米国防総省を「戦争省」に名称変更する理由・目的とは?
-
米国防総省を「戦争省」に名称変更する理由・目的とは?
ドナルド・トランプ米大統領が、ペンタゴン・米国防総省を「戦争省」に名称変更する大統領令に署名しました。
米国国防総省を戦争省に改称するというトランプ米大統領の決定は、第2次トランプ政権における200番目の大統領令として記録されるとともに、世界各国の政界と軍事界で大きな反響を呼んでいます。1949年以前の名称を彷彿とさせる今回の改称は象徴的な出来事であるだけでなく、米国の外交・軍事政策のアプローチの転換の可能性を示唆するものと捉えられています。
アメリカ国防総省は、第2次世界大戦後の1947年9月18日までは「戦争省」と呼ばれていました。戦後、1947年国家安全保障法が成立したことで、アメリカ陸軍、海軍、空軍は「国家軍政省」と呼ばれる単一の組織の下に統合され、1949年には「国防総省」に名称が変更されました。この変更の目的は、核の時代において、侵略や好戦主義にではなく、防衛と抑止力のアプローチを重視することでした。
しかし、トランプ大統領は「国防総省」という名称は防衛色が強すぎると主張し、「戦争省」の復活を求め、ホワイトハウスでのある表明では「我々は第一次世界大戦と第二次世界大戦に勝利した。戦争省という名称の方がより強い影響力を持っていた。それは力、攻撃性、そして勝利を象徴している」と述べています。
トランプ氏は、「防衛」という言葉は受動的な響きがあり、アメリカの軍事力を十分に反映していないと考えており、同氏の持論では、「抑止力は、攻撃に備えることでのみ得られる」と考えられています。
ピート・ヘグセット現国防長官も、この名称変更を「戦争と勝利の精神を回復する」ための一歩だと表現するとともに、米軍は「単に防御するのではなく、断固として戦うべきだ」と強調しました。
しかし、この米国国防総省が過去75年間、数々の戦争と侵略を開始し、主導してきたことを忘れてはなりません。米国国防総省は、米国の防衛のみに特化した機関ではありませんでした。だからこそトランプ大統領は、本来この目的のために設立された、1兆ドルもの予算を擁するこの長く幅広い省庁に「戦争」という名称を冠したのです。その戦争とはまさに、極東アジアの朝鮮戦争と東南アジアのベトナム戦争に始まり、西アジアのアフガニスタン、イラク、イエメン、北アフリカ・リビア、そして南北アメリカ大陸のキューバ、グレナダ、パナマでの戦争まで、世界のあらゆる場所で繰り広げた戦争をさしています。
そして現在、米国はウクライナにてロシアとの間接戦争を繰り広げているほか、数週間前にはイラン領土への不法侵攻にも手を出しており、さらには今後いつ南米ベネズエラを攻撃してもおかしくない状況です。したがって、国防総省を戦争省に改称しても、大きな変革はないと見られます。
そのため、米民主党のトミー・ダックワース上院議員をはじめとする一部の批判派は、この名称変更を「政治目的かつ、本来的に不必要で、費用がかさむ」と批判しています。ダックワース議員は「文書や標識の更新、軍事機関のブランド化といった変更にかかる費用は、軍人の家族支援や外交強化に充てられたはずだ」と主張しています。
一部の人々の間では、「戦争」という用語の使用は、中国やロシアといった世界のライバル国に対する米国のより積極的なアプローチの兆候と解釈しうると考えられています。しかし、正式な名称変更には議会の承認が必要であり、トランプ大統領の大統領令では「戦争省」を副次的な名称としてのみ認めているため、今回の変更は単なる象徴的なものであり、米国の実際の政策に大きくは影響しないと考える人も少なくありません。
いずれにせよ、国防総省を「戦争省」に改称することは、揺るぎない軍事大国としてのアメリカのイメージの再構築を狙ったトランプ大統領の試みの一環だと言えます。現大統領によれば、アメリカは第2次世界大戦後75年間、一度も戦争に勝ったことがなく、そして今、名称変更によって、こうした軍事的な無力さが忘れ去られる予定であるようなものだということです。

