トランプ大統領が対イラン交渉を主張する目的とは?
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アメリカのドナルド・トランプ大統領
イランとの対話プロセスの存在に関するトランプ米大統領の主張は、単なる誤りでも外交上の誤解でもありません。
サウジアラビアのムハンマド皇太子がホワイトハウスにいたまさにその頃、ドナルド・トランプ氏は再び一連の主張を提起しましたが、イラン政府はこれを直ちに否定しました。
【ParsTodayイラン国際】ファールス通信によりますと、トランプ氏は「イランは合意を強く望んでおり、我々は交渉プロセスを開始した」と述べました。しかし、イラン外務省報道官は「わが国とアメリカの間に交渉プロセスは存在しない」と明言し、この主張は事実ではないと表明しています。では、トランプ氏があからさまな虚偽を述べている理由はどこにあるのでしょうか?
外交政策における成果の捏造
トランプ氏の行動を理解するには、近年における彼の一貫した行動パターンに注目する必要があります。トランプ氏は第1次政権中、現実を誇張・歪曲することで、実在しない成果を繰り返し捏造しようとしていました。例えば、「朝鮮半島の歴史的な和平」を提唱しておきながら、全てのプロセスは数回のショー的な会談の後、停止されています。また「西アジアの戦争は終わった」という彼の主張とは裏腹に、実際には戦争は終わっておらず、一部の危機は激化しているのです。
トランプ氏は、シオニスト政権イスラエルとの関係正常化を謳った、いわゆるアブラハム合意を「偉大な変革」と称しましたが、実際にはこれらの合意は根本的な地域問題を解決してはおらず、ほとんど象徴的な内容を帯びたものでした。こうした彼の行動パターンは、トランプ氏が現実に依拠せず話の捏造により自らの政治的勝利を狙っていることを物語っています。彼は、自らの支持基盤のかなりの部分が検証よりも、彼が強力であるという話に関心を持っていることを熟知しています。こうした状況において、イランとの対話を主張することは、トランプ氏にとって「ゲームのコントロール」と「個人的な権威」のイメージ提示に一役買っているのです。
この傾向は、第2期におけるトランプ氏の国内支持率が47%から38%程度へと大幅に低下したという事実によってさらに強まっています。この急激な支持率低下により、トランプ氏はこれまで以上に海外での勝利を演出し、「外交的な雄弁さ」という手段を用いて自らの信頼を再構築することを迫られています。それは、現実を変えることはなくとも、自らの政治的立場を維持するための基盤として、「物語を作り直している」のです。
人に見られることへのトランプ氏の精神的欲求とそれが物語の捏造に及ぼす影響
トランプ氏の政治心理を分析した結果、彼が慢性的に人目に触れたいという欲求を抱く性格であることが明らかになりました。彼は、自分が常にニュースの中心にいて、自分の名前が毎日メディアの見出しで繰り返されることを期待しています。このような人物にとって、注目の輪から外れることは一種の心理的脅威となります。
こうした枠組みにおいては、実際に何に起こらないことさえもトランプ氏を引き留めることはありません。彼は、ニュースがなければ作り話をするということを何度も証明してきました。イランとの対話が存在するという主張も、これと全く同じ論理に基づいています。トランプ氏はこうした問題の提起により、自らを西アジアの主役として位置づけ、アメリカ国内のメディアの目に、再び自らが世界的危機の仕掛け人であるかのように印象付けようとしているのです。
この主張のタイミングさえも、決して偶然ではありません。ムハンマド・サウジ皇太子がホワイトハウスを訪れたことで、トランプ大統領が再びイラン問題に焦点を合わせ、米国メディアに重要な地域問題をうまく処理しているという印象を与えるのに有利な環境が整ったのです。こうしてトランプ大統領は、真の功績の空白を埋め、依然として自らが複雑な西アジア情勢の中心にいるかのように見せかけているのです。
地域同盟国への制御
この主張のもう一つの側面は、地域情勢に関するトランプ氏の思惑と関連しています。サウジアラビアは長年にわたりイランとの緊張した関係を経た後、緊張緩和に向けた新たな道を歩み始めており、もはやかつてのような直接対決の以降はありません。こうした状況下で、トランプ氏は、旧来からのアメリカの同盟国により米国が地域情勢における中心的役割を失ったと認識されることを懸念しています。そのため、トランプ氏は「イランは合意を望んでいる」と主張することで、イラン問題の主導権が依然として自分の手中にあり、アメリカがこれまで通り地域安全保障の主役であり続けるというメッセージを送っています。トランプ氏は、アメリカの存在なしにはいかなるプロセスも実現せず、「イランでさえアメリカの圧力の影の下で必然的に対話の道に戻った」という印象を与えたいのです。
イランへの心理的圧力
トランプ大統領と彼の国家安全保障チームは、対イラン交渉開始を発表すること、特にイランがこれを否定している場合、ある種の心理的圧力をかけられることを十分に認識しています。この手法は、交渉成立のためではなく、イラン政府内における見解の不一致や決断力の欠如という印象を与えるために用いられてきました。このような手法は、トランプ政権初期にも何度も散見されています。トランプ氏は「イランからの電話」について繰り返し言及しましたが、それは実際には存在せず、心理的圧力をかけ、権力誇示という話を強化するために発表されたに過ぎません。この手法の目的はあくまでも、イランが反応し、メディア空間で自らの立場を防衛せざるを得ない状況に追い込むことにあるのです。

