イスラム教シーア派学者が語る対話の重要性
ブラジル・サンパウロで今月、「イスラム:対話と生の宗教」と題するシンポジウムが開かれ、イランの世界アフルルバイト協会のレザー・ラマザーニー事務局長が特別ゲストとして出席しました。
このシンポジウムには、ブラジル司法省、同国司教協会、サンパウロの各協会やキリスト教関係者、サンパウロ市・州の幹部、ラテンアメリカのイスラム教関係者などから代表者らが出席し、それぞれが講演で宗教間対話の必要性を強調したほか、イランから出席したラマザーニー氏に歓迎の意を表明しました。
以下は、このシンポジウムでラマザーニー氏が行ったイスラム教シーア派に関する講演の一部です。
自分を知ること
学問はあらゆる善の基礎である。反対に無知はあらゆる悪の元となり、無知そのものも悪である。人間は自分を正確に知ると、神の存在を知る。シーア派初代イマーム・アリーは、「もし自分を正しく認識すれば、他人のことも正しく認識できる。しかし、何よりの無知は自分を知らないことである」と語っている。自分を知らない者は、脆弱で道に迷う。自分を見失った者は、他人をも迷わせる。アリストテレスはこう言っている。「自分を知れ。自分を知ることは、人間が成長する鍵であり、他者に対して感情を持つきっかけとなる」
正義を体現したイマーム・アリー
イマーム・アリーは、すべてのムスリムが受け入れる存在だ。シーア派は彼をイマームとして、スンニ派も第4代カリフとして認識している。彼には秀でた特徴がいくつもあるが、そのひとつが「公正さ」である。レバノンのキリスト教徒で作家のジョージ・ジョルダック氏は、このイマーム・アリーについて『正義の声』という5巻からなる著作を出している。この本は、ぜひスペイン語やポルトガル語にも翻訳されるべきだと思う。ジョルダック氏は、イマーム・アリーに心から惹かれている。
イマーム・アリーは次のように語っている。「人間には2種類ある。ひとつは、あなたの信仰上の兄弟。もうひとつは、あなたと同じように創造された人」 我々は、キリスト教徒やユダヤ教徒に対しても兄弟と呼ぶよう教わってきた。イスラム教の預言者ムハンマドは、キリスト教徒やユダヤ教徒とも対話をする人物だった。神はコーランの中でムハンマドに対し、「あなたも話をしなさい。共に話そう」「一切同意しようとしない者とも会話せよ」と言っている。さらに、相手がどうしても自分の話を受け入れない場合でも、彼らから何を言われても耐えよと命じている。そして、彼らとの対話を諦める時も、無下にすることなく、礼儀を保って離れるよう言っている。
対話を重んじた預言者の一門
預言者ムハンマドやその子孫であるイマームたちは、キリスト教徒やゾロアスター教徒などとも対話をした。我々はお互いに対話をし、相手を理解・尊重しなければならない。イスラム教は平和的共存を重視している。人間はお互いに寄り添わなければならない。イスラム教は、関係性の発展を擁護する。自分との関係、他者との関係、神との関係、自然との関係。イスラム教は自然を守ることを強調している。ならば、人間や動物の権利に関しては言わずもがなだ。
敵の土地にある木を切ってはならない
今から1250年前にシーア派第4代イマーム・サッジャードが記した50以上の権利に関する文書がある。その中に、自然に関する次のような一節がある。「もし敵と戦うことがあっても、敵の土地にある木を切ったり、燃やしたりしてはならない。それは自然の一部である。敵の土地にある水も汚してはならない」 コーランにもハディースにも、自然環境に関する記述はたくさんある。