EUの核合意維持の保障に対する懸念の拡大
(last modified Sun, 05 Aug 2018 11:05:31 GMT )
8月 05, 2018 20:05 Asia/Tokyo
  • EUのモゲリーニ外務・安全保障政策上級代表
    EUのモゲリーニ外務・安全保障政策上級代表

EUのモゲリーニ外務・安全保障政策上級代表が、アメリカの制裁にもかかわらず、EUは、イランとの経済協力を拡大する意向であることを強調しました。

モゲリーニ上級代表は同時に、金融取引におけるアメリカの影響力に触れ、「アメリカの制裁により、イランとの協力は困難になるだろう」と語りました。

モゲリーニ上級代表の発言は、アメリカが核合意を離脱した後の数ヶ月の発言の繰り返しです。ただし、今回ははっきりと、アメリカの制裁に対するEUの弱さを認めています。EUは、核合意を維持するためにさまざまな措置を講じてきましたが、それを実施するための具体的な約束を与えることはできていません。

 

イランのローハーニー大統領

 

イランのローハーニー大統領は、ヨーロッパの関係者と連絡を取った際、EUの提案には失望したと言い、明確な時期を定めた具体的な計画を求めました。イランは、EUとの協議の中で、核合意を維持するための方法の提示や協議のための時間には制限があり、核合意の維持と存続のためには、イランに必要な保障を与えるべきだと伝えてきました。

イランは、核合意の遵守を継続するための条件をはっきりとEU側に伝えています。しかし、EUはこれまで、具体的な保障や計画をイランに示しておらず、EU諸国の間では、アメリカと経済的に対立することに関して、見解の一致が得られていないようです。ヨーロッパ側からは、イランとの協力の継続と核合意の維持に関して、好ましい政治的な意志が感じられているものの、それが実際に実行できるかに関しては疑いが消えません。

核合意は、イランと6カ国が長い間、何度も協議を重ねて得られた結果です。EUにとって、核合意の中で重要なのは、語られているように、経済的な利益ではありません。核合意を維持するためのヨーロッパの最優先事項は、中東とヨーロッパにおける安全保障です。ヨーロッパの安全は、核合意の破棄によって深刻な危機に直面します。

 

ドイツのガブリエル元外務大臣

 

EUはまた、核合意をモデルに、世界の政治関係においてより積極的な役割を果たし、北朝鮮問題などの国際問題を、協議によって解決できるようにしたいと考えています。しかしその望みは、核合意が破棄されれば、消えてしまうでしょう。ドイツのガブリエル元外務大臣は次のように語っています。

「我々は、核合意が破壊されるような決定に対して、この合意を守りたいと考えている。なぜなら、核合意が破棄されれば、世界の国々に非常に危険なメッセージを送ることになり、核兵器の不拡散にマイナスの影響が及ぶからだ」

EUは、核合意を維持するための努力により、政治、経済、安全保障面の利益の確保を求めています。ヨーロッパは、国際社会において外交力を証明しようとしていますが、ヨーロッパの大企業に影響力が及ばないことや、経済的な理由から、これまで、イランに具体的な保障を与えることができていません。そのため、核合意維持の保障に対する懸念が高まっているのです。