視点;イラン選挙における政治活動の潮流の捉え方ー原理主義派、改革派、中道穏健派
(last modified Wed, 19 Feb 2020 13:24:19 GMT )
2月 19, 2020 22:24 Asia/Tokyo
  • イラン選挙
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イランにおける選挙での政治的潮流の役割に話題が及ぶと、主に原理主義派、改革派という概念が思い浮かぶことが多いのではないでしょうか。

それでは、こうした分類は一体どのような土台や原則のもとに行われているのでしょうか。いわゆる原理主義派や改革派として知られる派閥はそれぞれ、どのような見解や視点を有しているのでしょうか。

「改革」という言葉は、近年盛んに用いられ、様々な場所において色々な政治見解を有する多様な人々が口にしています。英語でReformismに相当するこの単語は、文字通りの意味においては、体制の構造を維持しつつ、改変によって社会を支配する状況を理想的な方向へと導くことを目的に、各政府や政治団体が取る方法や措置の全体を指します。このため、改革派とはごく限られた人々の思考から作り出された新たな現象ではありません。

実際に、どの政治システムや統治体制も一定期間や時代を経た後に、体制全体そのものを維持しつつ、一部のうまく機能していない部分や欠点を解消すべく、ある側面において改革が必要となってくる可能性があります。イランのイスラム共和制も、決してこの法則の例外ではありません。

これに対し、いわゆる原理主義と呼ばれる潮流・派閥も、その独自の視点を有しています。

イランにおける選挙の方式や政治的慣行上で一般化している原理主義という潮流は、ある論理や論拠を根底とした一連の信条や理念を信じる視点の代表とされています。

最高指導者のハーメネイー師

 

イランイスラム革命最高指導者のハーメネイー師は、2001年に行った一連の表明において、「原理主義」に関して次のように述べています。

「誠に遺憾ながら、一部の人々は原理主義を保守強硬派と履き違え、原理主義者イコール強硬派だと思い込んでいる。だが、実際には原理主義派は強硬派ではない。ある論理や論拠に基づく原則を認め、これらを遵守し、自らの行動をその原則に合わせることをいう。それは人間を一本の道において導く指標のようなものである」

ハーメネイー師はまた、2005年5月9日に行った演説において、改革派と原理主義派という2つの潮流の概念や本質に関して、次のように述べています。

「自分は、このような分類は誤りだと考える。原理主義派の対極にあるのが革派なのではなく、また改革派の対極にいるのが原理主義派なのでもない;

原理主義派の対極に位置するのは、「何の原則も持たない無頓着な人間」である。いかなる原則をも信じない人間は、不信心者、無宗教者ということになる。ある時には、そうした輩の利益あるいは一般的な雰囲気で、反資本主義的に、また投資にとって極力不利な方向に動くといことを肯定する。また別の時宜には、その人の都合あるいは周りの状況が、徹底的に資本主義を支持する、従属的で忌まわしい形であったにせよである!改革派の対極にに相当するのは「腐敗」である。自分は、改革派的な原理主義を信じている。それは、イスラムの叡智という根底から発生し、法文化されたきめ細やかな原則であり、時代に即した形で方式の改革により日々刷新される、というものである。我々は、方式を改善・修正する必要がある。様々なやり方にも、誤りや欠陥が存在する。時として、我々はもはや今となってはニーズに応えきれず、別の段階に着手しなければならないという段階に達することがある。原則を維持しつつ方式を改善すること、それが改革派の意味なのである。

もっとも、アメリカの見解では、改革とはすなわちイスラム共和制に反対することとされている。前パフラヴィー王朝の創始者レザーハーンが即位して一連の改革を行なった。その後継者としてモハンマドレザー国王が即位し、さらに一連の改革を行った。これらはまさに、小生が述べたところのアメリカ的な改革ということになる。これらの改革は、彼ら自身のためのものであった。だが、イラン国民は、自らの原則に基づいて改革を実施している」

2013年の第11期イラン大統領選挙の流れにおいて、改革派と原理主義派というこの2つの潮流に加えて、中道穏健派という新しい概念・用語が登場し、イランの政治方式に浸透しました。中道穏健派とはある明白な戦略を有する政治・社会的な潮流を指し、改革派や原理主義派に対するまた別の派閥です。この派閥は、ローハーニー現大統領の選出後は中道派としてイランの政治社会に浸透しました。

第4代イラン大統領、公益評議会議長を務めた故ハーシェミー・ラフサンジャーニー師は、中道派路線に関する自らの視点について、以下のように説明しています。

「中道派の目的は、イスラムを客観的に捉えることにある。イスラムを客観視することにおいて、イスラムも理念も忘却されることはない。イスラム的客観主義の路線においては、我々の理想もよりイスラム的、かつより客観的なものとなる。イラン社会は時代の経過とともに今後ますます中道主義へと向かうことになるだろう。常に、強硬派の人々は対立する2大政治潮流として残りはするものの、時代とともにその数は減少し、残ったわずかな輩はもはや一人ぼっちとなったことを悟るだろう」

イラン政界の青写真においては、中道穏健派は改革派と原理主義派という2つの潮流に対する論理的な関係に基づく立場として定義、説明することができます。すなわち原理主義と改革派の中間的な存在ということになります。

しかし、イランの政治の舞台において中道穏健派が登場してこれまで何年も経過したものの、選挙の場面で彼らの活躍は、1つの潮流としての意味概念や内容などの点で一連の曖昧な点が存在します。これに関しては、一部の政治学研究者は、中道穏健派として独立した主義や方針が存在していないことを指摘しています。

このことから、中道穏健派には、原理主義派と改革派という2大潮流に対する賛成派、反対派、批評派が含まれるということになるでしょう。

 

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