米国の新国家安全保障戦略文書:新たな表現による米の覇権的立場表明の繰り返し
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このほど発表された米国の新国家安全保障戦略文書においては、新たな表現ながらもアメリカの覇権的立場が繰り返されています。
(last modified 2025-12-06T10:10:07+00:00 )
12月 06, 2025 19:07 Asia/Tokyo
  • アメリカのドナルド・トランプ大統領
    アメリカのドナルド・トランプ大統領

このほど発表された米国の新国家安全保障戦略文書においては、新たな表現ながらもアメリカの覇権的立場が繰り返されています。

【ParsToday国際】ドナルド・トランプ米大統領率いるアメリカ現政権は、新たな「国家安全保障戦略」文書において、イランに関する主張を繰り返しつつも、米国の世界的な役割の地域的役割への転換および、中南米諸国に対する優位性の強化を強調しました。

トランプ大統領は5日金曜に公開された文書の序文で、「我々の『ミッドナイトハンマー作戦』において、イランは核濃縮能力を失った」と主張しました。しかし、このトランプ大統領の主張には強い疑問が突きつけられています。対イラン作戦開始からわずか3週間後の去る7月17日に行われた、イラン核施設への攻撃の結果に関する米国安全保障機関の初期評価は、イランの核能力が維持されていることを示唆しています。IAEA国際原子力機関のラファエル・グロッシ事務局長も2025年11月中旬に「トランプ大統領はイランの核能力の破壊について語っているが、イランの技術的知識は破壊されておらず、ウラン濃縮に使用可能な遠心分離機は復旧可能である」と述べています。

トランプ氏はまた「自分はわずか8ヶ月で、カンボジアとタイ、コソボとセルビア、コンゴ民主共和国とルワンダ、パキスタンとインド、シオニスト政権イスラエルとイラン、エジプトとエチオピア、アルメニアとアゼルバイジャンといった8つの激しい紛争を解決し、パレスチナ・ガザでの戦争を終結させ、生存する捕虜全員を家族のもとへ帰還させた」と主張していました。しかし、この主張はインドを含む多くの国から繰り返し否定されており、シオニスト政権による対イラン12日間戦争についても停戦宣言は事実上行われず、攻撃が停止されたのみとなっています。

従来のパラダイムを打破するトランプ大統領の「アメリカ第1主義」のアプローチ、すなわち全ての決定と政策において米国の利益が最優先されるべきという姿勢を体現する米国国家安全保障戦略は、これまでのアジア重視の主張とは大きく異なる方向を示してはいますが、依然として中国を主要なライバルとして位置付けています。この戦略文書は、再びアメリカの覇権主義的なアプローチを反映しています。移民抑制、NATO北大西洋条約機構と欧州の役割の再定義、イランへの圧力行使、そして中南米における影響力の確立に重点が置かれていることはいずれも、「アメリカ第1主義(アメリカ・ファースト)」政策の継続とモンロー主義(1823年にアメリカのモンロー大統領が提唱した、欧米相互不干渉の外交原則)の復活を示唆するものです。

トランプ政権はこの文書において「米国の世界的な役割を中南米諸国への支配及び、移民取り締まりへと転換する」と発表しました。この戦略はまた、欧州の同盟国を厳しく批判するとともに、アメリカとして移民問題を含むEU主導の価値観への反対派を支持する旨を明確に示したものとなっています。さらに、米国が唯一の超大国を目指してきた数十年もの努力を棚に上げ、「米国は自らが世界的な覇権を握るという邪悪な考えを拒否する」と主張しています。加えて「米国は他国の支配も阻止するが、これは世界の大国および中規模国の影響力の制限を目的とした血と資産の浪費を意味するものではない」としています。

実際、33ページに及ぶ米国の新たな「国家安全保障戦略2025」文書は、同国の覇権主義政策の継続を明確に示しており、複数の主要な軸を強調しています。第1の点は、差し迫った脅威に合わせて、相対的に重要性が低下した地域から撤退する形で、米国の世界的な軍事駐留を再編することです。この軍事再編は、米国が全世界的な役割ではなく、地域および西半球の重視という新たなビジョンを反映しています。

加えて、「西半球における差し迫った脅威に対処するため、米国の世界的な軍事駐留を再編し、ここ数十年、あるいは数年間で米国の国家安全保障における相対的な重要性が低下した地域から撤退する」ことを求めています。この点で、トランプ政権は前出の「モンロー主義」の復活を公言しています。モンロー主義は、中南米諸国を敵対勢力の立ち入り禁止地域と宣言した2世紀前の原則です。この新たな戦略において、アメリカは左派指導者への対抗、パナマ運河などの戦略的資源の管理、そして麻薬密輸組織の抑制を強調しています。

この文書で最も目立つ部分の1つは、移民の取り締まりであり、「大量移民の時代は終結すべきだ」として、国境警備を国家安全保障の最も重要な要素だと主張しています。この見解は、移民を国内安全保障への脅威とみなすとともに、規制的な政策の拡大や国境警備・軍事体制の強化の口実にもなっているのです。

加えて、ヨーロッパとNATO北大西洋条約機構の分野では、ヨーロッパの同盟国に対して批判的な論調を示し、ヨーロッパ文明が崩壊の危機に瀕していると警告さえしています。米国は、移民問題などの問題においてEUの価値観への反対派を支持すると表明しています。この姿勢は、ヨーロッパに圧力をかけ、NATOの役割を米国の利益に資する道具として再定義しようとするアメリカの工作を如実に反映しています。

さらに、西アジア地域に関しては、「ガザ紛争の終結とシオニスト政権イスラエルの安全保障の維持を強調している」と主張しています。また、米国とイスラエルによる対イラン攻撃にも言及し、これらの行動がイランの核能力を著しく弱体化させたとも主張しています。これらの主張は、イランに対する最大限の圧力政策の継続、そして同地域における影響力の抑制を試みていることを物語っています。トランプ大統領が第1次政権時代のみならず、第2次政権の現在もイランの封じ込めと同国への過剰な要求の押し付けを実現できていないにもかかわらず、このような主張が展開されているのです。

総じて言えることは、国家安全保障戦略2025が「アメリカ・ファースト」政策を反映するのみならず、アメリカが世界の主要地域における支配力の強化を模索し続けていることを物語っているということです。「世界支配」という概念から距離を置くと主張していながら、実際には、この戦略は米国が数十年にわたって追求してきた覇権主義的な立場を繰り返しているのです。

 

 


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