米財務長官が世界経済への打撃画策を理由に中国を非難する理由とは?
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スコット・ベッセント米国財務長官
スコット・ベッセント米財務長官が、世界経済に損害を与えようとしているとして中国を非難しました。
【ParsToday国際】アメリカ・中国間の貿易摩擦が激化する中、ベッセント米財務長官は、中国が世界経済に打撃を与え、成長を鈍化させようとしているとして非難しています。また、中国が先週発表した希土類元素への新たな輸出規制について批判し、「この措置は逆効果となるだろう」と述べました。そして「これは中国経済の弱体化の兆候であり、中国は他者全員を巻き込み、経済を崩壊させようと画策している」と主張しています。
米財務長官の発言は、米中間の緊張が高まる中でアメリカが示した最新の立場表明となっています。ベッセント長官は、中国が世界経済への打撃を画策していると非難することで、対立を激化させています。
米中間の貿易摩擦が激化する中、中国政府は希土類鉱物の輸出に対する包括的な規制を発表しました。これは、世界の技術、防衛、グリーンエネルギー生産に必要な資源における中国の優位性を改めて示す動きだと言えます。中国は最新の措置として、輸出規制対象リストに5種類の希土類鉱物を追加し、これにより許可規制の対象となる鉱物の総数は12種類となりました。また、採掘および精錬に使用される数十種類の機器も規制対象となっています。
中国政府は、同国の技術に他国をもっと依存させるため、これらの元素の加工に対する規制も強化しています。中国は、これらの措置がWTO世界貿易機関の規範および自国の国益に合致すると主張しています。また中国商務省はレアアースに関する自国の輸出規制を擁護するとともに「アメリカは関税賦課および、経済対策の強化の際に二重基準を適用している」と強調しています。
もちろん、米国は中国のこうした動きに迅速に反応しています。ドナルド・トランプ米大統領は、中国がレアアース(希土類元素)に対し新たに厳しい輸出制限を設けたことを受け、来たる11月1日から100%の追加関税を課すと発表しました。しかし、今月12日にはより穏健な姿勢を示し、融和的な口調に転じて「米国は中国を傷つけるのではなく、助けたい」と発言しています。さらに、自身が拉致挙げたSNS「トゥルースソーシャル」において「習近平・中国国家主席は、自国の景気後退を望んでいない」と投稿しました。
ベッセント米財務長官の発言を受けて、トランプ大統領の脅迫により緊迫化し、その後は落ち着いていた13日月曜の市況は一連の上昇傾向を示した後、再びマイナスに転じました。
ベッセント財務長官の非難にもかかわらず、トランプ大統領が在任中に中国に対して開始した関税戦争は、両国間の現在の経済緊張の多くの下地を作ることになりました。2018年に始まったこの貿易戦争は、米国が数千億ドル相当の中国製品に高関税を課したことが発端となっています。トランプ氏が表明した目標は、対中貿易赤字の削減および、彼が中国の「不公平な通商行為」と称する事柄への対抗でした。
これに対し、中国はアメリカ製品に相互関税を課し、国内の供給網の強化および西側諸国の技術への依存度の低減を図りました。この過程で、中国は徐々に戦略産業、特にハイテク分野の保護政策を踏襲するようになったのです。
その後数年間、こうした緊張は、重要鉱物や希土類元素の輸出といった、より神経を要する分野へと波及しました。世界最大のこれらの元素生産国である中国は近年、これらの元素の輸出を制限しており、米国はこれを「世界の供給網をかく乱し、米国の経済的圧力への報復を企てる試み」と見なしています。
実際、中国による最近の輸出制限措置は、トランプ政権下で始まった貿易戦争の続編と見なすことができます。これらの措置は、世界の二大大国間の地経学的競争の激化を物語るとともに、中国が単なる反応から世界経済におけるより攻撃的な行動へとアプローチを転換したことを示しています。言い換えれば、中国は今や経済的手段を用いて、グローバルゲームのルールの再定義を目論んでいるのです。レアアースへの輸出制限を課すことで、中国は自国の戦略資源を、米国および西側諸国に対する地政学的・経済的圧力の手段として利用しています。この政策は、自らの国際的な地位の強化および、アメリカの貿易戦争への対抗を目的とした中国の壮大な戦略の一環なのです。
この分野における中国の主要な政策目標は以下の通りです;
- 戦略的資源管理:中国は世界最大の希土類元素生産国であり、これらの元素はテクノロジー、軍事、エネルギー産業にとって不可欠である。中国政府は輸出制限により、世界の供給網に対する統制を強化しようとしている。
- 米国の圧力への対処:中国はアメリカによる重い関税と技術制限に対抗するため、鉱物資源を報復手段として利用している。
- 地政学面での力の誇示:西側のアナリストは、この中国の行動をある意味での「資源の兵器化」の一形態、つまり国際競争で影響力を発揮する手段として重要な原材料を利用するものだと見ている。
世界的な影響:
- テクノロジー供給網の混乱:欧米の産業はこれらの元素に大きく依存している。中国の輸出制限により、半導体、バッテリー、軍事装備の生産が混乱する可能性がある。
- 代替供給源をめぐる競争の激化:米国、オーストラリア、カナダなどの国々は、国内供給源の開発と中国への依存度の削減を目指している。
- 貿易摩擦の激化:これらの政策により、米中という二大経済大国間で関税戦争と不信感が激化している。