対米戦争における習近平氏の戦略:「トランプ氏に勝利宣言させておけばよい」
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中国が大豆の購入と希土類元素の輸出を差し控えることで、延期されていたトランプ大統領の関税と輸出規制から大きな見返りを与えることなく逃れました。
(last modified 2025-11-01T11:38:16+00:00 )
11月 01, 2025 13:31 Asia/Tokyo
  • 習近平・中国国家主席(右)とドナルド・トランプ米大統領
    習近平・中国国家主席(右)とドナルド・トランプ米大統領

中国が大豆の購入と希土類元素の輸出を差し控えることで、延期されていたトランプ大統領の関税と輸出規制から大きな見返りを与えることなく逃れました。

米紙ニューヨーク・タイムズは韓国・釜山での米中首脳会談に関する記事で、「対立候補が何も手につかず舞台を去る一方で、トランプ氏に勝利を宣言させるという手法…」と報じています。

【ParsToday国際】ニューヨーク・タイムズ紙は「韓国で最近行われた習近平国家主席とドナルド・トランプ氏の会談は、中国が今やアメリカに対して新たな自信を持っていることを明確に示した」としました。

中国の習近平国家主席は、自国の重要資源の独占と世界市場における巨大な購買力を頼りに、関税引き下げから中国企業への米国技術輸出規制の停止に至るまで、米国から大幅な譲歩を引き出すことに成功しました。発表された合意に基づき、米国は中国製品に対する関税を57%から約47%に引き下げ、中国船舶への港湾使用料を一時停止し、中国のテクノロジー企業に対する新たな輸出規制の導入を延期することになります。

中国はその代わりとして、携帯電話から軍事ミサイルまでほぼすべての現代技術の生産に不可欠な重要材料である希土類の輸出に対する最近の規制の1年間停止に同意しました。

中国は大国としてのイメージを顕示

ニューヨーク・タイムズ紙はさらに「これにより、中国は経済的優位性を獲得すると同時に、決断力と実力を備えた大国としてのイメージを作り出すことに成功した。アメリカのアナリストの多くは、この結果を両国間の新たな力関係の均衡の兆候と見ている」との見解を示しています。

バイデン政権時代に中国との技術競争を専門としていたNSC米国家安全保障会議の元当局者ジュリアン・ゲワーツ氏は「中国は、米国からあらゆる譲歩も引き出す​​ために、大胆かつ巧みにその影響力を行使できることを示した」と述べています。実際、釜山での首脳会談において、習近平国家主席は教​​師のような口調でトランプ大統領に対し「最近の貿易戦争の紆余曲折は、双方にとって教訓となるはずだ」と述べていました。

習国家主席はまた、米中両国が「もっと大局的に考え」、経済報復の悪循環に陥ることを回避すべきだ」と語りました。彼が言及したのは、両国が関税、制裁、輸出制限の波を巻き起こしてきた過去1年間を指します。数週間前、中国はレアアースの輸出に対する厳しい制限を発表し、アメリカを事実上窮地に追い込んだ形となっていました。この動きは、ハイテクからグリーンエネルギーに至るまで、アメリカの産業を麻痺させかねないものでした。専門家によれば、この脅威こそがトランプ政権が引き下がることの決定的な要因となったと見られています。

米中両首脳は、表面上は会談を華々しく終えました。トランプ大統領は、中国による関税引き下げと米国農産物、特に大豆の購入増加を「米国農家の勝利」と大々的に宣伝し、帰米の際には大統領専用機エアフォースワンの階段を拳を握りしめて上り、SNS上に「我が国の農業関係者はきっと大喜びするだろう!習近平国家主席、ありがとう!」と投稿しています。

トランプ氏はまた「中国は、アメリカ向けフェンタニル輸出を阻止するために更なる措置を講じると約束した」と述べました。一方で、中国商務省も声明を発表し、去る10月に導入されたレアアース輸出制限を一時的に停止すると発表しました。しかし、専門家らは、トランプ政権が最終目標に向けた一貫した戦略を欠いているため、この貿易戦争では中国が優位に立っている、と見ています。

元CIA米中央情報局アナリストだった、ジョナサン・チジン米ブルッキングス研究所フェローは「トランプの政策は戦略のない戦術だ。中国は巧みに米国を出し抜き、先制的に奇襲して逃げるという駆け引きを仕掛けてきた」と語りました。しかし興味深いことに、会談に関する中国の公式声明には、米中間のハイレベル会談で必ず取り上げられる台湾問題には言及されていません。情報筋は、この沈黙を中国側の微妙な譲歩かつ、会談後の良好な雰囲気を維持するための努力の一環だと見ています。

米中間の平穏は風前の灯

アナリストらは、「釜山での米中合意は一時的なもので、両大国間の関係に不安定な平穏をもたらしている」と指摘しています。トランプ大統領は「両国としてウクライナ紛争の終結にも取り組むつもりであり、自分は来年4月に中国を訪問する予定だ」と述べました。またこの訪問に合わせ、習近平国家主席も米国を訪問する予定だということです。今回の会談中、両首脳は温かみのある対応を示すことで、前向きな雰囲気作りに努めていました。

習近平国家主席は、中国の発展は「アメリカを再び偉大にする」という米大統領のビジョンに沿っていると述べました。また、トランプ大統領は習近平国家主席を「偉大な国の偉大な指導者」であり「親愛なる友人」だとしています。これについてアジア政策研究所の研究員リジー・リー氏は「このような個人的な外交は両首脳の本能と完全に一致しており、今のところ、両国間の管理された安定につながっているようだ」との見方を示しました。

しかし、この停戦はつかぬ間のことでしかなく、いずれかの当事者による突発的な行動によって崩壊しうるものです。一例として、先月、アメリカが新たなリストに掲載された中国企業に対し、米国の技術へのアクセスを禁止した際、中国は直ちにレアアースの輸出停止を示唆しました。またトランプ大統領も、釜山での会談の数日前に「中国が制限を解除しなければ会談を中止し、さらなる関税を課す」とさえ警告していた事実があります。

 

 


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