ロシアが「ビザなし交流」「自由訪問」の協定終了を発表、日ロ関係さらに停滞
ロシア政府は北方領土をめぐる日本との「ビザなし交流」などを定めた協定を終了すると発表しました。
ロシア・スプートニク通信によりますと、5日、ロシア政府の法律に関する情報の公式ポータルにて、ミハイル・ミシュスティン首相が、国後島、択捉島、小クリル諸島(サハリン州)への訪問簡易化(いわゆる北方領土へのビザなし交流、自由訪問)に関する対日合意の破棄を命じたことが発表されました。
ビザなし交流は、ソ連のゴルバチョフ大統領(故人)による91年4月の訪日をきっかけに、相互訪問を始めることで合意した枠組みで、北方領土の元島民や日本政府関係者らが現地を訪れる貴重な機会と位置づけられてきました。
また「自由訪問」は、特に元島民やその家族が故郷を訪れることなどを認めたもので1999年から始まり、これまで多くの日本人が現地を訪れ、北方領土住民の日本訪問も受け入れてきました。しかし2020年からは新型コロナウイルスの感染拡大を受け、訪問事業は中断されました。
最近、特にロシアによるウクライナ特殊軍事作戦を受けて日露関係は著しく悪化し、日本は、ロシアからの破棄通告にまで追い込まれる形となっています。
ロシア外務省は去る3月には、ウクライナ情勢を受け日本が行った措置が一方的な非友好的措置であるとして、日本との平和条約締結交渉を拒否し、日本国民による北方領土(ロシア側呼称;南クリル諸島)での交流事業等を中止すると発表していました。
これに対し、日本政府は「北方領土へのビザなし交流」に関する日本との合意解消というロシア政府の決定に関して、ロシア側に「強い抗議」を行いました。
これについて林外相は6日火曜の記者会見で、ロシアの今回の行動について「極めて不当で、断じて受け入れられない。本件に関してロシア側から発表に関する通告はない」としています。
また、松野官房長官も同様にコメントし、「改めて強く抗議した」と明らかにしました。
両者はさらに、「対露制裁の発動はすべてロシアによるウクライナ侵略に起因しているにもかかわらず、日本に責任を転嫁しようとしている」との日本政府の立場を改めて強調しています。
なお、岸田首相は去る6月、北海道の鈴木知事との会談で、ロシアとのビザなし交流の終了に関しては日本側が他の選択肢を検討していかねばならないとの考えを示しました。
鈴木知事からは、元島民らが北方領土に埋葬されている日本人の墓参を海上から行う「洋上慰霊」再開の要望がなされています。
もっとも、ロシアは対日関係で強硬な姿勢を取り続ける一方で、極東の石油・天然ガス開発事業の「サハリン2」を巡っては、これまで出資してきた日本企業が新会社に参加することを認めており、硬軟を使い分ける姿勢ものぞかせています。