「武器工場」の6畳一間、「安全大国」を揺るがすネット情報や入手容易な材料
安倍元首相銃撃事件の山上徹也容疑者(41)の自宅の家宅捜索の結果、銃製造に使ったと見られる様々な物品・資材が押収され、衝撃を呼んでいます。
読売新聞が17日日曜、報じたところによりますと、安倍晋三・元首相(67)が搬送先の病院で死亡した今月8日午後5時過ぎ、事件現場から約3キロ離れた奈良市内の8階建てマンション最上階にある山上徹也容疑者(41)の自宅への家宅捜索が行われました。
この捜索に当たった捜査員によりますと、山上容疑者が住んでいたのは6畳のワンルームに、複数の手製銃とともに、切断された金属パイプや工具が置かれていたほか、火薬入りの缶や計量器もあり、さながら「武器工場」だった、ということです。
山上容疑者は20歳代では海上自衛隊に所属し、一定の銃の知識はあったと見られており、「銃の作り方は動画サイトなどを見て調べた。昨秋から製造を始め、今春完成した。火薬も自分で作った」と供述しています。
さらに、最終的に銃を製造したのは「無関係の人を巻き込まず、狙った相手を確実に殺せる」と考えたからだったということです。
これについて銃器ジャーナリストの津田哲也氏は、「殺害という目的を達成するために、実用性のみを追求したように見える」とコメントしています。
また現実にはネット上には銃の作り方だけではなく、火薬の調合方法を解説する動画もあるほか、材料の入手も容易です。山上容疑者が銃の製造に使った金属パイプなどはいずれもホームセンターで入手でき、火薬の材料となる硝酸カリウムや硫黄も農業用として販売されています。
日本では、銃刀法や火薬類取締法などで銃の所持や製造が厳しく規制されており、銃所持権が憲法で認められている米国と異なり、銃犯罪は市民には遠い存在とされています。
過去3年間に日本国内で起きた40件の発砲事件のうち8割が暴力団関連で、警察の視点では山上容疑者のような存在は「想定外」とされていました。
単独でのテロ行為は組織に属さないため、事前に警察当局が行動を察知するのは難しいことも指摘されています。
立正大の小宮信夫教授(犯罪学)は「今後、同種の手製銃による事件が起きうるということを前提に、治安対策を考える必要がある」と語りました。
民主主義の根幹を揺るがした凶弾は今や、「安全大国」と呼ばれた日本の常識をも揺さぶっています。