視点;マジード・ワカーリーアジア情勢専門家
なぜアメリカは中露の協力にいらだつのか?
中国はロシアとの関係を、ごく一般的な貿易・経済関係であるとしました。これに対して米国やその同盟国は、中国がロシアに軍事支援を提供していると主張しています。
中国は、アメリカによる内政・対外関係への干渉を何度となく退けてきました。アメリカとその同盟国はウクライナ戦争の長期間とそれによる財政圧迫に直面しています。そのため、中国やその他の国をロシアがウクライナ戦争において成功している要因と位置づけ、自らの敗北を説明しようとしています。こうしたことから、5月に広島で開かれたG7サミットでは、ロシアへのさらなる制裁強化とウクライナへの軍事支援の拡大が謳われました。
香港在住の政治評論家である曹希聖(ツォ・ヘイシン)氏は、次のように語っています。
「アメリカはウクライナ戦争において、ロシアのみならず中国の弱体化をも追求している。実際、アメリカは中国を非難することで、ロシアと中国、およびロシアと関係を持つ国を標的にする二正面作戦を展開している。その一方で、中国やその他の独立諸国は、国際常識にかなったロシアとの関係を擁護している」
こうした中、米メディアは最近、ロシアの貿易データから、中国から弾薬や戦闘機・無人機の部品が輸入されていることがわかったと報じました。
これについて、中国外務省の毛報道官は、「中国はロシアをはじめとする世界各国と、ごく一般的な貿易・経済関係を結んでいる」と述べました。
アメリカは中国に対する非難を展開することで、中国に対する圧力行使、ややもすると新たな制裁を行使する口実を探し回っているのです。アメリカはウクライナ戦争の主要因として、自らと同盟国がロシアに対して無力であるとみるや、他の国々をロシアに対して軍事支援をしていると非難しているのです。その一方でアメリカは、ウクライナに対し何十億ドルもの軍事支援を行い、最近もクラスター爆弾を提供しています。
また、米ピッツバーグ大学院で国際人権の教鞭を取るダニエル・コバリク氏はこれについて、次のように語っています。
「アメリカとその同盟国は、ウクライナ戦争が消耗戦の段階に入るとは想定していなかった。ウクライナへの軍事支援で財政負担が増す欧州では、徐々に抗議の声が出てきており、そのことでアメリカとその同盟国は、さらにウクライナ支援をせざるを得なくなっている」
中国は今年2月、ウクライナ危機解決のための12カ条の提案を出し、ロシアの支持を得ましたが、アメリカはこれに反対しました。その一方、中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は、ウクライナ戦争が始まる前の昨年2月の首脳会談で、「両国の友好関係は無限大である」などとした声明を発表しました。
中国はウクライナ戦争に関しては中立の姿勢をとっていますが、西側諸国が国連などで展開した対露非難には棄権あるいは反対し、ロシアがウクライナ戦争を始めた理由に理解を示しました。
中国が発表した12カ条の提案には、ロシア・ウクライナ間の対話、停戦、西側諸国による対露制裁の解除、ウクライナ国内の原発施設の安全確保、民間人退避のための人道回廊の設置、穀物輸出の保証などが含まれていました。
しかし、アメリカとその同盟国は、この提案をロシアを一方的に利するなどとして受け入れず、結果として戦争は激化することになりました。
その一方で、アメリカの対中国・対ロシア友好国への政治・メディア攻撃は、功を奏していません。それゆえアメリカは、世論を反中国・反ロシア友好国に仕向けるべく、なおもメディア攻撃をしかけようとしているのです。