日本料理の食材の重役・カツオに異変!?忍び寄る地球温暖化の影響
日本では、数多くの魚介類が食されていますが、中でもカツオは非常にタタキや出汁用に鰹節などとし、日本の食文化の重要な要素をなしています。しかし、今このカツオに異変が起きつつあるようです。
ここは、かつおの1本釣りが盛んな高知県高岡郡中土佐町の沖合いです。カツオ漁船の甲板には沢山の船員たちが、釣竿でたくみに次々とカツオを釣りあげていきます。
さて、この町のカツオ漁船として名高い「中城丸」の船長、中城たけお氏(70)は「今この春の上り鰹は脂がのっています。昔の上り鰹は脂が全然乗っていなかったのですが、今は下り鰹のように脂が沢山のっています」と語っています。
漁港では、釣ったばかりの、いかにも脂が乗っていそうな、丸々と太った大量のカツオが、次々と多数の籠に入れられていきます。
今度は、その新鮮なカツオを使った料理を出すある飲食店に舞台を移してみましょう。
店内で、見事な包丁さばきでカツオを調理する店員さんは、鮮やかな赤みのカツオの切れ身を手に、「(このカツオは、エサを)いっぱい食べるから、脂が乗っています」と示して見せてくれました。
しかし一方で、土佐料理・司の取締役営業部長 北村宏輔さん(54)は、「20年ほど前からカツオの漁獲が少なくなって、仕入れが大変難しくなってきています。現在は20年前と比べて30%ぐらいでしょうか。30年前と比べると20%ぐらいの漁獲高ですね」と具体的な数字を示しました。
また、「現状でいうと、今のところはカツオそのものがなくてお出しできないという意味ではないのですが、ただそれが近い将来現実化する可能性がある。このまま放置しておくと、カツオがいなくなるというのは予想できます。これは日本の”出汁文化”、鰹節からとった出汁から、日本料理は成り立っています。そのため、カツオがないと日本料理を出すのが厳しくなるので、その点を危惧しているところです」と危機が迫りつつある現状を語りました。
そして、この問題について高知大学地域協働学部の受田 浩之 教授(フードビジネス論)は、「沿岸域の植物性の必要な栄養素が枯渇する傾向にあるのは、紛れもない事実です。ですから、結果的に沿岸域のカツオ資源の水揚げ量が大幅に減ってきている1つの原因として、こういう地球温暖化の影響も当然あるでしょう。それに(過剰漁獲といった)人為的インパクトと地球温暖化によるカツオの来遊(しなくなっていること)、この2つがあいまって、今のような危機的な状況が起こっている可能性があります」と専門的な立場から分析しています。
さて、このカツオの漁獲の本場であるこの町では、カツオ・フェスティバルも開催されており、新鮮なカツオを使った郷土料理が来場者に振舞われています。刺身のほか、表面のみを焼いたタタキも好評を博していました。来場者の皆さんもおいしい料理に舌鼓を打ち、満足そうな様子です。しかし、こうした華やかな舞台のかげで、その主役となるカツオの漁獲に気候変動による影響が忍び寄っているのは否めません。
気候変動と地球温暖化の影響は、このようなところにも如実に現れています。