2月 29, 2024 20:36 Asia/Tokyo
  • パレスチナ人のバセル・アドラ監督とイスラエル人のユバル・エイブラハム監督
    パレスチナ人のバセル・アドラ監督とイスラエル人のユバル・エイブラハム監督

25日まで開かれていた今年のベルリン国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞したパレスチナ人とイスラエル人の2人の監督のスピーチをめぐり、ドイツ当局者から異常なまでのイスラエル忖度のコメントが出されています。

今年のベルリン国際映画祭では、パレスチナ人のバセル・アドラ監督とイスラエル人のユバル・エイブラハム監督が共同制作した「No Other Land」が最優秀ドキュメンタリー賞に選ばれました。

受賞式のスピーチでアドラ監督は、「ガザ地区で何万人もの同胞がイスラエルに惨殺され、大量に虐殺されている今、祝う気分には到底なれない」と述べ、エイブラハム監督も「彼(=アドラ氏)は何百万人ものパレスチナ人と同様、占領下の西岸地区に閉じ込められている」「私たちは停戦を求める必要がある。占領を終わらせるための政治的解決を呼び掛ける必要がある」と訴え、揃って現在のシオニスト政権イスラエルを非難しました。

受賞式に出席したドイツのロート文化相は、この2人のスピーチが終わった後、拍手を送りましたが、ドイツ文化省は26日、この拍手は2人に対してではなくエイブラハム監督のみに送ったものだとわざわざXに投稿しました。

さらにベルリンのウェグナー市長も25日、Xへの投稿で2人のスピーチを指して「容認できない相対化」と非難。映画祭関係者に対し「このようなことが二度と起きないことを保証」するよう求めた挙句、「ドイツ政府はイスラエルを断固支持する。疑いの余地はない」「イスラエルとガザ地区の深い苦難の責任は、すべてイスラム組織ハマスにある」などとまくし立てました。

CNNによると、シオニスト政権のプロソル駐ドイツ大使も同日、Xへの投稿で、エイブラハム監督のコメントを「あからさまな反ユダヤ主義、反イスラエルの発言」と断じ、映画祭が「偏見をあらわにした」と主張しました。

エイブラハム監督は自身の受賞スピーチがきっかけで、イスラエル内の右翼団体から殺害予告を受けており、帰国便をキャンセルしたと明かしています。

ドイツは欧州諸国の中でもイスラエル支持の態度を強く打ち出しており、戦後ドイツが継承してきたとされるナチスによるホロコーストへの反省が果たして真実だったのか、国内外の知識人などから疑問が呈されるようになっています。

ドイツの戦後はホロコーストへの反省ではなく、イスラエルへの忖度だった。そう言われてもおかしくない事態が進行していることを、ベルリン国際映画祭の一件は示しています。

 


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