世界の情勢-アメリカが望む新たな中東の構想(音声)
この時間は、アメリカが望む新たな中東の構想について見ていくことにいたしましょう。
冷戦が終わり、アメリカは、新たな西アジア政策をスタートしました。ホワイトハウスの強硬派や新保守派は、アメリカの支配が進むような中東戦略の見直しを求めました。
これにより、地域で大中東構想が実施されました。このプロジェクトは、民主化の名の下にアメリカの政治的な影響力を拡大し、軍隊を駐留させ、アメリカが望む政治改革を行うことを意味するものでした。しかし、大中東構想の失敗により、アメリカは、中東を民主化する構想を捨て、サイクス・ピコ協定に基づく地域の分割を追求するようになりました。
これに基づいて生まれた地域の分割の流れは、サイクス・ピコ協定の内容と中東の宗教や民族の対立を軸にしたものでした。
アメリカは、中東に長年にわたって進出してきた結果、中東に混乱を作り出し、内部の対立を利用することこそ、アメリカの戦略、的な利益に合致するという結論に達しました。なぜなら、中東の混乱は、アメリカの政策と本質的に異なるイスラムの目覚めの流れや民主化の可能性を減らすことになり、それはアメリカの利益になるからです。
アメリカの元CIA局員、スノーデン氏は、「CIAは、イギリスとシオニスト政権イスラエルの情報機関と協力してISISを誕生させた」と語りました。
スノーデン氏は、次のように語っています。
「アメリカが、イスラエルやイギリスと協力し、世界中から過激派を集め、テロ組織を誕生させようとしていたことを示す証拠が存在する。この作戦は、「スズメ蜂の巣」と呼ばれている」
スノーデン氏が明らかにした資料によれば、このスズメバチの巣作戦は、シオニスト政権を支援するために、主にイギリスによって計画されました。この作戦は、イスラムの過激な教えをスローガンに、他の考え方を一切受け付けない、一つのグループを作ることを目的にしたものでした。スノーデン氏の報告には次のようにあります。
「イスラエル支援の唯一の解決策は、彼らに武器を向けるのではなく、イスラム諸国を標的にする敵を国境近くに作り出すことだった」
アメリカは、イスラエルが、アメリカの経済的、軍事的な利益のために重要な要素となる新中東構想により、アメリカのヒエラルキーに反する抵抗勢力を取り除こうとしました。
経済的な点から、地域におけるアメリカの最大の目的は、世界の石油の60%以上を占める、ペルシャ湾の豊かなエネルギー資源を容易かつ安価に手に入れることです。この目的のために、軍事力を活用することはアメリカの優先事項のひとつになっています。
これに基づき、イラクでのアメリカの軍事作戦が始まる6か月前、当時のアメリカの国防副長官が、トルコ政府をイラク攻撃に賛同させるため、この国を訪れ、次のように語りました。
「地域諸国の民主主義は、イラクから始まる」
この計画により、当時のアメリカのパウエル国務長官が、一つの政策を発表しました。この政策の特徴は、新たな中東の国民、政府、文化づくりでした。外交において、このような立場はごく自然なことであり、明白な意味を持っています。しかし、たいてい、発表される政策は、実際の政策とは異なるものです。
アメリカは、地域の民主化を主張しながら、この20年、西側に同調する人々を政権につかせようとしてきました。
この中で、アルカイダの後のテロの利用と、9.11後のアメリカの戦略変更は、ISISの活動に集中しました。実際、ISISは、新中東構想のためのアメリカの新たな鍵となりました。イラクとシリアへのISISの支配の継続は、それまで不可能に思われていた、地域の政治的な変化につながる可能性がありました。
この中で、ヨーロッパ、アフリカ、アジアから過激派を惹きつけることが、世界各地のテロ組織を結び付け、連帯させるための下地を作りました。こうした組織の一つは、中東で成長したサラフィー主義やタクフィール派です。このつながりを利用し、世界各地から過激派を集め、ISISという組織が作られました。
ISISは、2013年3月にまず、ラッカを支配下に置きました。ラッカは、テロリストの手に渡った最初の都市でした。
2014年1月には、ISISは、イラク・アンバール州のファルージャを支配しました。さらに、ラマディも征服しました。
ISISは、イラク北東部、トルコとシリアの国境近くの地域も占領しました。そして2014年6月、イラク第二の都市、モスルを占領し、サマラ、バアグーバ、ジャローラまで戦火を広げました。
テロ組織創設におけるアメリカの悪しき陰謀の次の段階は、イラクで、軍事行動を広げるために人員を惹きつけ、タクフィール主義の思想を広めるのと同時に、ISISを組織化することでした。この計画は、イラクのニナワやサラホッディーンにあるイラク軍の基地や軍事施設に対する、ISISの計画的な攻撃によって進められました。この計画は、ISISの統治宣言によって表面的には完成されました。
ISISは、地域や地域外の疑わしい支援を利用し、その支配を広げました。この計画は、実際、中東に危機を作り出すために植民地主義大国が昔から用いてきた方法です。
中東でこれまで行われてきた事柄を見ると、この関係が明らかになります。
レバノンの33日間戦争では、シオニスト政権がレバノンを攻撃し、シーア派組織のヒズボッラーを排除することで、パレスチナ問題を永遠に解決する予定でした。この計画は、「新たな中東の創設」と呼ばれ、これに続き、国際社会に対し、新たな体制を作り出すために、その痛みに耐えることが求められました。
イスラエルの軍事作戦の失敗により、アメリカのヘンリー・キッシンジャー元国務長官は、ヒズボッラーが力を保つ限り、パレスチナ問題の解決は、平和的な方法であろうと、軍事的な方法であろうと、不可能であるという考え方を示しました。
ヒズボッラーを倒すためには、まず、この組織とイランとのつながりを絶つ必要がありました。
実際、アメリカと一部の地域諸国、特にサウジアラビアが、ISISを支援する目的は、テロとの戦いの前線にいた国々を脇に追いやり、シオニスト政権の利益になるように抵抗勢力を弱め、中東に対するアメリカの軍事的な支配を復活させることでした。この中で、この地域では、非常に重要な数々の出来事や情勢変化が起こりました。アメリカは、地域に自分たちの政治的、軍事的な戦略を押し付けようとしました。
ウェストバージニア州ブルーフィールド大学の政治学のキャベル教授は、次のように語っています。
「アメリカは、世界中に輸出されている兵器の3分の1以上を占め、世界最大の兵器輸出国になっている」
アメリカは、サウジアラビアへの最大の兵器輸出国です。サウジアラビアは、最近、中東や北アフリカで、最大の兵器の購入国となっています。この5年、1000億ドル以上の兵器が購入され、アメリカは、中東や北アフリカへの兵器の売却により、間違いなく、地域の情勢不安拡大の元凶になっています。
アメリカは、内紛の拡大と、強力な政権から無力な政権への交代により、自分たちの利益を確保することができるという結論に達しています。そのため、アメリカは、現在、民族的、宗教的な対立を支援しているのです。