視点
新たに発覚したシリアでの米の犯罪の新たな側面
アメリカの新聞ニューヨークタイムズが、現役および元アメリカ軍・情報機関関係者らの話として、米軍の秘密作戦部隊がシリアでのテロ組織ISISに対する作戦で民間人を繰り返し殺害した事実を暴露しました。
タロン・アンビルと呼ばれるこの特別な秘密部隊は、2014年から2019年の期間に、ISISの暗殺決行隊に対する活動として、移動部隊への襲撃や、司令部や軍用車両に爆弾を仕掛けるなどの作戦を実施していました。また、戦争時の民間人保護法をすり抜けて、農作物の収穫作業をしていた農作業者、道を渡ろうとしていた子どもたち、逃げ惑う家族連れ、建物内に避難していた村人といった民間人を相手に、幾度となく殺害行為を行いました。ニューヨークタイムズはまた、2016年から18年までの間にこの部隊と行動をともにしたある空軍将校の話として、「彼らは残酷なやり方を熟知し、良く任務をこなした。しかし、褒められない攻撃も数多く行った」と報じています。
ニューヨークタイムズのこの暴露記事は、シリアにおける米軍の犯罪行為の新たな側面を明らかにしています。この記事が公開されるまでは、米国が国際有志連合軍の枠組みでISISに対し行った空爆が、数百人ものシリアの民間人が殺害された原因だったと言われていました。しかし今や、米国の地上部隊、特に米陸軍特殊部隊も、子供を含むシリアの民間人に対して戦争犯罪を引き起こしたことが明らかになりました。
シリアに対するアメリカの軍事介入は、多大な大惨事を引き起こしました。そのひとつの例として、国際人権NGOアムネスティインターナショナルは、「2017年6月から10月にかけてのシリア北東部ラッカでの軍事作戦における米国とその同盟国による数千回の空爆の結果として、1,600人以上の民間人が死亡した」と表明していますが、アメリカ政府はその責任を受容していません。多くの米軍の空爆は不正確なもので、その結果数百人もの民間人が無差別な空襲と地上攻撃で殺された形となっています。
重要なことは、米軍は基本的に戦闘作戦実施中に民間人の生命に配慮せず、これを常に戦争の副次的な損害と呼んでいたということです。言い換えれば、米国防総省は、戦争では民間人の死傷者発生は避けられないと考えているため、戦争犯罪、特に民間人の殺害を犯した兵士に対しての重い懲戒や処罰を事実上考えていません。アメリカ当局により裁判が実施されたごく限られたケースにおいても、戦争犯罪人らは処罰を免れています。この問題は、シリアでの戦争犯罪だけに限られたものでなく、イラクやアフガニスタンでの犯罪も含まれます。
ロシア下院・国際問題委員会のレオニード・スルツキー委員長は、「シリアだけでなくイラクとアフガンでも、米軍の作戦中に防衛手段を持たない民間人が常に“おつり”や”付随的損害”として、アメリカの攻撃の犠牲になっている」と述べました。
しかし、過去10年間のシリアでの米国の犯罪行為は、基本的にあらかじめ計算ずくで、目的化されたものでした。米国はオバマ元大統領の任期中だった2011年以来、合法的なシリアのアサド政権の打倒と、抵抗の枢軸の弱体化を目的として、シリア国内のテロ組織に肩入れしてきました。さらに次の段階では、オバマ政権は、自らが創設し主だった支援者として肩入れしてきたISISと戦うという名目で、2014年からシリアで空爆および地上作戦を開始し、同国に米軍を配備しました。
そして現在では、バイデン現政権が国連安保理の許可なしに、シリアの主権や領土保全などの国際的な原則や基準をないがしろにして、戦争で荒廃したシリアで空爆を続けているのです。
ラジオ日本語のユーチューブなどのソーシャルメディアもご覧ください。
https://twitter.com/parstodayj