イスラエルへの無条件支持でソフトパワーを失うドイツ
ドイツはイスラエルへの無条件支持とパレスチナに対する二重基準で、西アジアにおけるソフトパワーを手放しつつあります。
ドイツはこれまでイスラエルとアラブ諸国の間を取り持つことで、西アジアにおけるソフトパワーを維持し、長年にわたって経済的仲介国としての地位を確保していました。
しかし今、状況は一変しています。世界各地でパレスチナ抵抗運動への支持が高まり、アラブ諸国はイスラエルによるガザ攻撃をジェノサイドと非難しています。
ホロコーストの過去を背負うドイツは、イスラエルの攻撃開始当初からそれを支持しています。こうした姿勢は、ドイツの世界的信用を失わせています。
昨年10月7日にハマスがイスラエルに対して「アクサーの嵐」作戦を実行して5日後、ドイツのショルツ首相は演説で「ドイツの居場所はイスラエルに寄り添う所以外にない」と明確に語りました。
11月にはイスラエルに対する武器輸出額を10倍に引き上げ、米国に次ぐ対イスラエル武器供給国となりました。
ドイツの極端なイスラエル支持は、チュニジアのような一部アラブ諸国からの厳しい抗議に直面しています。
昨年10月、駐チュニジア独大使が現地で高校の開校式に出席し、同席したチュニジア教育相がガザへの連帯を表明したのに対抗し、イスラエルを「犠牲者」と呼ぶ一幕がありました。
数日後、チュニジア市民らが独大使館前に集まり、大使の辞任を求める事態に発展しました。
こうした中、米誌フォーリン・ポリシーは、西アジア5カ国に拠点を置くドイツ系機関で働く5人にインタビューしました。
インタビューに応じた5人はいずれも、ドイツのイスラエル支持の姿勢が、自分たちの仕事にも悪影響を及ぼしていると語りました。
あるベテラン職員は、イスラエルによるヨルダン川西岸の占領をアパルトヘイトだとし、ドイツの一方的なイスラエル支持は現実離れしていると打ち明けました。
これらの職員の間では、イスラエルによるパレスチナ対応を語る際に「アパルトヘイト」「ジェノサイド」といった言葉が当たり前のように飛び交っているといいます。
しかし、当のドイツ政府はこうした言葉の使用を拒否し、反ユダヤ主義だとの立場を崩していません。
ドイツ国際協力センター(GIZ)の職員らもフォーリン・ポリシー誌のインタビューに、ドイツ政府のイスラエル支持の姿勢がGIZ職員らの怒りを買っていると答えました。
こうした実態を知ってか、西アジアに拠点を置くドイツ機関の多くは、地域における自らの立ち位置を守るため、ドイツ政府の表向きの姿勢からは距離をとり、各種報告の公表を遅らせたり、イスラエル支援のプロジェクトから自らのロゴを削除したりしています。
ワシントンアラブセンターが2020年に行った世論調査では、アラブ諸国民の大半がドイツ政府の外交政策を好意的に見ていました。しかし、今年1月にカタールの機関が実施した調査では、ガザ戦争の影響を受けてか、回答者の75%がドイツに否定的な回答を寄せました。