アメリカでのパレスチナ支持デモはコロンビア大学で4月17日に口火を切り、抗議活動に参加した学生らは、パレスチナ・ガザ戦争に関与しているシオニスト政権イスラエルの機関と同大学との関係断絶を要求しました。さらには、他大学での抗議者も同様の要求を主張しています。

これに対してアメリカ政府は、こうしたデモや抗議活動を鎮圧すべく軍事行動に着手しました。

ここでは、この一連の出来事に関するイラン人アナリストのいくつかの分析内容を見ていきます;

 

移民に限らないずアメリカ市民の積極的デモ参加

テヘラン大学国際学部学術評議員のフォアード・イーザディー氏は次のように述べています;

「このデモに参加するには、イスラム教徒である必要も、左翼勢力に属している必要もなく、人間であることだけで十分である。もっと言えば、これらの画像を見て抗議活動に参加すればよい」

「西側メディアはこれらの出来事を破壊するかもしれないが、だからと言ってこの出来事の本質は変わらない」

 「もしこの人々のうち数%がイスラム教徒がだとしても、我々は彼らが米国籍だと知っておくべきだ。外国人留学生は、米国から国外退去処分となる可能性があるが故に普通、抗議活動に参加しない。抗議活動参加者の中にイスラム教徒がいるかどうかにかかわらず、我々はこれらの人々がアメリカ国民であることを認識する必要がある。彼らはアメリカ人であるがゆえに倍の責務を感じているのだ」

 

説得力のある自由民主主義の問題

イラン・パヤーメヌール通信制大学評議員のサイード・アブドルマレキー氏は、次のように述べています;

「米国は2003年、核爆弾を摘発しようとイラク国内を捜索したが、それは虚偽に過ぎなかった。一方で今日、パレスチナ・ガザでは3万5,000人以上が殺害され、そのほとんどが防衛手段を持たない女性と子供である。自由民主主義には、この大量虐殺をどう正当化するつもりなのか?!実際この点に関して、国際世論やアメリカの学術エリートを納得させる論拠は存在しない。学生と大学教職員らは、このシステムが彼らのアイデンティティ、自尊心、人間性を奪ったと感じたがゆえに、全国的な蜂起に着手した。そして実際、彼らは軍国主義・占領体制に直面している。そうした中では、大学システムは今日に至るまでまさにこの軍事体制下の歯車であり、学生の義務はこの殺人機械の歯車に油を指すことだったのである」

「西側の政治は民主主義、人権、言論の自由を手段として利用してきたが、今や人種差別と闘うのは有色人種だけに限らず、学者や一部のアメリカの政治家、さらには、国の体制責任者の子弟らも声をあげる状況にまで達している」

 「そう遠くない未来において、今の大学単位の騒乱は、普遍的な社会的騒乱となるだろう。それは、アメリカ政府が、シオニスト政権イスラエルおよび同政権による子供殺しや大量虐殺を全面的に幇助、肩入れしてきたことで、アメリカの社会・政治的資本にとっての面目、すなわちアメリカ人の価値観はもはや灰燼に帰したからである」

 

アイデンティティの対立が果たした重大な役割

アメリカ問題の専門家、ハーディ・ホスローシャーヒン氏は次のように述べています;

「アメリカの著名な政治思想家であるフランシス・フクヤマ氏の最新著作『IDENTITY - 尊厳の欲求と憤りの政治』における理論によれば、特に2016年11月以降、アメリカがアイデンティティの葛藤の時代に入ったことを示す、説得力のある証拠が存在するという。このようなアイデンティティの対立・葛藤が発生する原因は複数存在している」

「おそらく、これらの対立の最も重要な原因は、西側の自由民主主義に存在する被害の一部に帰すると思われる」

 

一方、アメリカの主要な潮流は基本的に、異なる意見、つまり、アイデンティティの対立因子の枠組みで定義された意見を再現する能力、可能性、意志を持たない。最近のアメリカでの抗議活動が活発になって継続しており、同時に同国の内政に疑問を提示していることは、この枠組みで分析が可能である。外交政策の他の範疇とは逆に、このような問題は通常、アメリカの国内政策にはあまり反映されない。しかし、ガザにおける大量虐殺の問題は最終的に、アメリカの内政に対する挑戦に成功した。この観点から見ると、この現象は、アメリカがアイデンティティ葛藤の時代に突入したことの現れの1つ、あるいはその一部であると考えることができる。実際、アイデンティティの対立はほぼ2つの主要な潮流の間に存在する。1つは、アメリカ白人の権力と主権を維持し、本来の歴史あるアメリカへの回帰を好む潮流である。これはつまり、民族の多様性も多国籍性もなかったアメリカである。これに対し、もう1つは、その要求や期待が内政・外交の分野に反映されていないと感じる潮流である」

 「紛争・対立は基盤や原則をめぐるものであるため、自然と暴力的な側面を帯びてくる。2020年11月のアメリカ選挙では、一部の世論調査の結果からバイデン現大統領および民主党の支持者か、もしくはトランプ氏及び共和党の支持者かを問わず、双方とも選挙の目標を追求し実現するためには、一定の政治的暴力を容認していることが判明した」

 

一般大衆への抗議行動波及の可能性

テヘラン大学パレスチナ研究所のハーディー・ボルハーニー氏は次のように述べています;

「欧米諸国では大学は特別な地位にある。しかしその一方で、こうした抗議活動はアメリカの一流大学で発生しており、このまま続けば変革と変化の波は『一般大衆』にも波及しかねない」

「抗議行動が一般市民に波及すれば、アメリカ政府はもはやそれを止めることができなくなり、それは最終的にはシオニスト政権イスラエルおよび、米国内のシオニストのロビー活動にとっての危険因子となるだろう」

 

アメリカには「中途半端な民主主義」が存在しています。しかし、もし同国民の大多数がイスラエル政権支持という政策に反対すれば、それはもはや持続不可能となり、アメリカのイスラエル支援も危うくなると思われます。

 


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