イエメンの攻撃はイスラエル・エイラート港に何をもたらしたか?
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かつてはイスラエルの貿易、エネルギー、観光を支えていた港湾都市エイラートが、現在では安全保障上の危機、財政麻痺、国民の不信感に見舞われています。
(last modified 2025-08-02T03:38:33+00:00 )
7月 23, 2025 21:22 Asia/Tokyo
  • イスラエル・エイラート港
    イスラエル・エイラート港

かつてはイスラエルの貿易、エネルギー、観光を支えていた港湾都市エイラートが、現在では安全保障上の危機、財政麻痺、国民の不信感に見舞われています。

【ParsToday西アジア】アラビア語の分析ウェブサイト「アル・ハナデク」は22日付の記事で、イエメンの攻撃が続いたことを受けてイスラエル占領地南部のエイラート港が閉鎖されたことに言及し、「港湾の完全閉鎖は突然の決定ではなく、2023年末にイエメン・アンサーロッラーによる海上作戦の開始とともに始まった疲弊プロセスの頂点であった」と報じました。

イエメンの作戦によりイスラエルの重要な中枢インフラの弱点が露呈し、エイラート港湾は占領地南部における海運システムと経済の崩壊の象徴と化しています。

アル・ハナデクはさらに「エイラート港はスエズ運河を経由してアジアとヨーロッパを結ぶ戦略的な要衝であり、シオニスト政権にとって紅海にアクセスする唯一の航路であった。しかし、この港湾はイエメン軍による再三の海上攻撃で深刻な被害を受け、船舶輸送はほぼ完全に停止し、船舶保険料は270%も上昇した。このため、国際企業は航路変更を余儀なくされた」と指摘しています。

 

増大する負債

この報道はさらに「エイラート港の負債は1億ドルを超え、収益は85%減少した。エイラート市当局は、港湾が納税不能となっていることを理由にエイラート港湾名義の銀行口座を凍結し、これによりこの港湾再建への希望は打ち砕かれた」と報じました。

アル・ハナデクの報道によれば「イエメンの攻撃は船舶の航行妨害にとどまらず、強力かつ精密な攻撃は占領地の内奥部にまで及んだ。その最も顕著な例の一つは、2025年7月16日に発生した。アンサーロッラーは、弾道ミサイル・ゾルファガールと最新鋭無人機を用いてエイラート港、ベン・グリオン空港、ネゲブ砂漠地方に対し4つの同時作戦を実行した」とされています。

イスラエル軍が被害を矮小化しようと工作した一方で、アル・ハナデクは抵抗勢力の情報筋の話として「すべての標的が正確に攻撃された」と強調しました。

 

経済的大惨事

アル・ハナデクはまた「これらの攻撃はイスラエル経済、特に貿易、自動車、エネルギー部門に壊滅的な影響を与えた」と報じています。イスラエルの自動車輸入の半分の経路とされていたこの港は、2023年11月から完全に稼働停止となり、数万台の自動車が山積みになっています。

このアラビア語メディアによれば「UAEの石油をヨーロッパに輸送するはずだったエイラート・アシュケロン(占領地南部の都市)石油パイプラインに加え、エイラート、北部ハイファ、南部アシュドッドを結ぶ270億ドル規模の鉄道計画などの戦略的プロジェクトは、抵抗勢力による海上の脅迫のために中止された」ということです。

加えて、この報道はエイラートの観光産業の崩壊に焦点を当てています。それによれば「かつては年間約100万人の観光客が訪れていたこの都市は今や警戒態勢が敷かれ、経済は完全に麻痺している。12号街道を含む主要道路の封鎖及び、広範囲にわたる軍の駐留により観光活動は急激に減少し、損失は数百万イスラエル・シェケルに上ると予想されている。また、安全な観光地としてのエイラートに対する国民の信頼は深刻な打撃を受けている」ということです。

 

数々の反響

アル・ハナデクは政治・軍事的な反響にも言及し「これらの情勢変化を受けて、イスラエルはイエメン軍を狙うためのアメリカの直接介入を要請し、船舶保護のための国際的連帯を結成することで危機の封じ込めを試みた。この措置は、こうした新タイプの脅威に対するイスラエルの防衛システムの失敗を公然と認めたに等しい」と報じました。

一方で、国連安全保障理事会は紅海での攻撃に対する監視任務を延長しましたが、ロシア、中国、アルジェリアの棄権は「理事会の内部亀裂の証であり、一部の国にとって、米国とイスラエルの覇権に対するイエメンの抵抗の合法性が高まっていることを浮き彫りにした」格好となっています。

 

占領軍にとって安全な国境検問所は存在せず

このアラビア語サイトの分析では、アンサーロッラーは「イエメンからガザ地区への抵抗軸の一員として、新たな抑止力の方程式を課すことに成功した。その方程式のメッセージは至極明確で、占領軍にとって安全な国境検問所などない、というものである」とされています。

アル・ハナデクは最後に「エイラート港は今やイスラエルの戦略的暴露の象徴となっている。かつては経済拡大と繁栄の象徴であったこの港は、今や権力の縮小と抑止力の低下の兆候と化している」と結びました。

このメディアによれば「イエメンの抵抗勢力は数年前には想像もできなかった新たな現実を生み出した。それは戦場の地図を再定義し、占領軍との戦争が今やイエメン北部サアダ州からイスラエル占領地南部アシュケロン、そしてパレスチナ・ガザから紅海にまで及んでいることを示している」ということです。

 


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