トルコの見せかけ的なパレスチナ支持;外交的ジェスチャーの背後に隠れた現実
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トルコの政治家ウミット・オズダー氏のパレスチナ関連発言が、メディアやSNSで広範な反応を引き起こしています。
(last modified 2025-10-06T10:14:48+00:00 )
10月 06, 2025 19:10 Asia/Tokyo
  • トルコの反移民政党「勝利党」のオズダー党首
    トルコの反移民政党「勝利党」のオズダー党首

トルコの政治家ウミット・オズダー氏のパレスチナ関連発言が、メディアやSNSで広範な反応を引き起こしています。

トルコの反移民政党「勝利党」の党首で、エルドアン現政権の反対派であるオズダー氏は「我々にとってはパレスチナよりも、イラクのモスルとキルクークの方が重要である」と語りました。また「パレスチナ問題はトルコの国民的問題ではない、という自身の過去の発言が中傷キャンペーンを引き起こし、批評家からはシオニスト政権イスラエル政権を支持しているとして非難を浴びている」と述べています。

また「彼らが私を非難しているのは、私が先だって『パレスチナはトルコ国民の国家問題ではない』と発言したからである。パレスチナはアラブ世界共通の問題とさえ考えられていない。聖地ベイトルモガッダス・エルサレムはトルコ人にとって特別な位置づけにこそあるが、それは我々の主たる国民的問題ではない」とコメントしました。

続けて、パレスチナ問題に対するトルコ政府の矛盾したアプローチを批判し、「ガザ地区のパレスチナ人が虐殺と難民化に直面している一方で、トルコとイスラエル政権との貿易はしっかりと続いている。パレスチナを自国の国民的問題だと主張する輩は口先だけで行動せず、途切れることなく自らの貿易を続行している」と語っています。

さらに「イラクにあるモスルとキルクークはトルクメン人の土地であり、旧オスマン帝国の一部であることから、トルコにとってはこの2都市はパレスチナよりも重要である」と強調しました。加えて、党の国家的優先事項を挙げ、「我々はトルコ国民の利益に焦点を当てている。これには、キルクークとモスル、東トルキスタン(中国のウイグル自治区)、東地中海、北キプロス・トルコ共和国の独立、西トラキア(ギリシャ北東部でトルコと国境を接する地域)、エーゲ海でギリシャに占領されているトルコの島々、そして強力で統一された世俗的なトルコ共和国の建設といった問題が含まれる」と述べました。

現在、トルコの政界やメディアでは、パレスチナ問題に対するトルコのエルドアン現政権のアプローチについて深刻な批判が巻き起こっています。ガザにおけるイスラエルのジェノサイドと犯罪の続行に関して、トルコ大統領に対する主要な批判の的になっているものの一つは、トルコとイスラエルの通商関係です。

近年、パレスチナ問題に対するトルコの政策は、全般的に明らかな矛盾を孕んでいます。エルドアン政権はイスラエル政権によるガザでの犯罪を繰り返し批判し、パレスチナ国民の支持者を自称する一方で、イスラエルとの経済・外交関係は維持しているのです。こうした二面性のあるトルコの姿勢から、多くのアナリストや批評家はトルコのパレスチナ支援をプロパガンダ的な動きであると見なしています。

トルコ政府は国際フォーラム、メディア、そして公式演説においては、イスラエル政権による人権侵害を繰り返し非難し、ガザ攻撃の停止を求めてきました。しかし、貿易統計によれば、トルコ・イスラエル間の輸出入は近年停滞してはおらず、逆に増加している時期もあります。パレスチナ支援という文言が美辞麗句的なプロパガンダとされる主な理由の1つは、トルコ政府関係者の政治的レトリックと経済面での行動に見られるこうした矛盾にあります。

パレスチナ問題は、トルコ国内の政治舞台において、宗教的・民族主義的な感情を煽る手段にもなっています。エルドアン現大統領が率いるAKP公正発展党は、危機時や選挙直前にパレスチナへの支持を強調することで、支持基盤の強化を図っています。こうした中で、パレスチナ人を支援するための具体的な措置は大抵、メディアでの発言に限られているのが現実です。多くのアラブ・イスラム諸国も、トルコ政府のパレスチナ支援を、真の約束順守ではなく外交的なジェスチャーに過ぎないと考えています。

トルコ社会、特にイスラム主義集団や若者は、パレスチナ問題に非常に神経を尖らせています。トルコ政府はこれらの集団からの支持を維持すべく、象徴的かつプロパガンダ的な立場を取らざるを得ないのです。こうした立場は多くの場合、感情的なツイート、熱烈な演説、支持集会への参加といった形を取っていますが、マクロ政策レベルでは具体的な変化をもたらしていません。

トルコの対パレスチナ政策は一貫した戦略に基づくものではなく、世論や国内の政治的対立、そしてイスラム世界におけるトルコの外交的立場を維持するための手段となっています。トルコ政府の対パレスチナ政策とプロパガンダは、短期的には効果的かもしれませんが、長期的には地域におけるトルコの外交的信頼性に疑問を生じさせているのです。

 

 


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