西側の欺瞞への批判からロシアのウクライナ攻撃不支持まで:イラン外相と独紙の重要インタビュー
イランのアラーグチー外相が独紙シュピーゲルのインタビューで、「(ハマスがイスラエルを攻撃した)昨年10月7日は降ってわいたような出来事ではない。パレスチナ人は、(第二次大戦中に)ドイツ人がユダヤ人に対して行ったことのために処罰されるべきではない」と語りました。
【ParsTodayイラン】アラーグチー外相はこのインタビューで、国内テロリストのジャムシード・シャールマフド死刑囚への刑執行、西側諸国の二重基準、5万人のパレスチナ人の殺害に対するドイツの沈黙、イランからロシアへのミサイル提供疑惑の否定、ウクライナ東部ドンバス地方の併合に関してイランがロシアに同調しないことなどについて重要な点を説明しました。以下はその抜粋です。
テロ組織トンダル(雷の意)は長年にわたってイラン国民に対する悪行や犯罪をはたらいてきましたが、イラン最高裁の最終判決により先月28日、ドイツ国籍を有するこのテロ集団のリーダー、ジャムシード・シャールマフド死刑囚の刑が執行されました。シャールマフド死刑囚は、2008年にイラン南部シーラーズにあるセイエド・アル・ショハダー宗教施設で起きた爆破事件の責任者で、市民14名を殉教、他300名を負傷させました。
アラーグチー外相はシャールマフド事件に関して、「シャールマフド死刑囚はテロ集団のリーダーであった。ドイツの友人たちはこの事実を無視しており、また言及しようとしない」「シャールマフド死刑囚は、逮捕後に犯行を自供したのではなく、その前から自分で認めていた。彼はアメリカにいたとき、テレビ局のインタビューで自らのテロを誇らしげに語り、『イランとの戦争に突入し、彼らを殺している』とまで述べた。したがって、シャ―ルマフド死刑囚がテロリストとして、また14人の殺害犯として罪を問われるのは明白だ」などと語りました。
また、シャールマフド死刑囚の刑執行に対するドイツの反応について、「私はドイツ当局と社会がこの事実を受け入れるか注視している。もし彼らから見てシャールマフド死刑囚がドイツ人であれば、彼が1人のドイツ人テロリストであることを認めるべきだ。私にとって、イランに対するこれほどの喧噪や政治的プロパガンダは理解しがたい」「シャールマフド氏がイランの刑務所内で拷問を受けたなどという主張は、言いがかりにすぎない。逮捕時に警察が力を行使する可能性があることを拷問とは呼ばない。私はドイツで、警察がパトカーに傷をつけた者に発砲し射殺する場面を目の当たりにした」と述べました。
その上で、「(イラン人の)カーゼム・ダーラービー氏はドイツの刑務所に15年間服役しており、逮捕後最初の2カ月で体重が17キロも減った。(ドイツの論法を採用するなら)私もダーラービー氏が拷問を受けたと根拠なく主張することができる」と述べました。
そして、「シャールマフド死刑囚には法廷弁護人も証拠書類も揃っていた。このような事態にならないのが最善の策だったが、そのためにはドイツ政府がテロリストを支援しない必要があった」と述べました。
同外相は他にも、以下のテーマについて回答しました。
現在のドイツ政府は人権基準を蹂躙
「私は、この上なく傲慢な欧米諸国の行動に疑問をつきつけたい。ドイツ人が逮捕された場合、あなた方はその人物が人質に取られたに違いないと言い、彼の起こした犯罪には注目しない。しかし、ヨーロッパ側であるあなた方が誰かを逮捕すれば、正義が執行されたと信じこむ。ヨーロッパは正義の具現を自称し、他地域の法廷は不公正だとみなしているが、これはまさに人間の知性に対する侮辱である。ヨーロッパのこの傲慢な行動こそが、今の状況を生み出したことは間違いない」
「あなた方はシャールマフド死刑囚のために騒いだほどには、5万人ものガザの犠牲者のためには声を上げていない」
ガザでの5万人の殺害を非難しないドイツ
「ガザではシオニスト政権イスラエルによって5万人が命を奪われた。だが我々は、ドイツ政府が非難声明の発表や国連人権理事会への決議案の提出、イスラエル政権への制裁行使、さらには聖地ベイトルモガッダス・エルサレムの占領者たるイスラエルの代表機関の閉鎖といった行動に出るのを未だかつて見たことがない。これらはすべて二重基準に他ならない」
イスラエルと特別な関係にあるドイツ
「重要なのは、ドイツがイスラエルと特別な関係を持っており、人々の殺害を重く見ないということだ」
「昨年10月7日の出来事はハマスの決定であり、我々との協議はなかった。だが、この決定が正しかったか間違っていたかは歴史が判断するだろう。もっとも、一つだけ確かなことがある。それは、この日に起こったことはすべて、過去80年間にわたりパレスチナ国民というひとつの国民の領土を占領し、彼らを住処から強制退去させ殺し続けてきたことの結果だということだ。その結果、200万人がガザと呼ばれる大きな刑務所に閉じ込められている。それにより、彼らは自らの国運を決定する権利を剥奪されている。これらすべての要因を考慮すべきであり、2023年10月7日は決して降ってわいたような出来事ではない。パレスチナ人は、ドイツ人がユダヤ人に対して行ったことのために処罰されるべきではない」
「パレスチナ人は自らの権利を主張すべくあらゆる方法を試み、交渉にも参加したが、交渉で何が得られたのか?」
西側世界に正しく理解されないイラン・イスラム革命
「1979年のイスラム革命は、アメリカに依存した独裁的専制政権に反対するものだった。我々の革命スローガンは、『独立と自由』だった。革命後、我々は同じ理念を持つすべての人を支持してきた。私はあなた方とは異なり、ハマスやヒズボッラーをイランの代理組織とは呼ばないが、これらの組織は正当な目標のために戦う独立した運動であり、私はこれらを、何者にも隷属しない自由を求める解放運動と呼んでいる。ハマスとパレスチナ人は自らの領土の解放のために戦い、ヒズボッラーはレバノン南部の解放のために戦った」
西側諸国の政策に反対する者はテロリストなのか?
「西側諸国の政策に反対する者はテロリスト扱いされ、逆に西側の政策に従う者は良き友人とされている。これはまさに二重基準・ダブルスタンダードであり、我々ではなく、あなた方の誤った政策だ」
「ヨーロッパは文明や人権を体現していない。他者のことも尊重すべきだ。自分たちだけが正しいと吹聴したり、他人を貶めるべきではない」
イランはロシアのウクライナ攻撃を支持せず
「我々はロシアのウクライナ攻撃を決して支持したことはなく、ウクライナ東部ドンバス地方や諸島の併合を認めたこともない。我々は当初から、ウクライナの領土保全を擁護してきた」
「我々が米国による最大限の圧力の下で生活していることを忘れてもらいたくない。我が国には現在、米国による最大規模の制裁が行使されており、欧州諸国もこれに追随していることを忘れてはならない。あなた方は、誰に何を売るか、売らないかを我々に命令する立場にはない」
イランはロシアに弾道ミサイルを提供せず
「イランはロシアに弾道ミサイルを提供しておらず、ゼレンスキー大統領さえも数日前にこのことを認めた。ウクライナを紛争の舞台にすると決めたのは欧州であり、我が国の決定ではない」
「あなた方はイランとロシアの協力について言及しているが、我が国の原子力産業はドイツの援助で始まったこと、そして革命後にイランを見捨てたのはドイツであり、そのため我々はプロジェクト完了のためにロシアに接近しなければならなかったことを忘れないで欲しい。これらはドイツ政府が折々に犯した過ちであり、今後は再び間違いを犯さないように注意してもらいたい」
地域全体が全面戦争に突入する可能性
「イスラエルはガザで犯罪に手を染め続けたこの1年において、何度もイランに対する大規模な戦争を起こそうとしたが、我々は知性と機転でその発生を阻止した。しかし、事態が制御不能になる場合もあるという点ではあなた方に同意する。イスラエルがこの火遊びを続ければ、必ず然るべき回答を受け取ることになるだろう」