トランプ大統領に反発するアカデミー賞(音声)
(last modified Mon, 27 Feb 2017 09:09:38 GMT )
2月 27, 2017 18:09 Asia/Tokyo

第89回アカデミー賞の授賞式で、イラン映画「セールスマン」が外国語映画賞を受賞しました。

「セールスマン」を制作したアスガル・ファルハーディ監督がこの賞を受賞するのは二回目になります。

アカデミー賞の審査員の注目を集めたこの映画の技術的な側面は別として、この賞の授与は、アメリカの新政権の反移民政策に対する明らかなメッセージとなりました。ハリウッドは、この賞をイラン人監督に授与することで、トランプ氏のイスラム圏7カ国の市民のアメリカ入国禁止令に抗議を示しました。

この大統領令の発令を受け、ファルハーディ監督と主演女優のアリードゥースティさんは、これに抗議し、7カ国、とくにイランの市民に敬意を表し、アカデミー賞授賞式に出席しないと発表しました。ファルハーディ監督はアメリカの航空宇宙産業の成功者で、イラン系アメリカ人2名をアカデミー賞授賞式に自らの代理人として派遣しました。2名のうちの一人、アンサーリー氏は、この賞を代理人として受賞した後、アメリカ政府の亀裂を作り出す反移民政策を非難する文書を読み上げました。

この文書はアメリカの文化界の代表である出席者の大きな激励に直面しました。

政治は常にアカデミー賞の受賞に大きな影響を及ぼしていますが、こうした中、2017年のアカデミー賞は、アメリカにおけるイデオロギーの亀裂、政府と映画界の衝突を明らかに示すものとなっています。ハリウッドで大きな影響力を持つアメリカのリベラル派のグループはトランプ政権の保守的な政策に強い懸念を示しています。

複数の人種による政策の否定、国籍や宗教に基づく移民の規制、国境における壁の建設、自分を批判するメディアの弾圧、こういったことはアメリカにおける過激主義やファシズムに似た流れを強化するものです。このため、世界の映画界の最大のイベントの一つであるアカデミー賞は、今年、トランプ政権の政策を阻止しようとする場に変わりました。例をあげてみると、今年のアカデミー賞は「セールスマン」に授与されました。また政府の移民政策に反対する文書が読み上げられました。出席者はこの表明に敬意を表し、拍手喝采を送りました。

アメリカ国外でも、セールスマンはトランプ氏の過激主義に対抗するためのきっかけとなりました。アカデミー賞授賞式の数時間前に、数千人がロンドンのトラファルガー広場に集まり、この映画を鑑賞しました。

パキスタン系のサーデグ・ハーン・ロンドン市長は、この映画が上映される前の演説で、トランプ氏と入国禁止令を強く非難しました。あらゆる民族、人種、国籍、宗教信者のロンドン市民が、セールスマンを幅広く歓迎したことは、人種や宗教に基づく国境の封鎖や線引きが、世界各地で受け入れられない行為であることを示しました。

こうした中、トランプ氏個人とその大統領としての行動は、彼がこうした抗議にほとんど注目していないことを示しています。それでもなお、大統領への抗議の中で表れた人種、宗教、民族による差別を否定する世界的な運動に抵抗することは、トランプ氏のような人物にとっても簡単ではないでしょう。