「欧州が滅亡の可能性」:EU上級代表の演説の一部より
「我々ヨーロッパ人は、近隣に友好の輪を作りたかった。だが、今日我々にあるのは火の輪である」
これは、ジョゼップ・ボレルEU外務・安全保障政策上級代表が今月3日、英オックスフォード大学での講演でウクライナ戦争、パレスチナ問題、国際秩序、中国の台頭など、世界で最も重要な問題について自らの見解を説明する際に語った言葉です。ボレル氏は、大半の欧州諸国が安全保障面での米への依存から脱却・独立する必要性を強調しました。
以下に、欧州対外行動庁のウェブサイトに掲載されているこの演説の一部を掲載します。
冷戦後に我々が慣れ親しんだ国際秩序はもはや存在しない。アメリカは自らの覇権的な地位を失った。そして、1945年以降の多国間主義的な国際体制はその地位を失いつつある。中国は一大超大国になりつつある。中国が過去40年間に行ってきたことは、人類史上例を見ないものである。過去30年間で、世界のGDPに占める中国の割合 (購買力平価ベース)が6%から約20%に増加した一方で、我々ヨーロッパは21%から14%に、米国は20%から 15%に落ち込んでいる。 これは経済情勢の劇的な変化である。
中国は今や我々やアメリカにとって一大ライバルにのし上がっている中、安価な製品を生産するだけでなく、軍事大国として技術開発や我々の未来を形作る技術生産の最先端を走っている。中国はロシアとの「無制限の友好関係」を謳い、同時に中堅国も台頭してきている。
彼らは今や、重要なカギを握る国となりつつある。BRICS加盟国であろうとなかろうと、彼らは世界でより高い地位とより強い発言力を獲得し、自国の発展に大きな利益をもたらしたいという願望以外には、共通する特徴は非常に少ない。この目標を達成するために、彼らは自らの独立性を最大限に高め、特定の側につくことを望まず、その時・瞬間や疑問に応じてどちらかの側を支持している。我々ヨーロッパは近隣に友好の輪を作ることを望んでいたが、今日我々の下にあるのは火の輪であり、それは西アジア沿岸からコーカサス地域、そして今ではウクライナの戦場にまで及んでいる。
紅海などのいくつかの重要な海峡では、我々はEUとして海軍任務にも関与している。さらに、人々が領土を求めて争う2つの戦争も存在している。このことは、地政学の復権を示すものである。グローバル化により地政学は無関係で、重要ではなくなったと言われるが、実際にはそうではない。我々の地域の紛争のほとんどは領土・国土をめぐるものである。パレスチナの場合は(イスラエル・パレスチナの)2者に国家樹立を約束し、ウクライナの場合は2つの世界の交差点にある領土である。「ここは私の領土だ」「いや、ここはうちの領土である」。こうした領土をめぐる戦いは多くの流血を引き起こしている。
同時に、我々は世界的な成り行きの加速を目の当たりにしている。気候変動はもはや将来の問題ではなくなる。気候変動は未来ではなく現在のことであり、今ここにある。テクノロジーの発展、特に誰もが人工知能について話していることは、我々には完全には理解できない変化を引き起こしている。
人口も急速に変化している。私は人口バランスについて話すならば、移住、特に2050年には世界人口の25%が住むアフリカへの移住について話している。2050年には、4人に1人がアフリカに住むことになる一方で、不平等の拡大、民主主義の縮小、自由の危機が見られる。
この展望から、EUの役割と英国の役割が定義される必要がある。我々の役割がどれになるかは不明である。我々は、ヨーロッパが滅びるかもしれないという警告を耳にしており、それ以下のものではない。では、我々は何をすべきだろうか?