9月 16, 2024 17:24 Asia/Tokyo
  • コーランの説く社会的公正と、公正さを軸とした政体樹立の必要性
    コーランの説く社会的公正と、公正さを軸とした政体樹立の必要性

公正という理想の実現は、預言者を含めた歴史上の自由な人々および人類の改革者が皆求めてきた、最も重要な事柄のひとつでした。イランのイスラム革命も、社会の公正をスローガンに掲げ、コーランにある公正に基づいた社会の構築を目指していました。

【ParsToday宗教】法に基づいた判断の上に成り立つ公正は、人類が原初から内なる願望として感じているその理想だと言えます。差別や不公正、被抑圧者の人権が踏みにじられる様子は、人の心の中に怒りを巻き起こすものであり、多くの社会運動や革命が起こるきっかけとなったのは、世の中における社会的公正の欠如でした。この記事では、この重要なテーマについて、コーランを軸としながら考えていきます。

 

公正という概念

イスラム教の預言者ムハンマドの後継者となったシーア派初代イマーム・アリーは、公正とは権利を持つべき者にそれを与えることだとしました。彼はさらに、公正を、公平さ、節度、過多や過少を避けることだと解釈しました。世界人権宣言も、その前文および30の条項にわたり、侵略・差別の撤廃および圧政を行わない体制の創設という目的のみを主張しており、あらゆる分野で個人の自由と権利を、全体を通じて強調しています。とはいえ現実は、世界人権宣言の最大の署名者が、同時に最大の違反者にもなっています。

公正に基づいた政体の樹立については、イブン・スィーナー、イブン・ロシュド、アッラーメ・タバータバーイー、モルテザー・モタッハリーといったイランの賢人たち、そして何より、イスラム革命創始者のホメイニー師も語っています。

中でもホメイニー師の言葉は、理論のみにとどまらず、この考えが一般に広まるようにし、公正を渇望している大衆の力を受けながら、コーランにある公正に基づいたイスラム体制の樹立に尽力したことで、より際立ったものとなっています。

 

コーランで重視される社会的公正

コーランにある社会的公正は、神がそれを絶対の義務として命じているほど重視されています。コーランはイスラム社会に向けて、悪行や意見の異なる者の敵対行為によってイスラム教徒が公正の道から外れるようなことがあってはならず、敵であっても公正をもって扱うべきであると説いています。このように、預言者ムハンマドがコーランに基づき主な目的としていたもののひとつは、公正の確立でした。人間社会における完全な公正の実践というコーランの原則は、預言者の行動にもはっきりと表れていました。これに関連しては、預言者ムハンマドの子孫の一人であるシーア派5代目イマーム・バーゲルが、「預言者は、無知から成る慣習を撤廃し、公正をもって人々に対処するということを始めた」と述べています。

コーランは、社会における公正の重視という考えを、さまざまな分野に拡大させています。判断を行う時の直感的思考や言論において公正を遵守したり、人生のあらゆる段階で公正のために行動を起こす必要性を説いていることは、この重視の表れだと言えます。

コーランはさらに、腐敗や公正の精神を乱すことにつながるあらゆる物事を、道徳から外れた罪となる行為「フィスク」にあたるとして禁じ、たったひとつの誤った情報でさえも人々の精神に実際的な影響を与えうるとしています。また、すべての人々が平等に権力、富、地位を享受できる均衡のとれた社会では、社会の構成員の間に自然と共感や同胞愛が生まれるものであり、イマーム・アリーも、「公正とは、心地よく友愛へとつながるものだ」と述べています。

このような社会的公正の反対に位置するのは、圧政と不公正です。それらは、神の怒りを呼び、敵意を生み出し文明を崩壊させることで、社会を破滅へと導きます。

 

政体を土台とした公正の形成

預言者の使命のひとつとされていた社会的公正の実現が最も必要とした条件は、政体の形成です。預言者とその後継者たちによる政体の形成に向けた継続的な努力は、このように社会的公正を生み出すことが目的にあり、彼らは、長としての支配、力の拡大、個人的な世俗的充足や横着を求めてはいなかったのです。コーランには、次のようにあります。

「われらは、明白な確証をもってわれらの使徒を遣わしてきた。また、人々が正道に立つように、彼らと共に、啓典と(正邪の)秤とを下しもした」鉄(アル・ハディード)章第25節

もし彼らが来世の保証だけを自身の負うべき責任だとしていたなら、敵や反対派による彼らの預言者の使命の邪魔は、無意味なものだったでしょう。財政法を中心としたイスラム諸法の制定とその施行には、政体の形成が必要でした。ソロモン大王や預言者ムハンマドは、人々の権利を実現すべく政体の形成に努力していたのです。

 

人間の発展・完成に社会的公正が果たす役割

人間が創造され地球に生み出された目的は、その完成形へと到達することにあります。そして、人間の社会をこの目的へと向かわせることができるのが、社会の公正です。もし社会のすべての構成員が、自身の権利が保護され、その人間性と尊厳が守られていると感じるならば、他の構成員との関係も良くなり、さらに、社会で互いにとって有益な役割を果たそうと努めることでしょう。逆に、圧政は社会にとって災厄であり、文明や諸民族に滅びをもたらすのです。

コーランの各節からも明らかなように、公正の遵守は、個人および社会の道徳的観念や行動を正しいものにし完成へと近付けることと深い関わりを持っており、そのために、たとえ些細な事柄であっても公正に努めるよう推奨されているのです。

コーランには、次のようにあります。

「本当にアッラーは公正と善良を、そして近しい親族に対して(惜しまず)与えることを命じ、また、不品行と非道、そして抑圧を禁じる」蜜蜂(アン・ナフル)章第90節

「私は、あなた方の間を公正に扱うよう命じられた」相談(アッ・シューラー)章第15節

「(人々に)言いなさい。主は正道に立つよう命じていると」高壁(アル・アアラーフ)章第29節

「信仰する者たちよ、(人生において常に)公正を貫く者、アッラーのための証言者であれ」婦人(アン・ニサーア)章第135節

これらの節はすべて、あらゆる物事において公正が望ましいものであることを説いているのです。

 

 


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