視点
西側の覇権を阻むイランとロシアの協力
イランとロシアは現在、陸では中央アジアから西アジア、海ではペルシャ湾から黒海まで、その命運が互いに絡み合っていると思われます。
イランとロシアは、20ヵ年包括的協力協定の署名・実施に向けて進んでおり、両国当局者が語るように、その最終確定は目前に迫っています。
ユーラシア大陸に位置するイランとロシアの2つの大国はこの数十年で、重要かつ戦略的な地域・国際問題に関し共通点を見つけ出すことに成功しました。二国の命運は現在、陸では中央アジアから西アジア、海ではペルシャ湾から黒海まで、互いに絡み合っているように見受けられます。
2022年のプーチン・ロシア大統領によるイラン訪問は、同大統領によるウクライナ戦争開始後初の旧ソ連圏外への外遊となり、ロシア政府がもはや自身の戦略的パートナーを西側に求めず、イランやUAEアラブ首長国連邦、サウジアラビア、中国などの地域大国から見つけようとしていることを物語るものとなりました。そのような中、ロシアとイランの関係はこれまでをはるかに超えた繋がりとなっているようです。
イランとロシアは、平和的核計画推進などの戦略的目標を追求しています。ミサイル、無人機、戦闘機などの通常兵器開発計画、宇宙への衛星打ち上げ、輸送回廊などの戦略的通商協力、さらに、西側とそのイデオロギーへの全力での対抗の全てが、その例として挙げられるでしょう。
地域におけるイランの地政学的位置、そして同国がペルシャ湾、オマーン海、カスピ海に通じていることから、イランはロシアにとって常に、地理的側面でより魅力的な存在となってきました。
一方、ロシアはインドと、現在500億ドル超となっている二国間貿易額を4000億ドルまで増加させる意向を示していますが、物品やエネルギーの輸送には安全な回廊が必要となり、ロシアとインド双方が、その通り道にはイランが適切であるとしています。
イランはその特別な地理的位置から、世界の大市場を互いに繋ぐ中継点となっています。インド洋および黒海の相互間接続はロシアにとり、制裁下になくとも大きな重要性を持つ事柄ですが、制裁・戦時下にある現在、その価値は倍増していると言えます。ロシアは、イランが主要な大動脈となるこの回廊を通じて、相対的な行き詰まり状態から抜け出し、熱気あふれる往来の頻繁な海洋へのアクセスを手に入れることができるのです。
イランとロシアの軍事・安全保障協力は、アメリカとその同盟諸国にとってさらに大きな問題になりつつあると見えます。これらの国々はそのために近年、この二国の協力関係を混乱させようと目論んでいます。
西側は、ウクライナ戦争開始を受けてイランとロシアの協力が強まることを恐れています。イランは、ロシアのウクライナ攻撃に対して中立の立場を取り、ロシアと軍事・安全保障上の協力関係にあるものの介入はせず、戦争終結を真剣に求めていると、繰り返し表明しています。
また、CEPA欧州政策分析センターのロシア問題アナリスト、エミール・アヴダリアーニ(Emil Avdaliani)氏は、自由貿易を中軸としたイランとロシアの協定を、西側主導の国際体制の再構築を目指すこの両大国の関係を強化するものであることから、現時点で両国にとり非常に重要なものであると分析しています。